定義
アニオンギャップとは、血清中のナトリウム(Na)とカリウム(K)濃度の和から塩素(Cl)と重炭酸(HCO3)濃度とを引いた値のことです。
すなわち、アニオンギャップ(anion gap:AG) = [Na+] 一 {[HCO3–] 十 [Cl–] }と計算されます。
アニオンギャップは、unmeasured anionとも呼ばれます。
アニオンギャップは、血液ガス測定により、算出することができます。
意義
血漿中の陽イオンはNa,Kなど測定可能なものがほとんどです。
しかし、陰イオンは、通常、塩素(Cl)、HCO3は測定しますが、リン酸、硫酸、有機酸や蛋白などの陰イオン(アニオン)は、測定しません。
このような通常は測定しないアニオンを、臨床的にひとまとめにして、その増加をみるものがアニオンギャップです。
基準値
基準値は12前後です(12±2)。
なお、アニオンギャップの算出のとき、陽イオンとして、NaにKを加えて算出することも可能であり、そのときは基準値が上がります。
アルブミン値による補正
AGを計算するときは、アルブミン(Alb)補正が必要です。
なぜなら、血清アルブミン値が正常値(4g/dL)から1g/dL低下すると、AGは、2.5mEq/L低下するからです。
したがって、正常値からのアルブミンの低下分に2.5を掛けたものを、AGに足して補正します。
すなわち、Alb補正後AG=補正前AG+(4−Alb値)×2.5で表されます。
たとえば、血清Alb値が1.0g/dL、Naが135mEq/L、Clが100rnEq/L、HCO3-が24mEq/Lのとき、補正前の計算では、AGは11mEq/Lですが、補正後のAGは18.5mEq/Lとなります。
解釈
アニオンギャップが増加している場合は、有機酸、乳酸、その他の酸が蓄積していると考えます。
いわゆる代謝性アシドーシスを呈している病態が疑われます。
代表的なものは、有機酸代謝異常症(メチルマロン酸血症やプロピオン酸血症)、高乳酸血症、腎不全、高ケトン血症(ケトーシス)、サリチル酸中毒、エタノール中毒などです。
アニオンギャップが増加しない代謝性アシドーシス
なお、たとえば、下痢によるHCO3の漏出や、尿細管の問題によるHCO3の再吸収障害などが原因で起きるHCO3低下による代謝性アシドーシスでは、HCO3が減った分、Clが増加するため、アニオンギャップは増加しません。