WHO の International Agency for Research on Cancer (IARC)は,飲酒が原因で発癌する部位として,口腔,咽頭(いんとう),喉頭(こうとう),食道,結腸・直腸,肝臓,女性の乳房をあげています.
その中で,
⑴ アルコール飲料中のエタノール
⑵ 飲酒と関連したアセトアルデヒド
これらをヒトへの発がん物質であると認定しています.
食道がん
ここでは,食道がん(食道扁平上皮癌)について述べますと,
いわゆる飲めない体質の人では,食道がんの発がんリスクが上がることが分かっています.
具体的には,エタノールは,体内で,2つの酵素の働きにより,酢酸(さくさん)にまで分解されるのですが…
- ひとつは,エタノールをアセトアルデヒドに代謝する酵素ADH1B
- もうひとつは,アセトアルデヒドの代謝酵素ALDH2
いわゆる飲めない体質の人は,活性が低いタイプの酵素の遺伝子保有者なので,エタノールやアセトアルデヒドの影響を強く受ける結果,発がんリスクが上がります.
メタ解析によると,ADH1B*1/*1型の遺伝子保有者は,ADH1B*2型の遺伝子保有者(ADH1B*1/*2およびADH1B*2/*2) に比べて,食道がんのリスクは2.77倍も高くなるそうです.
また,ALDH2*1/*2の遺伝子保有者は,ALDH2*1/*1の遺伝子保有者に比べて,食道がんのリスクが7.12倍も高くなるそうです.
大量飲酒者では,さらにリスクが増えることも示されているようです.
お酒を飲めない体質の人は,できるだけ飲酒を少なくしたほうが良さそうですね.
※参考文献:日本臨牀76(増刊号8): 45-48, 2018