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小児の脱水症の症状、診断、治療

脱水症は小児科によくある疾患ですので、解説します。

なぜ小児は脱水しやすいか

子供が脱水症になりやすいのは、体液の回転が早いからです。

つまり、水が入ってから出て行くまでのスピードが、大人よりも早いです(約3倍の早さ)。

脱水がよく起きるのは、急性胃腸炎のときや(下痢,嘔吐,発熱により水分摂取が低下)、インフルエンザ,ヘルペス性口内炎などの熱性疾患のとき、あるいは、肺炎や気管支喘息などの呼吸器疾患のときです。

脱水の症状と診断

脱水症では、皮膚緊張度(ツルゴール)の低下、口腔粘膜の乾燥、採血や点滴ラインの確保時などの痛覚刺激に涙がでない、などが典型的な徴候です。

また、短期間で体重が減少したときは、体液が減少していると考えます。

普段の体重から、5%未満の減少は「軽症」、5〜9%の減少は「中等症」、9%以上は「重症」と判断します。

中等症以上の脱水症では、心拍数の増加が認められ、また、全身状態が明らかに悪化します。

中等度〜高度の脱水では、下記の「低張性脱水」では意識状態の低下から昏睡を認め、また、下記の「高張性脱水」では易刺激性の充進・けいれんなどを認めます。

脱水の分類

脱水には、大きく分けて3つのタイプがあります。

低張性脱水(血清Na値:135 mEq/L未満)

細胞外液が低張になることにより自由水が細胞内に流入し、体外への細胞外液の喪失以上に細胞外液量の低下が生じている状態です。

等張性脱水(血清Na値:135~145 mEq/L)

電解質のin-outのバランスは取れていますが、細胞外液が減少した状態です。

高張性脱水(血清Na値:145 mEq/L以上)

浸透圧勾配によって、細胞内液中の自由水が細胞外液に移動するため、細胞外液量の減少は比較的少ないものの、神経系細胞やアストロサイトなどの細胞内液が減少し、それに伴って神経系細胞の細胞容積が減少している状態です。

脱水の治療

経口補液療法

脱水症の治療は、経口補液療法(oral dehydration therapy:ORT)が基本です。

軽症および中等症の脱水では、経口補水が可能なときはORTを試します。

一方、中等症以上の脱水があり、嘔気などがあり経口補水が十分に期待できないときは、経静脈的輸液を選択します。

経静脈的輸液

経静脈的輸液は,初期輸液と維持輸液の2種類に分類されます。

初期輸液

脱水症の多くは初期輸液(欠乏輸液とも呼ばれる)のみで十分です。

初期輸液には、「生理的食塩水」、「細胞外液型製剤」、あるいは「低張性輸液製剤(開始液:1号液など)」を用います。

初期輸液を迅速に行い、数時間のうちに、失った体液のおよそ半分〜2/3を補充します。

排尿を確認し、全身状態が改善したところを治療の目安とします。

維持輸液

維持輸液は、一日に必要とされる水分・電解質の補充と、最低限のエネルギーの補充を目的とする輸液です。

維持輸液には、基本的には、低張性輸液製剤(低張液)を用います。

この維持輸液が必要になるのは、初期輸液の後も、嘔吐および下痢の持続などで体液喪失が継続し、経口補水療法のみでは脱水が再び起きる可能性があるときです。

また、意識状態の低下や、全身状態の悪化で飲水ができない場合や、何らかの理由で経口的な水分摂取が不能な場合も、維持輸液が必要になります。