ノカルジア症(nocardiosis)の感染ルートや、病態・診断・治療について解説します。
定義
ノカルジア症は,放線菌目に属するノカルジア属菌の感染によって発症する感染症です。
感染ルート
ノカルジアは、土壌などの自然界に広く分布しています。
外傷などにより皮膚に感染したり、経気道的に肺に感染したり、血流を介して中枢神経系や腎などの全身の臓器に播種性感染を生じたりします。
日和見感染症として発症することが多いです。
なお、ノカルジアには、Nocardia asteroides、N. farcinica、N. brasiliensis、N. novaなどの菌種がいます。
ヒトに感染し、発症する代表的なものは、Nocardia asteroidesです。
病態
一般的に、ノカルジアは、膿瘍を形成し組織を壊死させます。
したがって、発熱、疼痛などがみられます。
とくに、肺ノカルジア症では、咳や痰などがみられ、また、胸部X線所見では,多発もしくは孤立性の結節影や塊状影が特徴的で,空洞形成がみられることもあります。
また、中枢神経系の感染では、神経症状がみられます。
診断
膿瘍の穿刺液や喀痰などの検体から塗抹鏡検します(ノカルジアはグラム陽性桿菌)。
さらに、好気培養で菌の検出を試みます(ノカルジアは好気性菌)。
なお、Nocardia asteroidesは、40度から45度で培養すると、他の菌の発育を抑制できると言われており、培養には2週間以上を要することもあります。
レジオネラ選択培地であるWYO培地に発育可能であることから、WYO培地に喀痰を塗布して培養すると、分離率が向上します。
治療
抗菌薬の第一選択は、ST合剤(バクタ)です。
ミノマイシンや、アミカシン、イミペネムなども使用できます。
なお、皮膚ノカルジア症では、膿瘍の切開、排膿が重要です。