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注目の自動細菌同定検査装置 I・dOne

注目の微生物同定装置があります。

それが、I-dOneという、イタリアのALIFAXという会社が製造する微生物同定装置です。

ATR-FTIR分光法という方法で、微生物を同定します。

分離されたコロニーまたは液体培養ペレットから、赤外線を照射して得られる特有のパターンをもとに、微生物を同定します。

2022年現在、日本での発売は未定ですが、ライブラリを整えたのち、日本での発売がされる可能性があります。

ALIFAX社のWebサイトは、こちらになります。

🔗https://www.alifax.com/products/bacteriology-line/show/I-done

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血流感染症のリスク

血流感染症に関して、このような論文があります。

・さまざまな血管内装置を使用する成人における血流感染のリスク:200件の公開された前向き研究の系統的レビュー

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/16970212/

末梢静脈カテーテル関連の血流感染症は、重篤な合併症と潜在的な死亡に関連しています:後ろ向き観察研究

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/28623882/

 

短期末梢静脈カテーテル関連血流感染症:系統的レビュー

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/29020252/

ご参考まで。

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病院の夜勤と休憩時間の設定と残業代

医療従事者は、病院で夜勤をします。

夜勤は大変で、つらいですね。

もちろん、人によりますが。

ここで、病院側は、建前として、夜勤中に、休憩時間があることにしています。

労働法的に、「休憩時間がある」とせざるを得ないからです。

しかし、病院においては、実態として、夜勤中には労働法にいう「休憩時間」はありません。

病院内に滞在していなければならないからです。

夜勤中に、外に出てコンビニへ行くとか、夜空を見上げる自由(労働からの解放)はありません。

では、休憩時間が設定されているのに、休憩時間が無いという矛盾に対して、給与はどうなっているか。

じつは、病院は、休憩時間に相当する時間分の残業代を支払っていません。

医療従事者は、病院側に、この残業代の請求が可能でしょう。

一回の夜勤で設定されている休憩時間は、だいたい、1時間です。

月に3回夜勤しているとすれば、3時間分の残業代(二割五分増)がもらえることになるでしょう。

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無資格者等によるInbody(体液量測定)

病院内において、InBodyという機器により検査を実施すると、体成分分析にあたり、検査料(体液量測定60点)のコストを取れるという話があります。

これを、医師の指示のもと、看護師や、准看護師であれば、疑いなく適法に実施可能です。

参考

無資格者が生体検査をやってもよいかどうか。

論点

ここで、inbodyによる検査については、

  1. 診療補助行為にあたるのかどうか?
  2. さらには、診療補助行為に当たる場合は、看護師や准看護師のほかに、誰が患者にinbodyの検査して良いのか?

という論点があります。

はじめの論点については、私見ですが、微妙なところだと思います。

検査結果が、患者の治療に影響しうるため、診療の補助にあたるといえば、そう言えなくもないのですが、体重計で体重を測定するのと、あまり変わらないと言う気がするからです。

したがって、個人的には、2の論点は発生しないとは思われます。

つまり、現実にはやらないでしょうが、事務職の職員(無資格者)が検査しても、違法ではないと思います。

とはいえ、一応の検討をします。

2の論点について言えば、検査と言えば、臨床検査技師が頭に浮かびますが、実は、InBodyによる検査は、法文上は、臨床検査技師の業務として法律に定められている生体検査には該当しません。

臨床検査技師ができる検査・できない検査

 

さらに、この検査は、病院によっては、臨床工学技士や、管理栄養士や栄養士が実施する場合もありますが、それらの職種は、そもそも、生体検査(生理検査)を実施することが想定されていません。

業務範囲として、inbodyによる検査ができると、はっきりと法律に書いてあるわけではないということです。

しかし、ここは法律の難しいところですが、法律に書いていないからと言って、それが直ちに違法と評価されるわけではないということがあります。

解釈によって、「適法」あるいは「違法とまでは言えない」などと評価されることがあるのです。

医師の手足論

たとえば、inbody検査をやるときに、医師が、検査担当者の側で見守っており、まさに、検査担当者を、手足の如く使って検査した場合は、それは、医師の行為であると認定する考え方があります。

拡大解釈(当然に許容されるという論)

たとえば臨床検査技師であれば、心電図を実施することが法律に書いてあります。

心電図ができるのであるから、検査によるリスク(たとえば感電事故など危険度)がそれほど変わらないinbody検査も、同様にできると解釈するのです。

これは、法律の拡大解釈ということになります。

ただ、この論法は、臨床工学技士や管理栄養士ならびに栄養士に用いることができるのかというと、少し無理があるかもしれません。

結局のところ

どんな法律問題もそうですが、結局のところは、最高裁判所が判断するまでは、確定しません。

検査の担当者は、粛々と検査をすればよいでしょう。

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臨床検査技師ができる検査・できない検査

臨床検査技師ができる検査と、臨床検査技師ができない検査について、法律的知識をまとめます。

法律の構成

臨床検査技師が行う検査は、診療補助行為にあたります。

ここで、診療補助行為は、保健師助産師看護師法の第三十七条に規定されています。

保健師、助産師、看護師又は准看護師は、主治の医師又は歯科医師の指示があつた場合を除くほか、診療機械を使用し、医薬品を授与し、医薬品について指示をしその他医師又は歯科医師が行うのでなければ衛生上危害を生ずるおそれのある行為をしてはならない。ただし、臨時応急の手当をし、又は助産師がへその緒を切り、かん腸を施しその他助産師の業務に当然に付随する行為をする場合は、この限りでない。

看護師・准看護師は、一定の要件の下、業としてすべての診療補助行為を行うことができます。

臨床検査技師ができる検査

他方、臨床検査技師は、一部の診療補助行為が認められるに留まります。

臨床検査技師ができることは、『臨床検査技師等に関する法』に規定されています。

(定義)
第二条 この法律で「臨床検査技師」とは、厚生労働大臣の免許を受けて、臨床検査技師の名称を用いて、医師又は歯科医師の指示の下に、人体から排出され、又は採取された検体の検査として厚生労働省令で定めるもの(以下「検体検査」という。)及び厚生労働省令で定める生理学的検査を行うことを業とする者をいう。
さらに、臨床検査技師ができる生体検査は、『臨床検査技師等に関する法律施行規則』に規定されています。
具体的には、以下の通りです。

第一条の二 法第二条の厚生労働省令で定める生理学的検査は、次に掲げる検査とする。

 心電図検査(体表誘導によるものに限る。)
 心音図検査
 脳波検査(頭皮誘導によるものに限る。)
 筋電図検査(針電極による場合の穿せん刺を除く。)
 基礎代謝検査
 呼吸機能検査(マウスピース及びノーズクリップ以外の装着器具によるものを除く。)
 脈波検査
 熱画像検査
 眼振電図検査(冷水若しくは温水、電気又は圧迫による刺激を加えて行うものを除く。)
 重心動揺計検査
十一 超音波検査
十二 磁気共鳴画像検査
十三 眼底写真検査(散どう薬を投与して行うものを除く。)
十四 毛細血管抵抗検査
十五 経皮的血液ガス分圧検査
十六 聴力検査(気導により行われる定性的な検査であつて次に掲げる周波数及び聴力レベルによるものを除いたものに限る。)
 周波数千ヘルツ及び聴力レベル三十デシベルのもの
 周波数四千ヘルツ及び聴力レベル二十五デシベルのもの
 周波数四千ヘルツ及び聴力レベル三十デシベルのもの
 周波数四千ヘルツ及び聴力レベル四十デシベルのもの
十七 基準嗅覚検査及び静脈性嗅覚検査(静脈に注射する行為を除く。)
十八 電気味覚検査及びろ紙ディスク法による味覚定量検査

法律間の調整

ちなみに、臨床検査技師のやることが、保健師助産師看護師法に違反するものとならないように(つまり、適法となるように)、『臨床検査技師等に関する法律』には、このような条文があります。
(保健師助産師看護師法との関係)
第二十条の二 臨床検査技師は、保健師助産師看護師法(昭和二十三年法律第二百三号)第三十一条第一項及び第三十二条の規定にかかわらず、診療の補助として採血及び検体採取(医師又は歯科医師の具体的な指示を受けて行うものに限る。)並びに第二条の厚生労働省令で定める生理学的検査を行うことを業とすることができる。

まとめ

法律上、診療補助行為は、原則として、看護師・准看護師の独占業務ですが、例外的に、臨床検査技師は、診療の補助として採血と、検体採取、ならびに一部の生理学的検査を行うことができます。

それ以外の診療補助行為については、臨床検査技師が行ってはいけません。

参考「医行為」

なお、法律上、診療補助行為のほかに、医行為という概念が存在します。

医行為は、医師だけな行える行為です。

最高裁は、医行為を、「医療及び保健指導に属する行為のうち、医師が行うのでなければ保健衛生上危害を生ずるおそれのある行為」と解釈しています。

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「“統計的に有意差なし”もうやめませんか」

数年前、こんなのが話題でした。

「“統計的に有意差なし”もうやめませんか」 Natureに科学者800人超が署名して投稿

https://www.itmedia.co.jp/news/spv/1903/26/news112.html

調査した科学論文の約半数が、統計的有意性を誤用していたという話です。

「統計的に有意差がない=違いがない」は間違い

という事なのですが、

このような誤解を含む論文が多いというのは、はなかなかの問題で、科学への信頼の基盤を崩しかねない事象です。

 

差がないという仮説を否定できなかったわけですから、正確には、

有意差がない=差がないとは言えない

あるいは、

有意差がない=差があるというエビデンスが見つからなかった

となるのですね。

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日本版敗血症診療ガイドライン2020はこちら

日本集中治療医学会・日本救急医学会が合同で作成した「日本版敗血症診療ガイドライン2020」の正式版のご紹介です。

The Japanese Clinical Practice Guidelines for Management of Sepsis and Septic Shock 2020 (J-SSCG2020)

本編と付録からなります。

いずれもPDF形式となっています。

本編はこちらから参照可能です。

https://www.jsicm.org/pdf/jjsicm28Suppl.pdf

 

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臨床検査の許容誤差限界

臨床検査の許容誤差限界について、いくつか。

臨床検査の許容誤差限界に対する考え方

臨床検査の許容誤差限界に対する考え方は、3つに分類される(資料1および2)。

  1. 臨床的有用性に基づき医学的意思決定濃度における限界値を経験的に定める方法(Medical Usefulness)
  2. 現在の技術水準に基づき,精度が優れた検査室の測定誤差の大きさに目標を求める方法(State of the Art)
  3. 測定誤差を健常者の生理的変動と比較して評価する方法 (Biological Variation)

従前、測定上の誤差の許容限界としては、正常範囲から求めるTonksの式や、臨床医や臨床検査専門家などからの意見をまとめたBarnettの医学的に有意な許容幅、あるいは個人の生理的変動幅から算出した北村やCotloveなどの許容誤差限界などがあったところ、現在の技術水準における測定上の誤差を臨床医はどの程度まで許容しているかを把握するためにアンケート調査を実施した報告がある(資料3)。

資料3では、つぎのように結論付けられている。

  1. 酵素項目の許容誤差限界は±5%以内が望まれていること
  2. 多くの定量成分項目の許容誤差限界は±3%以内が望まれていること
  3. 測定値が小さく,小数点1桁まで測定している項目は±0.2単位以内の許容誤差幅が望まれていること
  4. Na,Clは、±2mEq/1以上の許容誤差幅が望まれていること

また、臨床化学会クオリティマネジメント専門委員会が、生理的変動に基づく許容誤差限界としての基準を報告している(資料4)。

  • 資料1:「外部精度評価の許容誤差限界に関する国内外の動向 」臨床病理53:6・2005
  • 資料2:会報 JAMT 平成 20 年 11 月 1 日発行「医学検査」第 57 巻第 11 号付録
  • 資料3:「臨床医からみた測定誤差の許容限界-アンケート調査より-」医学検査 47(2): 145-151, 1998.
  • 資料4:「生理的変動に基づいた臨床化学検査 36 項目における測定の許容誤差限界」臨床化学2006  35:144-153)臨床化学会クオリティマネジメント専門委員会(https://ci.nii.ac.jp/naid/80019201560)

外部精度評価(精度管理調査)と施設間許容誤差限界

上記は、主に施設内での臨床検査の許容誤差限界についての話であったが、臨床検査の許容誤差限界については、異なる施設の間でも問題となる。

ここで、社団法人日本臨床衛生検査技師会の精度管理調査評価法検討・試料検討ワーキンググループは、外部精度評価の適切な企画と実施を目的に、測定値の施設間差を調査する共通の試料を配布し測定した施設測定値の評価方法および調査用試料に要求される事項に関する日本臨床衛生検査技師会(日臨技)の指針を提示している(資料5)。

  • 資料5 「臨床検査精度管理調査の定量検査評価法と試料に関する日臨技指針」医学検査 (Japanese Journal of Medical Technology) 巻: 57 号: 1 ページ: 109-117 発行年: 2008年01月25日

この資料5の中で、日臨技は、現在の技術水準に基づく許容誤差限界を設定している。

ISO

ちなみに、許容誤差限界を含む臨床検査の精度については、ISOの認定に係る問題でもある。

日本では、日本適合性認定協会が、唯一の臨床検査室認定機関として、国際規格「ISO 15189(臨床検査室-品質と能力に関する特定要求事項)」に基づき、臨床検査室の審査を行い、臨床検査を行う能力を有していることを認定する。

ISO 15189は、「品質マネジメントシステムの要求事項」と「臨床検査室が請け負う臨床検査の種類に応じた技術能力に関する要求事項」の2つから構成されている。

 

別途 参考文献

  • 「福岡県における臨床化学28項 目の基準範囲 と標準化-「臨 床化学検査及び基準範囲の統一化プロジェクト」 プ ロ ジェク ト報告-」臨床化学 第30巻 第3号 2001年9月
  • ISO 15195: Laboratory medicine – Requirements for reference measurement laboratory. 2003
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健康の優先順位が低い人へのアプローチ

近年は独居(一人暮らし)の中年や高齢者が増加。

彼ら/彼女らは、必ずしも、健康の優先順位(プライオリティ)が高いというわけではない。

一番優先されるものがお酒だったり、タバコだったりする場合が多々ある。

健康を得ようというモチベーションが低いのである。

生活は不規則。野菜を食べない。運動しない。etc.

そんな人たちに、生活習慣の改善をしてもらうのは困難である。

医療者は、彼ら/彼女らに対し、劇的な変化を望まず、最低限の取り組みとして、サプリメントで不足する栄養素を補充しましょう、といってサプリメントの摂取を勧めるアプローチも有用である。

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エネフリードとビーフリードの違い

エネフリードは、大塚製薬から2020年に発売された末梢静脈栄養輸液です。

エネフリードは、日本で初めて、糖、電解質、アミノ酸に加え、脂肪および9種類の水溶性ビタミンをダブルバッグに一剤化することにより、1~2週間程度の栄養管理を可能とした製剤です。

エネフリードとビーフリードの違い

これまで、末梢静脈栄養輸液としては、ビーフリードが有名でしたが、ビーフリードには、脂肪が含まれていませんでした。

また、ビーフリードには、糖質の代謝に必須のビタミンB1は含まれていましたが、その他の各種のビタミンが含まれていませんでした。

つまり、エネフリードとビーフリードを比べると、脂肪と各種ビタミンの含有の有無が異なることになります。

カロリーの違い

ビーフリードは、500mlあたり210キロカロリーです。

エネフリードは、500mlあたり310キロカロリーです。

エネフリードの注意点

エネフリードは、含有する脂肪が目詰まりするため、除菌用ファイナルフィルターを使用できない点に注意が必要です。

また、臨床検査値に影響する場合があります。具体的には尿検査です。エネフリードは、アスコルビン酸を含有しているため、尿試験紙での尿糖の検出反応を妨害する可能性があります。また、各種の尿検査(潜血、ビリルビン、亜硝酸塩)・便潜血反応検査で、偽陰性を呈することがあると注意喚起されています。