定義
A型肝炎は、A型肝炎ウイルス(HAV)による急性ウイルス肝炎です。
解説
ウイルス
A型肝炎ウイルス(HAV)は、ピコルナウイルス科のヘバトウイルス属に分類される全長7500塩基の一本鎖のプラス鎖RNAウイルスです。
HAV遺伝子型は1 ~ 7型までの7種類に分類されています。
感染ルート
主な感染媒体は汚染された水および食べ物であり、経口感染で拡がります。
肝臓で増殖したウイルスが胆汁から腸管、そして便中に排出され、排泄物がなんらかの経路で口より侵人し感染が成立します。
最近では、HAVに汚染された輸入食品による感染例が散見されます。
また、ドラック使用者間の感染や、同性愛者間での流行なども見られます。
なお、日本では公衆衛生環境の発達や上下水道の整備に伴い、A型肝炎の発生数は減少しています。
しかし、世界的には、A型肝炎流行国は多く、そのような地域への渡航がリスクファクターとなっています。
症状
感染から約1ヶ月の潜伏期間を経て発症します。
前駆症状として突然の高熱 (38℃以上)と、全身の著しい倦怠感が特徴的です。
他の症状として、頭痛、関節痛、筋肉痛、咽頭痛等の前駆症状がみられることもあります。
その後、典型的には、黄疸、肝腫脹、黒色尿、白色便などがみられます。
成人は40~70 %が黄疸になると言われます。
小児では不顕性感染や軽症ですむことが多く、6歳以下の黄疸出現率は10%以下と言われます。
なお、罹患年令が高いほど、重症例・死亡例が増加する傾向があります。
治療
HAVに感染し発症すると、一ヶ月程度の入院加療を必要とします。
基本的には安静で、他の急性肝炎と同様、対症療法が中心となります。
検査
HAVの急性感染の診断は、IgM-HA抗体を検査します。
症状が出現してAST/ALTが上昇しているときには、通常はlgM-HA抗体が上昇しています。
したがって、この検査が陽性であれば、A型急性肝炎として診断可能できます。
陽性は感染後3~6ヵ月間持続すると言われています。
なお、重症A型急性肝炎の急性期には、AST/ALTが上昇しているにもかかわらず、lgM-HA抗体が上昇していない症例も報告されているため、注意が必要です。
予後
一般に、致死率が低く慢性化もしません。
予後良好な疾病です。
法律
感染症予防法では4類感染症に分類されており、ただちに届け出る必要があります。