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【独自検証】Grokで生成した画像はサーバーに残る?削除のタイミングと法的リスクを徹底解説

「出来心で生成したあの画像、本当に消えているのだろうか?」

X(旧Twitter)から提供されている生成AI「Grok」。

その自由度の高さが話題になる一方で、特定のURL(x.aiドメイン)に生成された画像が長期間残り続けるという仕様に、不安を抱えているユーザーが急増しています。

「アカウントを消せば画像も消えるはず」

「いや、直リンクはずっと生きているらしい」

ネット上には様々な噂が飛び交っていますが、「実際にいつ消えたのか」を追跡し、確認した報告は驚くほど見当たりません。

そこで今回、私自身が実験台となり、Grokで生成した画像のURLを約1ヶ月間にわたって追跡調査しました。

結論から申し上げます。画像は、消えます。ただし、すぐには消えません。

本記事では、私の実体験に基づく「画像消滅までの正確なタイムライン」と、Grok利用者が絶対に知っておくべき「ディープフェイクや成人向け画像に関わる法的リスク」について、民事・刑事の両面から徹底解説します。

第1章:【実録】Grok画像はいつ消える?39日間の追跡レポート

Grokで生成された画像は、Grokの投稿画面だけでなく、x.ai から始まる固有のURLでサーバー上に保存されます。

投稿を削除しても、このURLを知っている人は画像にアクセスできてしまう状態が続くため、「デジタルタトゥー」としての不安がつきまといます。

他方、Grokのアカウントを削除したとき、1ヶ月が経過すると、データは消えるとGrok側から案内されています。

さて、この画像は具体的にいつ、アクセス不能(削除)になるのでしょうか。

私が検証した日付と結果を公開します。

追跡タイムライン
【作成日】10月17日:画像の生成
Grokを使用して画像を生成しました。この時点でURLが発行され、誰でも閲覧可能な状態になります。GROK上の投稿自体は削除しましたが、x.aiから始まるURLをブラウザのアドレスバーに打ち込むと、画像は表示されたままです。

【中間確認】11月10日(生成から24日経過):まだ残っている

↑生成から3週間以上が経過しました。
「そろそろサーバーのキャッシュがクリアされているのではないか?」と期待してアクセスしましたが、結果は「表示可能」でした。

この時点では、ネット上の噂通り「Grokの画像は一生消えないのではないか?」という疑念が深まりました。アカウントを削除したとしても、サーバー側にデータが居座り続けている事実は、心理的に大きなストレスとなります。

【最終確認】11月25日(生成から39日経過):アクセス不可を確認

↑前回の確認からさらに2週間後、再び同じURLにアクセスしました。
すると、画面には画像が表示されず、アクセス不可となっていました。

検証結果の考察

この実験から導き出される結論は以下の通りです。
* Grokの画像は永久保存ではない: 一定期間が経過すれば、外部からのアクセスは遮断される(あるいはデータそのものが削除される)。
* 削除までの期間は約1ヶ月強: 11月10日(24日目)には生存し、11月25日(39日目)には消滅していたことから、「30日」または「1ヶ月」という区切りでサーバーからパージ(削除)される仕様である可能性が高いと考えられます。

多くのWebサービスやSNSでは、アカウント削除後のデータ保持期間を「30日間」と定めているケースが多く、x.aiも同様の運用ルールを適用していると推測できます。
「一生残る」という最悪のケースは回避されましたが、逆に言えば**「極めて低い確率であるが、生成してから約1ヶ月間は、URLを知っている第三者に見られるリスクがある」**ということです。

第2章:サーバーから消えても安心できない?生成AIの「拡散」リスク

「1ヶ月待てば消えるなら安心だ」と胸を撫で下ろすのは、まだ早計です。技術的にサーバーから画像が消えたとしても、インターネット特有のリスクは残ります。

1. 「保存」されたら終わり
サーバーから画像が消える前に、誰かがその画像を端末に保存(ダウンロード)したり、スクリーンショットを撮っていた場合、元のデータが消えても意味がありません。一度第三者の手に渡ったデータは、別の場所でアップロードされ、永遠に拡散され続ける可能性があります。

2. インターネット・アーカイブ(魚拓)
「Wayback Machine」などのアーカイブサービスにURLが記録されてしまった場合、元のサーバーから画像が消えても、アーカイブサイト上にログとして残り続けることがあります。
つまり、「サーバーから消えること」と「法的責任や社会的リスクが消えること」はイコールではありません。特に、Grokの規制の緩さを利用して生成された画像が「法に触れるもの」であった場合、その責任は重くのしかかります。

第3章:【徹底解説】Grok利用で人生を棒に振らないための法律知識
Grokは他の生成AIに比べてガードレール(規制)が緩いと言われており、実在の人物や性的な表現を含む画像が出力されやすい傾向にあります。
しかし、「作れてしまう」ことと「作っていい」ことは全く別問題です。
もし問題のある画像を作成・公開してしまった場合、どのような法律が適用されるのでしょうか。ここでは**「ディープフェイク」や「不適切な画像」**を例に、民事と刑事の両面から解説します。

1. 肖像権の侵害(民事事件)
実在する有名人や知人の顔を生成AIで再現し、無断で利用するケースです。
* どんな罪?: 刑法上の犯罪ではありませんが、民事上の不法行為として損害賠償を請求される可能性があります。
* 責任の重さ: 被害者が受けた精神的苦痛や、経済的な損失(パブリシティ権の侵害など)をお金で償う必要があります。
* ポイント(故意・過失):
民事賠償において重要なのは「故意(わざとやった)」または「過失(不注意だった)」があるかどうかです。
「AIが勝手に似せてしまった」「本物そっくりになるとは思わなかった」という言い訳は、プロンプト(指示文)の内容によっては通用しません。「特定の個人を想起させる意図」があったとみなされれば、過失あるいは故意があったとして責任を問われます。

2. 名誉毀損罪(刑事事件)
生成した画像によって、その人の社会的評価を下げるような行為です。例えば、有名人が犯罪を犯しているようなフェイク画像や、不倫現場のような画像を生成して拡散した場合が該当します。
* どんな罪?: 刑事事件です。警察が介入し、逮捕・起訴されると前科がつきます(3年以下の懲役若しくは禁錮又は50万円以下の罰金)。
* ポイント(親告罪):
名誉毀損罪は**「親告罪」**です。これは、被害者本人からの告訴(「犯人を処罰してください」という訴え)がない限り、起訴することができない犯罪を指します。
逆に言えば、被害者が本気で怒り、告訴状を提出すれば、警察は動かざるを得なくなります。冗談半分で作った画像が、相手にとっては許しがたい侮辱となることを忘れてはいけません。

3. わいせつ物頒布等罪(刑事事件)
Grok利用者の中で最も懸念されているのが、このケースではないでしょうか。性的な画像を生成し、Xなどで公開した場合です。
* どんな罪?: わいせつな文書、図画などを頒布(不特定多数に配る)・販売・公然と陳列する犯罪です(2年以下の懲役又は250万円以下の罰金)。
* ポイント(非親告罪):
ここが最大のリスクです。わいせつ物頒布等罪は**「非親告罪」**です。
つまり、誰からの告訴がなくても、警察が独自に捜査し、逮捕することが可能です。被害者がいない架空のキャラクターであっても適用されます。
* 実際の運用(無修正のリスク):
日本の法律(刑法175条)の運用実態として、いわゆる**「無修正」の状態(性器等が修正されずに描写されている状態)**は、芸術性や文脈に関わらず「わいせつ物」と判断され、摘発されるリスクが非常に高いです。
海外サーバーであるX(Grok)上であっても、行為者が日本国内にいれば日本の法律が適用されます。「海外AIだから大丈夫」という理屈は通用しません。

結論:技術的な「消滅」に甘えず、法的な「境界線」を守ろう
今回の検証により、**「Grokで生成された画像は、約1ヶ月強経過後にx.aiサーバーからアクセス不可になる」**という事実が確認できました。これは、不安を感じていた方にとっては一つの安心材料になるでしょう。
しかし、検証結果が示したのはあくまで「サーバーの仕様」の話です。
画像が消えるまでの1ヶ月間に、誰かが保存しているかもしれません。あるいは、x.aiのサーバーからは消えても、生成したログ(誰がどんなプロンプトで作ったか)は、開発元のデータベースに長期間残っている可能性も十分にあります。
* 肖像権侵害は、損害賠償(お金)の問題。
* 名誉毀損は、被害者の告訴による刑事事件。
* わいせつ画像は、誰の告訴がなくても警察が動ける刑事事件。
この区別を正しく理解してください。特に「無修正画像」の生成・公開は、誰かに訴えられなくても、ある日突然警察から連絡が来る可能性がある極めてリスクの高い行為です。
テクノロジーは私たちの好奇心を刺激しますが、その好奇心が法的な一線を超えてしまわないよう、正しいリテラシーを持ってAIと付き合っていく必要があります。
※本記事は2025年時点での筆者の検証結果および一般的な法的解釈をまとめたものです。個別の事案に対する法的判断を保証するものではありません。具体的なトラブルについては弁護士等の専門家にご相談ください。