IGRA検査である、クォンティフェロン検査(QFT検査)とTスポット検査(T−spot)について解説します。
IGRA
IGRAは、インターフェロン-γ遊離試験(interferon-gamma release assays)の略語です。
IGRA検査は、結核感染の診断に使用されています。
QFT
クォンティフェロン検査は、全血中のリンパ球を、結核菌群の特異抗原(ESAT-6、CFP-10、TB7.7)で刺激し、血漿中に産生されたインターフェロン-γ(IFN-γ)の濃度を、ELISA法により定量します。
陽性
IFN-γの分泌量が0.35以上の場合、「陽性」となります。この場合、結核感染を疑います。
ただし、いつごろ感染したか判断できないため、病歴や所見から総合的に判断する必要があります。
陰性
0.1未満は、「陰性」と判断されます。 この場合、結核に感染したことがないと判断されます。
疑陽性
0.1から0.34は、「疑陽性」であり、判定保留となります。この場合、通常は感染していないと判断されますが、経過観察し、再検査などして総合的に判断されます。
判定不可
QFT検査では、リンパ球がIFN-γを産生する能力を確認する目的で、上記の試験と平行して、リンパ球を「マイトジェン」という物質で刺激して反応をみる検査も行います。
特異抗原刺激が陽性以外の場合で、マイトジェン刺激が0.5以下の場合は、免疫抑制状態と考えられ、判定不可となり、この場合、 結核感染の有無を判定できません。免疫不全などでない場合、再び採血して再検査することが推奨されます。
Tスポット検査(T−spot)
Tスポット検査では、ELISPOT法によって、IFN-γ産生細胞の個数を測定することが特徴です。
具体的には、Tスポット検査は、まず、全血から末梢単核球(PBMC)を精製し、これを、IFN-γ抗体を固相したマイクロプレートのウェルに加え、結核菌群特異抗原( ESAT-6およびCFP-10)と16~20時間ほど反応させます。
そして、ウェルを洗浄した後、標識抗体試薬を加え、さらにウェルを洗浄することにより非結合の抗体を除去します。
そこに基質試薬を加えると、IFN-γを産生したエフェクターT細胞の痕跡が「スポット」として観察できますので、反応したリンパ球のSPOT数と、抗原刺激のないコントロールの SPOT数との差から、感染の有無を判定します。
すなわち、(1)パネル Aウェル(ESAT-6)のスポット数 – 陰 性コントロールウェルのスポット数および(2)パネル B ウェル(CFP-10)のスポット数 – 陰 性コントロールウェルのスポット数を算出し、以下の基準で判定します。
判定保留や判定不可の場合は、再検査となります。
陽性
(1)および(2)の一方または両方が 6 スポット以上
陰性
(1)および(2)の両方が 5 スポット以下
判定保留
(1)および(2)の両方の最大値が 5〜7の場合
判定不可
陰性コントロールのスポット数>10の場合、および、陽性コントロールのスポット数<20の場合
QFT検査とTスポット検査の異同
両者は、結核の感染診断を行うための血液検査(IGRA検査)であり、特異抗原(ESAT-6、CFP-10)を用いてT細胞の刺激を行う点で共通しています。
また、両者ともに、高い感度と特異度を有する点では同じで、同等の検査性能と評価されています。
ただし、T-SPOTはリンパ球を分離して数を調整するため、特にHIV感染症のようにリンパ球が減少するような状況では、QFTよりも感度低下が少なくなります。
また、検体採取から検査の実施まで、QFT検査では最大16時間の猶予しかないのに対し、Tスポット検査は最大で32時間の猶予がありますので、配送コストが低く済む(特別便が不要)という点で、Tスポットのほうが優れます。