いまの世の中は、知識が価値を生み出す「知識経済」と呼ばれています。
そんな状況の中、多くの研究者や経営者から注目されている概念が、〈社会関係資本〉です。
社会関係資本
資本(キャピタル)とは、投資先と認識されているものであり、マネジメントする対象となるものです。
「資本」には、さまざまなものがあります。
・お金や株式などの〈金融資本〉
・工場等の設備や土地などの〈物的資本〉
・人材〈人的資本〉
・アイデアを生み出す知識〈知的資本〉
他方、〈社会関係資本〉という概念は、ほかの資本の概念に比べると、比較的、新しい概念です。
この概念は、「優秀な人材(人的資本)を集めても、企業経営が成功しないのは、なぜか?」という疑問が生じたことを背景に、「企業内の人間関係のネットワークも重要である」という見解から生まれたようです。
いまでは、企業単位だけでなく、個人や地域などの単位でも、社会関係資本は語られるようになっています。
この〈社会関係資本〉は、中心的研究者であるNahapietとGhoshalによれば、次のような定義が提唱されています。
社会関係資本とは、「ある個人もしくは社会単位によって保有されている関係のネットワークの中に存在し、それを通して利用でき、それより得られる、実際もしくは潜在的な資源の合計である」
つまり、この定義は…
・〈社会関係資本〉は、他の資本同様に「資源」である
・〈社会関係資本〉は、人と人とのつながりの中に存在していて、その社会関係を通して利用でき、また、そこから得ることができるものである
ということを意味しています。
社会関係資本の価値
〈社会関係資本〉の価値は、様々な視点から研究されていますが、ひとつ重要なことは、〈知的資本〉に大きな影響を及ぼすということです。
この〈社会関係資本〉が充実している組織やコミュニティでは、ノウハウ等、さまざまな知識の共有がされる傾向があり、その集団内では、必要な知識を簡単に得ることができます。また、知識の交換も活発で、その中から新しいアイデアが生み出されやすくなります。
反対に、〈社会関係資本〉の乏しい組織やコミュニティでは、知識や情報はあまり共有されないばかりか、知識の交換もないので、新しいアイデアが生まれるきっかけが少なくなります。
つまり、アイデアを生み出す源泉となる〈知的資本〉を充実させるためには、よりよい〈社会関係資本〉が必要になるというわけです。