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炎症と血清銅(Cu)

炎症と血清銅(Cu)の関係について解説します。

血清銅と炎症

銅の代謝

銅は、胃および十二指腸(小腸上部)で吸収され、肝細胞に取り込まれます。

そして、銅は、その大部分が、肝細胞内でアポセルロプラスミンに結合する結果、ホロセルロプラスミンが形成されて血中へと分泌されます。

セルロプラスミンと炎症反応

セルロプラスミンは、急性相蛋白質です。

すなわち、炎症反応が起きると、肝臓でのセルロプラスミンの合成が亢進します。

したがって、セルロプラスミンの増加を反映して、血清銅の測定値は上昇します。

解釈上の注意

炎症が起きたとき、上述のように、血清銅の測定値は上昇します。

しかし、炎症が収まるにつれて、セルロプラスミンの合成量も低下しますので、血清銅の測定値も低下していきます。

よって、炎症の収束後に、血清銅の測定値の低下を認めたからといって、そのことのみをもって、「銅が不足している」と解釈してはいけない点に注意が必要です。

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炎症と血清鉄(Fe)

血清鉄と炎症の関係について解説します。

炎症と血清鉄

血清中の鉄の濃度は、炎症によって測定値が変動します。

理由として、まず、血清中の鉄は、トランスフェリン(Tf)と結合しています。

トランスフェリン(Tf)は、肝臓で産生される蛋白質です。

このトランスフェリン(Tf)は、炎症があるとき、肝臓での合成量が低下します。

これは、炎症があるとき、肝臓は、トランスフェリン(Tf)よりも炎症反応に必要なタンパク質を優先して作ろうとするためです。

したがって、血中のトランスフェリン(Tf)の減少によって、血清中に存在する鉄の量が減少します。

解釈上の注意

炎症が起きたとき、上述のように、血清鉄の測定値は大きく低下します。

よって、血清鉄の測定値が低値であったとしても、そのことのみをもって、「鉄が欠乏している」と解釈してはいけない点に注意が必要です。

炎症の回復を待って、血清鉄の値が上昇するのを確認すれば良いでしょう。

ただし、炎症が起きる前から血清鉄が低値を示していた患者については、体内にある鉄が、もともと不足していた可能性があり、炎症が回復しても、血清鉄の値がそれほど上昇しない場合があります。

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炎症マーカー(CRP,WBC,DIFF)

炎症マーカーについて概要を解説します。

炎症マーカーとは

炎症は、体内の組織の傷害・崩壊や悪性腫瘍の転移などに対応し、組織を修復しようとする反応です。

目に見える症状としては、痙痛や発熱、腫脹、発赤があります。

「炎症マーカー」とは、この炎症反応を把握するための検査の対象となるものです。

代表的なものにCRPがあります。

CRP(C反応性蛋白)

体内に病原微生物が侵入して、組織の損傷が生じたりすると、マクロファージなどの免疫系の細胞は、サイトカインを産生します。

サイトカインの刺激により、肝臓から、CRPなどの急性相反応物質が血中に放出されます。

CRPは、炎症が無い状態では、ほとんど産生されていません。

しかし、炎症が起これば数時間以内に上昇し、2〜3日で最高値を示します。

その後、炎症の収束につれて、7日〜10日ほどで消失します。

CRPの半減期

なお、CRPの血中の半減期は、約18時間です。

血中濃度が素早く変動するため、炎症の状態を鋭敏に反映します。

CRP の生体内における動態、臨床検査 vol.64 no.9 2020年9月より引用
CRP の生体内における動態、臨床検査 vol.64 no.9 2020年9月より引用

CRPと病態

CRPが上昇する疾患には、たとえば、細菌感染症、ウイルス感染症、外傷、手術後、全身性エリテマトーデス、サルコイドーシス、心筋梗塞、悪性腫瘍、クローン病、潰瘍性大腸炎、慢性関節リウマチ、急性膵炎、敗血症、肺炎、血管炎などがあります。

CRPの上昇の程度はその組織障害の程度を示します。

以上の理由で、CRPは、病態把握や経過観察に用いられています。

CRPの検査

検体は血清を用います。

基準範囲は0.3mg/dL以下です。

なお、慢性的な炎症のある患者では、CRPの測定値が恒常的に0.3mg/dLを上回る値となっていることがほとんどです。

白血球数と自血球分画

白血球数や白血球分画も、炎症の有無や程度を判断するのに重要な指標となります。

白血球には好中球、リンパ球、単球、好酸球、 好塩基球の5種類の細胞があります。

CRPの増加に加えて、白血球数の増加と好中球の割合の増加を認めたときは、細菌感染症を疑います。

白血球の半減期

なお、白血球の血中の半減期は、約6時間です。

したがって、炎症が起きれば、CRPよりも早く上昇し、また、炎症の改善があれば、自血球数の減少は、CRPの低下よりも早く現れます。

白血球の検査

検体は、EDTA採血管を用い、全血を使用します。

白血球分類は、自動分析機で測定可能です。

精査が必要な症例では、血液標本をつくり、数や形態を顕微鏡で観察します。

基準値は成人で、自血球数が「3,500~9,000/μL」、また、白血球分類が、好中球「40〜60%」、リンパ球「18〜50%」、単球「2~10%」、好酸球「1〜5%」、好塩基球「0〜2%」です。

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プレセプシンとは?(Presepsin)

プレセプシンとは

プレセプシンはタンパク質であり、敗血症で血中レベルが上昇します。

血中レベルが上昇する仕組みとしては、細菌が顆粒球などに貪食された際、同時に取り込まれたCD14が、テプシンDなどの酵素作用により消化され、その一部がプレセプシンとして血中に放出されます。

プレセプシン測定のメリット

敗血症は、早期に積極的な治療を開始する ことが救命率を上げるために重要です。

そのためには、早期診断が欠かせませんが、臨床所見のみで敗血症の診断をするのは難しく、また、血液培養は確実な検査ができるが検査に時間がかかるという欠点があります。

さらに、炎症マーカーの『プロカルシトニン(PCT)』や、『C反応性蛋白(CRP)』は、敗血症を確実に診断できるという検査でもありません。

このような背景がある中で、敗血症時に特異的に上昇すると言われているのがプレセプシンです。

プレセプシンは、CRPやプロカルシトニン(PCT)よりも半日から数日は早く血中レベルが上昇する(陽性になる)ため、迅速な診断に役立ちます。

また、プレセプシンを測定するメリットとして、外傷や熱傷、手術などによる侵襲の影響が少ないため、CRPやPCTと比べ、偽陽性となることが少ないというメリットがあります。

また、PCT 濃度は敗血症の重症度 や死亡率と相関しないのに対して、プレセプシンについては、敗血症が重症であるほど高い値を示すため、重症度判定と予後の予測に役立ちます。