2019年、国立感染症研究所の加藤はる先生と多摩総合医療センターの本田仁先生らを中心に、東京医療センターを含めた全12施設(20病棟)が参加して行われた研究がpublishされました。
UMIN試験IDは、UMIN000015336です。
目的は、つぎのようになっています。
1. 日本の医療機関におけるCDIの発生率を明らかにする
2. CDIの臨床背景、治療および経過を解析する
3. 糞便中毒素遺伝子検出検査 (NAAT)による結果、C. difficile分離培養結果および分離菌株の毒素産生性の検討、および日本の医療機関の臨床検査室における標準的な細菌学的検査法による結果を比較する
4. 日本におけるC. difficile感染症の分子疫学およびC. difficile分離株の薬剤耐性について解析する
参加施設は、八戸市立市民病院、亀田総合病院、東京ベイ浦安市川医療センター、東京医療センター、豊川市民病院、東海中央病院、奈良県立医科大学附属病院、刀根山病院、呉医療センター・中国がんセンター、下関市立大学市民病院、産業医科大学病院、沖縄県立南部医療センターとのことです。
責任研究者は、国立感染症研究所(細菌第二部)です。
発表によると、ブリストルスケール6から7の便を、24時間で3回以上認めた患者さんの便を検査したそうです。
つまり、C.difficileのトキシン、培養検査、遺伝子検査が施行されました。
その結果として分かったことは、つぎのように紹介されています。
- 全体のCDI発生率は、10,000のべ入院日数あたり7.4と高く、検査頻度とCDI発生率に明らかな相関が認められた(R2=0.91)。
- 日本で、適切に検査が行われないために多くのCDI患者が見過ごされていると推定された。
- CDI発症のリスク因子は欧米で指摘されてきた因子と同様であったが、CDIは下痢患者における死亡率とは関係なかった。
- 毒素産生性C. difficile培養検査と比較すると、遺伝子検査およびGDHアルゴリズムの感度が、今までの多くの報告と比較して低く、酵素抗体法による毒素検出の陽性的中率が低いことも明らかとなった。
これまで、日本におけるCDI発症率は過小評価されていた可能性があるとのことです。