筋肉は存在しているだけでエネルギーをよく消費するというイメージがあります。
それゆえ、
「筋トレをして筋肉を増やしたら、痩せやすい身体になるか?」
という疑問が生まれます。
自分の学習のためにも、医療系のジャーナルにあたって、実際のところを調べてみました。
📒安静時のエネルギー代謝
人は、安静時にも、呼吸したり、内臓を動かしたりと、エネルギーを消費しています。
体重70kgで平均的な体型の男性をモデルにすると、各臓器の重さと、安静時のエネルギー消費量は、つぎのようになるそうです。
筋肉は、安静時、重量1kgあたり、13kcal/日の消費量しかありません(全身の安静時代謝量でみたら、21.6%と、少ないですよね)。
つまり、筋トレ(レジスタンストレーニング)によって骨格筋を1kg増やしても、安静時の一日当たりの消費カロリーは、たった13kcalしか増加しない、ということになります。
年間では、13×365=4745(kcal)です。
・・・年間でそれだけ!?
・・・筋トレをしても、たいして意味ないじゃないか!
そんな声が聞こえてきそうですね。
ただし、つぎのような話があります。
📒除脂肪体重の増加
じつは、筋トレ(レジスタンストレーニング)を継続すると、除脂肪体重(体重から、脂肪の重量を引いたもの)も増加することが知られています。
これは、内臓の重量の増加を意味します。
様々なデータを平均すると、除脂肪体重が1kg増えると、1日あたりの安静時の消費カロリー(安静時代謝量)は、50kcal ほど増えると見積もることができるそうです。
年間では、50×365=18250kcalの消費増ですね。
脂肪細胞1kgが持つエネルギーは、7200kcalほどなので、1kgの除脂肪体重の増加が、年間で、18250÷7200=2.5(㎏)の減量につながると計算できます。
ここまでの話を見る限りだと、筋トレで除脂肪体重を増やせば、「痩せやすい体」になれるとも思えます。
📒しかし実際は・・・
しかし、実際には、うまくいかないケースがほとんどのようです。
「筋トレのみで体脂肪量が減少した」という研究報告は少なく、「筋トレで除脂肪体重は増加したが体脂肪は変わらなかった」という研究報告が多いのが実際だそうです。
理由としては、上図に記載されているように、脂肪組織も、安静時にエネルギーを消費しているということがあります。
脂肪は、安静時、重量1kgあたり、4.5kcal/日の消費量です
つまり、脂肪が減った分だけ、安静時のエネルギー消費量は低下してしまうのです。
脂肪を減らし続けるには、それまでよりも、食事からの摂取エネルギー量を減らしたり、持久運動を増やしたりしないと、うまくいかないということですね。
米国スポーツ医学会の見解でも、筋トレ(レジスタンストレーニング)そのものが減量(体重減少)の効果的手段であるという立場はとっていません。
レジスタンストレーニングは減量を促進しませんが、無脂肪の質量を増加させ、脂肪の質量の減少を増加させる可能性があり、健康リスクの低減に関連しています。
Resistance training does not enhance weight loss but may increase fat-free mass and increase loss of fat mass and is associated with reductions in health risk. ー Appropriate Physical Activity Intervention Strategies for Weight Loss and Prevention of Weight Regain for Adults
📒結論は・・・
以上のことから、筋トレによる体重減少は、期待しないほうがよさそうです。
体重減少が目的であれば、食事制限や、持久運動をやるのがおすすめです。
ただし、筋肉を鍛えれば、たとえ体脂肪がそれほど減らなくても、見た目は格好よくなるので、それ自体は、悪いことではないはずです。
以上、参考になりましたでしょうか