医師法には遠隔診療を認める明文の規定はありませんが、行政は、法解釈により遠隔診療を認めています。
ただし、行政は、遠隔診療について、「対面診療と組み合わせるべき」と、一定の制限が必要という考えを明らかにしています。
ここでは、この制限について、法律を交えて解説します。
医師法との関係
まず、医師法は、医師が自ら診察しないで治療をしたり診断書や処方せんを交付したりすることを禁止しています(医師法第20条)。
遠隔診療が、ここでいう「診察」に該当するのであれば、何も問題はありません。
しかし、医師法には、遠隔診療がここでいう「診察」にあたることを明示した規定がありません。
したがって、医師法第20条をどのように読み解くのか(すなわち法解釈)が問題になります。
行政解釈
この問題について、行政は、医学的に妥当な内容であれば、遠隔診療も、医師法第20条にいう「診察」にあたると解釈しています。
ただし、行政の解釈では、遠隔診療は、あくまでも直接の対面診療を補完するものとして位置付けられており、始めから終わりまでの全てを遠隔診療で済ませることは「診察」にはあたらないとされています。
つまり、行政は、遠隔診療だけで診療を完結させることは、医師法第20に違反する違法行為であると考えています。
実際の運用
上記の行政解釈を受けて、現在の遠隔診療は、医師法第20違反との指摘を受けないよう、対面診療を組み合わせて運用されています。
たとえば、仕事が忙しく、なかなか病院へ行けない在宅の糖尿病の患者さんに遠隔診療をするとき、3回の診察のうち1回は対面診療にするなどの運用がなされています。
ただし、対面診療をどれくらいの頻度で組み合わせたら良いのかについては、行政は基準を示していません。
対面診療の頻度は、患者さんの病状や居住地などに合わせて、常識的な範囲で調節されるべきものと言えるでしょう。
今後への期待
なお、今後もしも行政が医師法20条の解釈を変えたり、国会によって医師法20条が改正されたりした場合には、遠隔診療だけで診療を完結させられるようになるかもしれません。