ステロイドには炎症を抑える働き(抗炎症作用)、免疫抑制作用などがあります。
しかし、糖・脂質の代謝や、骨の代謝、電解質バランスに影響を与える結果、副作用があります。
ステロイドの副作用は、投与直後から現れるものと、長期投与に伴って出現するものとがあります。
ここでは、時期に応じた副作用を紹介します。
投与直後の副作用
投与直後には、高血糖や精神症状などが現れます。
高血糖
ステロイドは血糖値を上昇させる働きをします。
このため、ステロイド投与後に急に血糖値が上昇することがあります。
したがって、糖尿病の患者には、できるだけステロイドは投与しないようにします。
ただし、糖尿病であっても、ステロイドが必要な患者には、インスリンで血糖コントロールをしながらステロイドを投与することがあります。
終末期
なお、終末期(ターミナル)の患者では、厳密な血糖コントロールは行ないません。血糖値か200~250mg/dLくらいの高血糖でも、問題にすることはありません。
精神症状(不眠・せん妄)
ステロイドのせいで、不眠やせん妄などの精神症状が現れることがあります。
不眠を防ぐため、ステロイドを投与するときは、なるべく午前中に投与します。
なお、高齢者や肝機能の低下した方は、ステロイドによるせん妄を起こしやすくなります。
1~2カ月後にみられる副作用
投与を、はじめて1ヶ月から2ヶ月経つと、消化性潰瘍、易感染、ムーンフェイスなどが現れます。
消化性潰瘍
ステロイドは消化性潰瘍の副作用があります。
さらに、NSAIDs(非ステロイド性抗炎症薬)と併用すると消化性潰瘍のリスクが約15倍増加するといわれています。
易感染
ステロイドは免疫抑制作用があります。
したがって、長期投与になると感染症のリスクが上がります。
特に注意が必要なものとして、結核があります。
結核にかかったことのある患者は、免疫抑制によって、結核が再燃することがあります。
満月様顔貌(ムーンフェイス)
ステロイドによって、顔や体幹に脂肪が沈着します。
いわゆる中心性肥満です(クッシング症状)。
1カ月以上ステロイドを投与すると約3割の患者でムーンフェイスを生じると報告されています。
3カ月以降の副作用
ステロイドの投与が3ヶ月以上になると、つぎの問題が起こりえます。
骨粗鬆症
ステロイドを3ヶ月以上使用すると、骨粗鬆症による骨折のリスクが上がります。
ミオパチー
ステロイドの投与が3ヶ月続くと、ミオパチー(筋疾患)が問題になります。
ステロイドによって、筋肉細胞が分解され、筋肉が萎縮します。
ステロイドを長期間使用している患者が、筋力低下が目立ち動けなくなったときは、ステロイドミオパチーが疑われます。