消化管が安全に使用できる在宅患者のなかには、在宅経腸栄養法(home enteral nutrition:HEN)が適応できる患者がいます。
在宅経腸栄養法を健康保険で実施できる患者には、たとえば、脳血管障害などによる摂食嚥下機能障害患者、クローン病患者、胃がん、食道がんなどのがん患者や、認知症患者などがいます。
ただし、経腸栄養法を長期にわたって行うときは、注意が必要です。
必要カロリー量や水分量などを計算して適切な栄養管理・モニタリングをしないと、体重増加や体重減少のほか、さまざまな合併症を起こすことがあります。
経腸栄養剤の種類
経腸栄養剤はその組成や成分で、大きく2つに分類されています。
大きくは、自然食品流動食(普通流動食,ミキサー食,濃厚流動食)と、人工濃厚流動食(成分栄養剤,消化態栄養剤,半消化態栄養剤,特殊な組成の栄養剤)に分かれます。
分類の仕方は、ほかにも、健康保険の適応できるもの(薬品タイプ)と、健康保険の適応できないもの(非薬品タイプ:食品タイプ)があります。
半固形化経腸栄養剤の普及
ちなみに、今後は、半固形化された栄養剤が普及してくと見込まれています。半固形化された経腸栄養剤は、短時間で注入できるため、患者自身の時間的制約がなくなり、リハビリや、入浴のための時間を確保できる(QOL や ADL の向上)ことや、介護者の負担軽減ができるなどのメリットがあります。
また、液体の経腸栄養剤に比べて、胃食道逆流や、嘔吐、瘻孔からのリーク(漏れ)などの合併症を減らすこともできます。
経腸栄養の副作用
経腸栄養剤による栄養管理を行うと、さまざまな合併症が起こります。
代表的なのは、「下痢」と「便秘」です。
下痢対策
経腸栄養による下痢の対策は、栄養剤の滴下速度を遅くする、栄養剤を半固形化する、食物繊維入りの経腸栄養剤を選択するなどで改善できることがあります。
なお、乳糖不耐症が原因の場合もあり、そのような患者では、乳糖を含まない経腸栄養剤を選択するとよいでしょう。
便秘対策
水分を投与する、食物繊維を追加する、下剤の投与、あるいは、マッサージをするなどがよいでしょう。