血液検査の検査前誤差-採血手技などの影響

検査前誤差について紹介します。

一部、似た内容の繰り返しになるところもありますが、ご容赦ください。

駆血時間

長時間の駆血で、うっ血が起こると、血管内の水分が血管外の組織に移行する。血球や蛋白及びそれに結合したものが濃縮される。

また乳酸が上昇したり、凝固活性化が惹起され、t-PAやPAI-1などの検査に影響が出たりする場合がある。

駆血時間が長くなる場合は一旦解除して再度駆血することが必要。

凝固の影響

採血手技によって、採血管内で血液が凝固する。

それにより、PTやAPTTの短縮もしくは延長、ならびに、Dダイマーの偽高値などが生じる。

循環血漿量の変化の影響

  • 血管を通過できない成分は,循環血漿量の変化で見かけの濃度が変動する。
  • 外来患者(座位採血)が入院(臥位採血)すると循環血漿量が増加し,血管外へ移動できないリポ蛋白(血清脂質)は希釈されて濃度が低下する。その低下は健常人で10%以下だが,心不全や糖尿病など循環血漿量が増加している患者や,亜硝酸薬や大量の輸液が投与されている患者では20%以上も低下しうる。このような変化を避けるには採血前に臥位で30本以上安静にする必要がある。

検体の取り違いの影響

検体を取り違った場合、患者の前回値と異なったデータになる。患者は、手術や透析などを受けていなければ、腎機能検査,蛋白質,電解質などは短期間では大きく
変動しない。

たとえ数値の動きが少なくても,関連項目が逆転した場合(アルブミンが下がって
総蛋白が上昇した,など)は取り違いの発見の契機になる。

生理的変動の影響

採血時の患者の姿勢が,活動後の座位採血ではベッド上安静時採血に比べて総蛋白,アルブミン,総コレステロール,IgG,白血球数ヘモグロビンなどが有意に高くなる(最大10%以卜)。

採血管種の間違いや抗凝固剤の混入の影響

注射器採血の場合,分注時の手技により他の採血管の成分が混入する可能性が
ある。

採血前のクレンチングや手を強く握る行為の影響

採血前に手を強く握る,あるいはクレンチングを行うことはカリウムや乳酸の上昇を招くので禁忌。

ボランティアに駆血帯をした状態で30秒から1分間、握り動作を繰り返させると血清カリウム値は1mmol/L以上も上昇したとされる。

採血ルートの影響

  • 点滴が投与されているのと同側の腕から採血すると,輸液が混入して偽性低Na 血症や偽性高K 血症,偽性高血糖,希釈による血清成分の偽低値が起きる。
  • やむをえず輸液と同じ腕から採血する場合は,点滴針より末梢に駆血帯を巻き,肘部付近では駆血帯から10cm 程度,手首付近では5cm 程度離れた部位から採血する。

薬剤の影響

  • ドブタミンやドパミンが持続投与されている場合,採血した血液に混入するとクレアチニン(酵素法)が有意に低値となり,腎機能が過大評価される
    おそれがある。

ヘパリン投与の影響

脂質検査

急性冠症候群(acute coronary syndrome:ACS)で経皮的冠動脈形成術(PCI)の際に投与される大量のヘパリンはコレステロールを有意に低下させるので,入院翌朝の空腹時採血のデータは,発症前の脂質プロフィールを反映しない。

止血検査

採血の際、ヘパリンが血液に混入した場合、APTTが異常に延長(測定不能もありえる)し、PTも延長する。

溶血の影響

溶血した検体では、AST,LD,カリウムなどが有意に上昇する。

なお、25Gの細い注射針は溶血を引き起こすため、21から23Gの太さで針先が静脈採血用の注射針あるいは翼状針を用いる。

採血針穿刺時の刺し損ないの影響

穿刺したまま血管を探ると、APTTの延長,トロンビン・アンチトロンビン複合体や可溶性フィブリンモノマー複合体の高値など、凝固検査への影響が報告されている。

採血の量不足の影響

採血量不足により、過剰な陰圧による赤血球内成分(LDなど)の逸脱、凝固検査におけるクエン酸濃度の過剰(PTやAPTTの有意な延長)、高濃度EDTAによる血球の変形(末梢血液像への影響)などが報告されている。

特に翼状針を用いた際の真空採血管採血の場合、クエン酸ナトリウム採血管を用いて採血すると翼状針のチューブ部分にある空気のため真空採血管に入る血液量が不足し、結果として血液とクエン酸ナトリウムの比が9:1より不足する。

血球成分の崩壊の影響

慢性白血病患者の血液において、エアシューターで検体を搬送することによりカリウムの異常高値が出現した症例が報告されている。