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胸腺腫の病態、治療、予後

胸腺腫の病態、治療、予後について解説します。

病態

胸腺腫は縦隔腫瘍の中でも最も高頻度であり, 胸腺上皮細胞由来の代表的腫瘍です。

胸腺腫は、30歳以上の成人に好発し、発生頻度には男女差を認めません。

胸腺腫は、半数以上が無症状で、検診などで偶発的に発見されることが多いとされています。

通常、胸腺腫は結合組織の被膜で覆われており、胸腺内にとどまることが多いとされていますが、進行すると周囲の肺、心臓、上大静脈、胸膜への浸潤や播種を来すことがあります。

周囲の臓器への腫瘍の圧排や浸潤によって、胸痛、咳、呼吸困難、横隔神経麻痺、上大静脈症候群などを認めます。

また、胸腺腫は、さまざまな自己免疫性疾患を合併することも知られており、代表的なものとして、重症筋無力症、低ガンマグロブリン血症、赤芽球癖、シェーグレン症候群などが報告されています。

胸腺腫の血行性転移の頻度は低いとされています。

転移の中では肺転移が多いようです。

なお、病理学的には、胸腺腫は胸腺上皮由来の、正常の胸腺上皮によく似た細胞異型の目立たない細胞からなる腫瘍であり、正常の胸腺組織にみられるような未熟Tリンパ球を種々の程度に随伴します。

治療

治療は早期例には外科的切除が行われます。

現在は、胸腺腫に対する胸腔鏡手術が広く行われるようになっています。

腫瘍の大きさ、部位、進行度、病期から手術適応を判断し、胸腺切除範囲を含めた胸腺腫に対する適切な術式が検討されます。

胸腺腫に対する胸腔鏡手術は良好な治療成績と言われています。

進行例には、外科的切除に化学療法および放射線治療を含めた集学的治療が行われます。

ただし、浸潤型の胸腺腫の場合は、治療の基本方針は腫瘍の完全切除ですが、比較的稀な疾患のため、一期的切除が困難な進行症例に対する治療方針に関してコンセンサスは確立されていません。

予後

胸腺腫の予後はWHO組織分類と正岡病期分類が指標となっています。

報告によると、WHO組織分類のA型は、正岡分類のⅠ期 80%、Ⅱ期 17%、Ⅲ期 3%であり、5年および10年生存率は100%です。

AB型は、正岡分類のⅠ期 71.1%、Ⅱ期 21.6%、Ⅲ期 5.6%であり、5年および10年生存率は80~100%です。

B1型は、正岡分類のⅠ期 53~58%、Ⅱ期 24~27%であり、10年生存率は90%以上です。

B2型は、正岡分類のⅠ期 10~48%、Ⅱ期 13~53%、Ⅲ期 19~49%、Ⅳ期 8.9%であり、10年生存率は50%以上です。

B3型は、正岡分類のⅠ期 4.2%、Ⅱ期 15~38%、Ⅲ期 38~66%、Ⅳ期 6~26%であり、10年生存率は50~70%です。