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散録

他人の名前を含む商標「月の友の会」事件(最高裁昭和57年11月12日第2小法廷判決)

事件名
月の友の会」事件

この判決に関する論点

「株式会社○○○」のうち、株式会社を除いた「○○○」の部分は、
4条1項8号における「他人の名称」か?それとも、「他人の名称の略称」か?

事実関係

・登録商標 「月の友の会」指定商品「被服、布製見回品、寝具類」があった。

・『株式会社月の友の会』は、登録商標 「月の友の会」に対して、無効審判を請求した。

本判決の結論

・棄却
・判旨

「株式会社の商号は商標法4条1項8号にいう「他人の名称」に該当し、株式会社の商号から株式会社なる文字を除いた部分は同号にいう「他人の名称の略称」に該当するものと解すべきであつて、

登録を受けようとする商標が他人たる株式会社の商号から株式会社なる文字を除いた略称を含むものである場合には、

その商標は、右略称が他人たる株式会社を表示するものとして「著名」であるときに限り登録を受けることができないものと解するのが相当である。

ところで、被上告人が登録を受けた「A」なる商標は、上告人の商号である「株式会社A」から株式会社なる文字を除いた部分と同一のものであり、他人の名称の略称からなる商標にほかならないのであつて、

被上告人がその登録を受けることができないのは、「A」が上告人を表示するものとして著名であるときに限られるものというべきである。

以上と同趣旨の原審の判断は、正当として是認することができ、その過程に所論の違法はない。

所論引用の大審院判例は、「他人ノ商号ヲ有スル商標」は登録を受けることができない旨規定するにとどまり、他人の商号の略称を含む商標についてはなんら規定していなかつた旧商標法(大正一〇年法律第九九号)のもとにおける判例であつて、本件に適切でない。

論旨は、採用することができない。

原審の適法に確定した事実関係のもとにおいて、「A」が商標法四条一項八号にいう「他人の名称の著名な略称」に該当しないとした原審の判断は、正当として是認することができ、その過程に所論の違法はない。論旨は、採用することができない。

解説

4状1項8号では、
「他人の肖像又は他人の氏名若しくは名称若しくは著名な雅号、芸名若しくは筆名若しくはこれらの著名な略称を含む商標(その他人の承諾を得ているものを除く。) 」と規定されています。

従って、ある登録商標が、4条1項8号を無効理由として無効とされるためには、

株式会社を除いた部分が、
4条1項8号における「他人の名称」であれば、その部分は、著名でなくともよいことになります。
しかし、「他人の名称の略称」であれば、著名性が要求されます。

この判決は、この重要な点についてなされたものであり、「他人の名称の略称」であるという判断を下しました。

補足
なお、「株式会社」の部分は、会社の種類を表すものとして、格別の識別標識とはならない、という意見があります(百選p20~21))