公務員とアフィリエイト
公務員は、副業が法律で禁止されていますが、アフィリエイトについてはどう判断されるのか、疑問に思ったので検討します。
検討したところ、結論として法律的には「アウト(違法)」との結論が得られましたので参考までにご紹介します。
ネット上には、合法とするWEBサイトが多数ありますが、それらは誤りですので、ご注意ください。
根拠法
まず、国家公務員法(103条、104条)や、地方公務員法(第38条)が、公務員の副業を禁じています。
具体的には、以下の行為を禁じています。
1.営利目的会社の役員などの地位に就くこと
2.自ら営利を目的とする私企業を営むこと
3.報酬を得て事業や事務に従事すること
検討
上記の1は、アフィリエイトを法人成りさせた場合のことと思われますので、ここでは無視します。
上記の2が問題となります。
一般的には、「私企業」というと、自分で会社を作ったり、個人事業主になったりして、事業活動することだと思われるでしょう。
しかし、法律上、「私企業」という文言は、会社や個人事業のみを意味するものではありません。
私企業とは、継続的に生産・販売・サービスなどの経済活動を営む民間の組織や個人、あるいは、その事業のことを意味するからです。
したがって、個人がアフィリエイトを単なる副業として行うことも「私企業」に該当します。
また、アフィリエイトは、営利目的で行うものです。
したがって、公務員のアフィリエイトは、「自ら営利を目的とする私企業を営むこと」になり、違法行為となります。
なお、余談にはなりますが、念のため、アフィリエイトが上記の3に当てはまるかどうかについても検討してみます。
つまり、「報酬」とは何か?という問題です。
1.報酬とは
過去の文献(『地方公務員月報平成元年12月号』自治省公務員課編17頁)によれば、「報酬」は、以下のように解釈されるようです。
「報酬」とは、労務、労働の対価として支給あるいは給付されるものをいう。「労務、労働の対価」とは、職員が一定の労働を提供することに対して双務契約に基づき支払われる反対給付のすべてをいい、金銭のみでなく、現物給付、利益の供与についても「報酬」の対象となる。それが、経常的なものであるものと一時的なものであるものを問わない。ただし、謝金、実費弁償に当たるものは「報酬」に含まれない。たとえば講演料、原稿料、布施、車代等である。「いかなる事業若しくは事務」とは、それが営利を目的とするものであると否とを問わず、すべての事業及び事務を含むものである。報酬を得ないで非営利事業もしくは事務に従事することについては…規定していない。
この文献によると法律上の「報酬」とは、一定の労働に対する給付という概念であると考えられているようです。
また、双務契約(当事者双方が互いに対価的な意義を有する債務を負担する契約)に基いている必要があるとも考えられているようです。
2.アフィリエイトの収益は法律上の「報酬」なのか
●労働との関係
言わずもがなですが、アフィリエイトの収入の発生は、公務員は自己でコントロールできません。
閲覧者のクリックをきっかけに報酬が発生するという点で、他人の行動に依存しています。
一定の労働をしたからといって、必ず給付がもらえるわけではありません。
場合によっては、収入がゼロということもありえます。
アフィリエイト収入は、労働に対する給付とは言えません。
●双務契約に基いているかどうか
アフィリエイター(公務員)は、アフィリエイト会社(ASP)に対して労働を提供する義務を負っているわけではありません。
アフィリエイターである公務員は、ホームページやブログに、規約に則って広告を設置しているだけです(客観的には、サーバーにファイルをアップロードしているだけです)。
ASPに、何も労働を提供していません。
さらに、公務員は、ASPと、広告掲載の約束をしたわけでは無く、ASPの広告を掲載しなくても構いません。
つまり、アフィリエイターが、アフィリエイト会社(ASP)に対してすべきこと(債務)は、何もありません。
したがって、双方に債務があるとは言えず、双務契約とは言えません。
まとめると、過去の文献の解釈に照らせば、アフィリエイトは、上記の3の禁止行為には該当しないことが明らかとなりました。
結語
公務員のアフィリエイトは、上記の2の行為には該当するため、違法行為となります。