銅は生体に必要な微量元素です。すなわち必須微量元素です。
詳細は分かっていませんが、銅が欠乏すると、貧血をきたします。
これは、「銅欠乏性貧血」と呼ばれます。
銅の欠乏
通常の食事であれば、銅は、貝類、甲殻類、動物の肝、堅果、豆類を中心にさまざまな食品に含まれています。
したがって、通常の経口摂取下では欠乏することはまれです。
欠乏するリスク患者の例としては、高齢者で、長期間、TPNや経管栄養に依存している患者が挙げられます。
輸液や経管栄養剤に、十分な銅が含まれていないと、銅が欠乏します。
経管栄養剤について言えば、微量元素が強化されたものは高価であるため、経済的理由から使用を控える施設があり、そのような施設では、患者が銅欠乏となりやすくなります。
リスク患者に貧血を認めたときは、銅欠乏性貧血を鑑別する必要があります。
銅欠乏と貧血の関係
詳細な機序は不明ですが、一説では、銅が欠乏すると、銅の搬体であるセルロプラスミンのフェロオキシダーゼ活性が低下し、貯蔵鉄の動員が障害されるため、貧血をきたすと言われています。
銅欠乏性貧血の特徴
ほかの貧血との鑑別点となるのは、血液検査では、血清銅とセルロプラスミンの低下を認めることや、血小板数は正常であることなどです。
なお、骨髄検査の特徴は以下のとおりです。
・正形成または過形成を呈する
・顆粒球系は成熟障害が著明である
・赤芽球系は前赤芽球が増加し、過形成の傾向を認めるが、巨赤芽球変化はなく、骨髄異形成症候群と診断できるほどの異形成に乏しい
・顆粒球系、赤芽球系ともに細胞質に空泡のある細胞が散見され、とくに前骨髄球、骨髄球、前赤芽球などの幼若細胞に空泡が著明
・環状鉄芽球を認めることがある
治療
経管栄養では、不足分を補うために、硫酸銅、酢酸銅、塩化銅などを経管栄養剤に混ぜる方法や、銅の含有率が高いココア粉末を経管栄養剤に混ぜる方法があります。
静脈栄養では、高カロリー輸液に、微量元素製剤を混合することができます。