看護師と守秘義務について解説します。
患者のプライバシーと法律
患者のプライバシーは、強く保護されるべき情報です。
病院などでは、個人情報の取り扱いに注意するよう教育がなされますが、完璧にするのは難しく、たびたび、看護師が患者の情報を外部に漏らしてしまう事件が発生してしまいます。
看護師のような医療従事者による守秘義務違反は、医療機関への信用を失わせてしまいますから、病院経営に重大な影響を及ぼします。
秘密を漏洩したときの責任
看護師は、職務をする中で知りえた患者の情報を、秘密として守る義務が課されています。
この守秘義務は、法的な義務でもあります。
看護師本人の責任
刑法 134 条には、「医師, 薬剤師,医薬品販売業者,助産師,……又はこれら の職にあった者が,正当な理由がないのに,その業 務上取り扱ったことについて知り得た人の秘密を漏らしたときは,6 月以下の懲役又は 10 万円以下の罰 金に処する」と定められています。
また,保健師助産師看護師法には,「保健師,看護師又は准看護師は, 正当な理由がなく,その業務上知り得た人の秘密を 漏らしてはならない。保健師,看護師又は准看護師 でなくなった後においても,同様とする」と定められています。そして、この違反に対しても刑法 134 条と同じ重さの 刑罰が規定されています(42 条の 2,44 条の 3)。
病院の責任
看護師が職務上知り得た秘密を漏洩してしまったときの病院の責任については、民法 715 条第 1 項で、「ある事業のために他人を 使用する者は,被用者がその事業の執行について 第三者に加えた損害を賠償する責任を負う」と規定しています。
すなわち、医療機関は、看護師に守秘義務を遵守させるよう監督する責任がありますから、看護師が職務上知り得た秘密を漏洩する行為は、医療機関の不法行為となり、医療機関の使用者責任が問われることになります。