カテゴリー
医療従事者向け

HA-MRSAとCA-MRSAの遺伝的な違い・感受性の違い

HA-MRSAとCA-MRSAの違いを勉強しました。

ただ箇条書きしただけなので、整理はできていませんが、ご参考まで。

薬剤耐性(AMR)対策アクションプラン

2016 年に発表された「薬剤耐性(AMR)対策アクションプラン」の中では、“2020 年には黄色ブドウ球菌のメチシリン耐性率を 20%以下に低下させるという目標が打ち出されている。

CA-MRSAとHA-MRSA

・MRSA は 疫学的に市中感染型(community‒acquired MRSA:CA‒MRSA),医療関連感染型(hospital‒acquired MRSA:HA‒MRSA),家畜関連型(livestock‒associated MRSA:LA‒MRSA)に分類されることがある。

・従来、入院患者から検出される MRSA は SCC-mec IIaのいわゆる院内感染型MRSA(HA-MRSA)が多数を占めていた。

・近年、SCCmec IVに代表される市中感染型 MRSA(CA-MRSA)の増加が指摘されている。

・CA-MRSAは、病原因子として表皮剥脱毒素(exfoliative toxin:ET)やパントン・バレンタイン型ロイコシジン(Panton-Valentine leukocidin:PVL)を産生する株の割合がHA-MRSAよりも高いと言われる。

・CA-MRSAの産生するPVLという白血球破壊毒素は、急激で重篤な致死性の壊死性肺炎や軟部組織感染を起こす主要な原因とされることから、CA-MRSAは世界的に警戒されている。

・なお、ETは、膿痂疹やブドウ球菌性熱傷様皮膚症候群(staphylococcal scalded skin syndrome:SSSS)の原因となる毒素である。

遺伝子

PBP2’の構造遺伝子はmecAである。

mecAは、SCCmec(staphylococcal cassette chromosome mec)と呼ばれる染色体カセット上に存在する。

SCCmecはアロタイプがあり、Ⅰ~XI型まで分類されている。

SCCmecがS.aureusの染色体に組み込まれ、βラクタム系薬に耐性を獲得したのがMRSAである。

HA-MRSAのSCCmec typeは、Ⅰ~Ⅲ(主にⅡ)であり、CA-MRSAのSCCmec typeは、ⅣとⅤ(主にⅣ)である。

代表的なクローン

HA-MRSAは、New York/Japan(ST5/SCCmecll),Pediatric(ST5/SCCmec IV),Berlin(ST45/SCCmec IV),Iberian(ST247/SCCmec I A),Brazillian(ST239/SCCmec皿),EMRSA-15(ST22/SCCmec IV),EMRSA-16(ST36/SCCmec IDが知られている。

CA-MRSAは、主に米国に分布するUSA400(STI/SCCmec IVa)やUSA300(ST8/SCCmec lVa),主に欧州に分布するST80/SCCmec IV,世界中に分布するST30/SCCmec IVc(またはIVa),台湾や米国に分布するST59/SCCmec V,より新しいST22/SCCmec IVaが知られている。

参考:小児科臨床 VoL68 No 12 2015

感受性の違い

CA-MRSAは、HA-MRSAと異なり、MPIPCやCFX、カルバペネムなどのβラクタム系薬に対しては軽度~中程度耐性を示し、マクロライド系薬,クリンダマイシン、ミノサイクリン、キノロン系薬、アミノグリコシド系薬には感性を示すことが多いと言われる。

これは、薬剤感受性パターンからCA-MRSAを推測することができる、ということになる。

参考:「メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)」診断と治療 vol.104 no.6 2016(49)

MRSAの除菌

MRSAの保菌による医療関連感染症の発症を予防する一つの方法として、除菌療法がありうる。
MRSA の除菌療法には,鼻前庭部位へのムピロシン軟膏/ポビドンヨード液塗布療法,消毒用アルコール塗布療法,抗菌薬の内服療法などがある。

国内では、鼻前庭部位に塗布して除菌する治療薬として,現状使用可能な薬剤はム
ピロシン軟膏(商品名:バクトロバン軟膏)のみである。

参考;MRSA 保菌者対策(小児外科 52(1): 50-53, 2020)

治療

バンコマイシン,テイコプラニン,アルベカシン,ダプトマイシンなどの点滴の場合は、十分な有効性と安全性を確保するために,必ずtherapeutic drug monitoring(TDM)を実施し,用法・用量を調節することが重要である。

リネゾリドは、腎機能に応じた用法・用量の調節は不要とされているが,腎機能低下時に骨髄抑制が早期に,高率に発現することが報告されている。

なお、ダプトマイシンは、小児については国内未承認である。

そのほか

・CA-MRSAは、HA-MRSA に比し薬剤耐性は高度ではなが、治療に難渋する例が報告されている。CA-MRSAについて、臨床経過の解明が重要である。

・MRSAの保菌者に、MRSAに抗菌活性を有しない抗菌薬を
投与した場合、常在菌が抑制されMRSAの選択的な増殖が可能となり、MRSAによる感染リスクを高める要因となる。