今後、自閉スペクトラム症/白閉症スペクトラム障害(autism spectrum disorder:
ASD)の発達障害者の就労が増え、衛生管理者,安全管理者などが、発達障害者(ASD)に安全衛生教育を行う機会が増えていくことが予想される。
発達障害者(ASD)の教育を行う上で、どのような配慮が必要なのか、発達障害者の特性を把握することが大切である。
職業生活での、発達障害者の課題
独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構が出版している就業支援ハンドブックによると、発達障害者が仕事をするに際し、安全衛生教育を行うときに留意が必
要な特性は、つぎのとおり。
職務や作業
- スピードは速いが雑だったり,質を意識することが苦手
- 一度に複数のことを指示されると混乱する
- 言葉だけの指示では理解できなかったり,覚えられない
- 抽象的な指示が理解できない
- 指示が理解できなくても返事をすることがある
- 指示とは異なる勝手な判断基準で作業をしてしまう
- 自分のやり方に固執し,修正が受け入れられない
- 急な変更等があると混乱する
社会性・コミュニケーション
- 人から注意されたとき,謝罪しない,言い訳をするなど適切な対応ができない
- 暗黙のルールなど 明文化されていないことがわからない
- 分からないとき,困っているときなどに自ら助けを求めないか求められない
背景には、視覚優位であること、ワーキングメモリが少ないこと(いわゆるマルチタスクが不得意)、見通しを立てることが難しいこと(そのせいで、見通しがないことに強い不安を感じる)、および中枢性統合が弱いこと(様々な情報をまとめる能力が弱い)などが影響しているとされる。
ASD患者への必要な配慮
安全衛生教育のときは、どのような流れで行うかを最初にきちんと説明する(そして、予定はなるべく変更しない)。
ASD患者は聞きながら同時にメモすることが苦手であるから、一度に多くのこと
を伝えない。少しずつ進めていく。
行動に移すまでに長い時問がかかる場合もあるため、その点にも配慮が必要。