最高裁平成12年2月18日第二小法廷判決
論点
無効審決取り消し訴訟は、無効審判請求人の一部の者が、単独で提起できるかどうか。
事実関係
・Yは特許権者
・Xと訴外2名は、無効審判請求人
・特許庁 無効審判請求不成立審決
・請求人だったXが単独で審決取り消し訴訟を提起
・東京高裁 認容(不成立審決を取り消すとの判決)
(東京高裁は、進歩性違反とした)
・特許権者のYが、X単独で訴えはできないとして、上告
本判決の結論
・棄却
・判旨
「無効審判請求をした者の全員が共同して提起することを要すると解すべき理由はないから、本件訴訟は適法である」
解説
複数の人が無効審判を請求するときのパターン には、次の3パターンがあります。
1 共同で請求・・・・・・・本件判決
2 別々に提起して、別々に審決
3 別々に提起したが、併合される場合・・・・・・・最高裁平成12年1月27日
補足
参考:最高裁平成12年1月27日事件の判旨(本判決用に多少アレンジして書きました)
共同して特許を無効とする審判の請求があったときに、請求不成立審決がなされた場合、共同審判請求人の一部がする審決取消訴訟の提起は、適法である。
理由を以下に述べる。
第一に、特許を無効とすることについての利益は、無効審判請求をする者がそれぞれ有する固有の利益である。
第二に、共同審判請求人の一部がする審決取消訴訟の提起が不適法になると解するならば、一部の請求人が請求不成立審決に対する不服申立てをしなかったときは、これにより、他の請求人が自己の固有の利益のため追行してきたそれまでの手続を無に帰せしめ、その利益を失わせることとなり、不合理といわざるを得ない。
第三に、単独で提起できると解するときは、裁判所の判断が請求不成立審決を維持すべき旨の判決と、請求不成立審決を取り消すべき旨の判決とに分かれ、双方が確定する事態が生じ得ることになる。しかし、判決の確定により無効審決が確定したときは、特許権は、初めから存在しなかったものとみなされるのであるから(特許法一二五条)、これとは別に既に請求不成立審決が確定していたとしても、当該特許の効力は失われる。
また、そのときに裁判所に継続している他の審判請求人による審決取消訴訟は、訴えの利益が失われる。
したがって、審決の矛盾、抵触により法的状態に混乱を生ずることはない。