軟部肉腫の病態、診断、治療について解説します。
病態
軟部肉腫は、筋肉内や皮下組織などの軟部に発生する間葉系悪性腫瘍肉腫です。
まれなガンで、発生年間は約10万人に1人程度と推測されています。
なお、小児に発生する軟部肉腫はさらに少なく、全小児がんの5~6%にあたると言われています。
軟部肉腫の多くは、 痛みなどの症状がない腫瘤や腫れ(腫張)として自覚されます。
痛みがないと医療機潤の受診が遅れがちになり、10cmを超える巨大な腫瘍を形成してから受診されるケースも多いと言われています。
ただし、一部には腫瘤自体に痛みがあったり、腫瘤が大きくなって神経を圧迫し、痛みを伴うことがあります。
また、皮膚の色が変わったり潰瘍ができることもあります。
手足にできた腫瘍が大きくなり、関節が曲がらなくなったり、座ることができなくなったりする事例もあります。
乳児の場合は、訴えがないので注意が必要です。
なお、軟部肉腫の組織型は、主な分類だけで30あるとされています。
分類によって、その内容は大きく異なり、たとてば、軟部肉腫である粘液線維肉腫と滑膜肉腫では、好発年齢や病気の振る舞いが大きく異なります。
診断
軟部腫瘍の性状を評価するのに 最も適した画像検査は、造影MRIです。
軟部肉腫の多くは肺に転移するため、軟部肉腫を疑った場合は局所の評価に加えて、胸部CTを撮像することも必要です。
また、軟部肉腫を疑い、腫瘍の一部をとり(切開生検)、病理組織学的に診断する場合もあります。
組織採取の方法として、コアニードル針を用いた針生検、 切開生検などが行われます。
なお、日常臨床では、特に四肢や体幹表面に触れる良性軟部腫瘍との鑑別が重要です。
ちなみに良性の軟部腫瘍のうち、頻度が高いものは脂肪腫、神経鞘腫、血管腫(血管奇形)などであり、これらの良性軟部腫瘍は軟部肉腫の約10~100倍の発生率と言われています。
治療
軟部肉腫における治療の中心は外科療法です。
悪性の場合には、腫瘍を周囲の健常組織で包むようにして切除する広範囲切除(wide excision, wide resection)が重要で、広範囲の切除であればあるほど術後再発を防ぐ可能性が高まります。
ただし、術前の画像から予想される以上に腫瘍が周囲組織に連続性に広がっていた場合や、 術前の画像では描出されない微小な血行性あるいはリンパ行性の転移病巣が原発巣と非連続性に存在していた場合などには、再発の可能性が高まると言われています。
悪性軟部腫瘍は, 低悪性度または中悪性度の場合、通常は、化学療法は施行されませんが、悪性度の高い肉腫は手術だけではなく、化学療法(抗がん剤)を行い、さらに放射線療法や温熱療法などいろいろな治療を組み合わせる治療(集学的治療)が行われます。