「タバコはカッコいい」
そんな昭和の価値観は,現代では否定されていますね.
ご存知の通り,主な理由は,本人だけでなく,周囲の人の健康を害するからです.
特に,煙の影響は,妊婦の胎内にいる胎児や,家庭内の幼い子どもにまで及びます.
このことから,タバコを,「悪」あるいは「憎むべき敵」として見る人もいるほどです.
しかし,タバコを吸っている人は,そういうことが分かっていてもなかなか辞められないのが現状ではないかなと思います.
JTの調査によれば,2018年の段階で,約28%の男性と,約9%の女性が喫煙しているようです.
これだけネットが発達して,タバコの害を把握しやすいのに,彼ら/彼女らは,なぜタバコをやめられないのでしょうか?
ここでは,その現象を理解するため,ニコチン依存の仕組みについて,文献を参考に勉強したことをまとめてみました.
内容を理解すると,けっこう面白く感じられます.
禁煙ストレスの正体
喫煙者がタバコをやめると,たった1日で,ストレス悩まされます.
そして,ストレスに耐えきれなくなります.
しかし,再びタバコを吸うと,ストレスが消えてしまいます.
すると,「やはりタバコは必要だ」と考え,辞められなくなってしまいます.
そのストレスの正体は,ニコチン依存の離脱症状と呼ばれるものです.
脳の仕組みとニコチンの作用
やや小難しい話になりますが,脳の神経細胞のシナプスはアセチルコリン,ドーパミン,ノルアドレナリン,セロトニンなどの神経伝達物質で情報の伝達を行っています.
シナプス前膜では,神経伝達物質の合成と放出が行われます.
シナプス後膜では,神経伝達物質の受容体があり,放出された神経伝達物質の識別を行います.
識別されたときはシナプス後膜で電気的興奮が生じます.
役目を終えた余分な伝達物質はシナプス間隙で速やかに代謝されます.
ところが,
ニコチンがシナプスに入り込むと,シナプス前膜に作用し,神経伝達物質の合成と放出を促進します.
また,ニコチンは,自らシナプス後膜に働きかけ,受容体を介さずに,後膜の電気的興奮を生じさせます.
このメカニズムにより,ニコチンの気分高揚感や覚醒作用が現れます.
ニコチン離脱症状
ニコチンは本来の神経伝達物質と異なり,シナプス間隙で代謝されません.
つまり,シナプス前膜では神経伝達物質を合成放出し続け、,シナプス後膜は通常より長く興奮を続けることになります.
喫煙によりニコチン刺激が常態化するとシナプス前陣では神経伝達物質が枯渇し,シナプス後膜では受容体が減少してしまいます.
この状態ではニコチンが存在しないとシナプス間隙で神経伝達が不十分となり,気分が沈んだりイライラしたり眠たくなったりする症状が現れます。
これが「ニコチン離脱症状」と呼ばれるストレスの正体なのです.
以上,タバコをやめられないメカニズムでした.