1940年代から,つぎつぎと耐性菌が出現しています。
そのような状況下で、2000年代に入り,耐性遺伝子を獲得した腸内細菌が市中で拡散しはじめます。
主にESBL産生菌です。菌種としては、大腸菌、クレブシエラ属菌、プロテウス属菌 などです。
ESBL産生菌には多くのβラクタム系の抗菌薬が無効です。
ペニシリン系、セファロスポリン系(第 1~4世代)、モノバクタム系などは、ESBLに分解されてしまいます。
しかし、一部、有効な抗菌薬があります。
特に、カルバペネム系抗菌薬が効果がありました。
カルバペネマーゼ産生腸内細菌科細菌(CPE)とは
定義
カルバペネムを含む多くのβラクタム系抗菌薬を分解できる酵素「カルバペネマーゼ」を産生する腸内細菌科細菌。
特徴
カルバペネマーゼ遺伝子はプラスミドで他の菌にも伝播する。
問題点
カルバペネム系の抗菌薬は、さまざまな菌に効果がある(スペクトラムが広い)。
そのため、カルバペネム系抗菌薬は、グラム陰性桿菌による感染症の治療の事実上の切り札という位置づけである。
しかし、カルバペネマーゼ産生の大腸菌,クレブシエラ,エンテロバクター,シトロバクターなどが、欧米やアジアなど世界各地で拡散し,感染症治療を難しくしている。
海外の状況
カルバペネマーゼ産生腸内細菌科細菌(CPE)は、2013年、アメリカ疾病管理予防センター(CDC)が警告した菌である。
日本で検出されるCPE
日本ではCPEが感染症の原因菌として検出されることは少ない。国立感染研の病原体サーベイランスによれば、2018年中に国内で検出されたCPEは、297株だった。
国立感染症研究所ウェブサイト参照(https://www.niid.go.jp/niid/ja/cre-m/cre-iasrd/9124-475d01.html)
国内でのアウトブレイク事例が散見される
たとえば、国立病院機構大阪医療センターでは、112人から7菌種のCPEが検出されたことがある。
腸内細菌の怖さ
腸内細菌は、通常、ヒトの消化管内に常在(無害)する。
しかし、何らかの原因で血流中や腹膜腔内などに侵入すると、発熱などに続いて急激にエンドトキシンショック、多臓器不全を誘発し、患者が死亡する危険性が高い。
カルバペネマーゼの種類
メタロβラクタマーゼ
- IMP型
- VIM型
- NDM型
- SPM型
- GIM型
- SIM型
- KHM型
- AIM型
- DIM型
セリンβラクタマーゼ
- KPC型
- IMI型
- SME型
- GES型
- OXA型
CPEの新規治療薬
βラクタマーゼ阻害薬配合剤
- セフタジジム・アビバクタム
- メロペネム・バボルバクタム
新規アミノ配糖体系薬
- プラゾマイシン
新規テトラサイクリン系薬
- エラバサイクリン
- オマダサイクリン
新規シデロフォアセファロスポリン抗菌薬
- セフィデロコル