大きく下落しても、なお根強い人気の仮想通貨です。

なぜ、下げ相場でも、人々は仮想通貨を支え続けられたのでしょうか。

この点については、さまざまな視点や観点からの考察がありえます。

ここでは、心理学の観点で、「正常性バイアス」「群集心理」 という2つの心理学キーワードから考えてみます。

心理学における「正常性バイアス」とは、人間が思わぬシチュエーションに遭遇したときに、無意識的に、都合のよい情報だけを信じてしまうことをいいます。

正常性バイアスは、心の安定を保つため、考えたくない出来事に目を閉ざし&耳を塞ぎ、ストレスを回避しようとする脳の働きによるものです。

2017年末からのの大幅な下落のときに、「バーゲンセールだ!」「もう二度とこの価格では買えないぞ!」という書き込みに乗せられて、急いで購入した人も、少なくないのではないでしょうか。

これが、まさに「正常性バイアス」が発動していた状態なのです。

そして、「群衆心理」です。

心理学では、人は集団になると思考停止状態に陥り,自分の考えや行動などを深くかえりみなくなると言われています。

これが「群集心理」といわれるものでして、群衆心理に関連する古典的な研究は、フランスの思想家ギュスターヴ・ル・ボンによるものでした。

彼の主著である『群集心理』は、フランス革命の9月虐殺(1792年)におけるパリ市民の行動の分析などにもとづいています。

この事件では、パリ市内の牢獄が市民らによって襲撃され、収監されていた聖職者や未決の囚人たちが、人民裁判の名のもとに虐殺されたのです。

衝撃的だったのは、虐殺にかかわったのは、ごく普通の市民たちだった点です。

特に有名な虐殺行為は、マリー・アントワネットの女官長であったランバル夫人が、狂気に取りつかれていた市民らによって、殺されただけではなく、死体となった後にドレスを剥ぎとられ、首や手足が切断され、その頭が槍に突き刺された件でしょうか。

ル・ボンは、この群集の予想もつかない行動に、「恐怖」 を感じたと言われています。

そのため、彼は、『群集心理』で、指導者に向け、「群衆を操作する方法論」を記したのでした。

ちなみに、ル・ボンの『群集心理』は、後に、ヒトラーが熟読したことが歴史家によって指摘されているそうです。

すこし話が脱線しましたが、ル・ボンが指摘したところによると、群衆は、さまざまな特徴を有しています。

中でも注目すべきものが、「断言に弱い」「反復に弱い」という特徴でしょう。

すなわち、群衆には、単純で本能的な訴えが無批判に受け入れられやすく、強烈な断定的表現を繰り返すと、思想は群衆に簡単に感染していく、というものです。

昨年は年末にかけて、仮想通貨に関するツイッター、ブログ、ネット広告、テレビコマーシャル、ワイドショー、雑誌などの表現は、「ブロックチェーンは革新的」「世界を変える」「確実に値上がりする」「絶対に儲かる」などポジティブなものばかりでした。

わかりやすく、覚えやすく、耳に残りやすい言葉が反復されたことによって、感染が広がったというわけです。

ちなみに選挙でワンフレーズのスローガンが多用されるのも、この効果を狙ったものです。

この感染が広がった状態では、上述の正常性バイアスとあいまって、値下がり(暴落!?)という、一見すれば危険な状況に陥っても、冷静な判断ができなくなってしまうのです。

結果として、リップラー、ネムラーなどなど、特定の仮想通貨のコミュニティの発信する情報、つまり「ガチホ一択!」という言葉や、ツイッターでインフルエンサーが発信する言葉などに強く影響を受けてしまい、そのような人たちと同じ行動をとることが安全だと考えて(信じて)しまい、多くの人が、仮想通貨の売り時を逃してしまったり、下げ相場の途中で買い増ししたりしたのです。

そもそも人間は、集団で行動していると、道徳観が薄れたり、倫理的思考ができなくなったりする傾向があるので、下落相場の中でも他人に購入を勧める、そのような発信が増えるのも、当然といえば当然のことではあるわけです。

(いじめの加害者が、常に複数人いるのも、これが理由です)

以上を踏まえて、これからの仮想通貨への投資では、正常性バイアスおよび群衆心理を意識し、これらに惑わされないようにしましょう。