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資金決済法の概要と、仮想通貨について改正されたときの背景の解説

資金決済法の概要と、仮想通貨について改正されたときの背景について解説します。

概要

まずは、資金決済法の概要です。

定義

資金決済法は、「資金決済に関する法律(平成二十一年法律第五十九号)」の略称です。

内閣が提出し、第171回国会で制定されました。

※参考リンク 金融庁 衆議院 参議院

2010年に施行されました。

立法目的

資金決済サービスの拡充や適切な運営を目的として制定された法律です。

送金などの為替取引は、従来、銀行等の金融機関だけに認められていましたが、登録を行った資金移動業者にも、少額に限って送金などが認められるようになりました。

また、電子マネーなど前払い式の支払い手段に関しても、利用者保護の強化など、必要な法整備が行われました。

ちなみに、この法律の第一条に、法目的が規定されています。

(制定時の条文)第一条 この法律は、資金決済に関するサービスの適切な実施を確保し、その利用者等を保護するとともに、当該サービスの提供の促進を図るため、前払式支払手段の発行、銀行等以外の者が行う為替取引及び銀行等の間で生じた為替取引に係る債権債務の清算について、登録その他の必要な措置を講じ、もって資金決済システムの安全性、効率性及び利便性の向上に資することを目的とする。

資料

金融庁のサイトに、当時の資料がありますので、よければご参照ください。

法律の概要

パンフレット

改正

この法律の施行後の平成28年3月4日、内閣によって、改正法案が提出されます。

名称は、「情報通信技術の進展等の環境変化に対応するための銀行法等の一部を改正する法律案」です(法律第六十二号(平二八・六・三))。

この改正法案は第190回国会で成立しました。

この法律の第11条により、資金決済法が大きく改正されました。

俗に言う「改正資金決済法」は、この改正後の資金決済法を意味します。

改正資金決済法は、平成29年4月に施行されました。

関連法令

・資金決済に関する法律施行令(平成二十二年政令第十九号)

・前払式支払手段に関する内閣府令(平成二十二年内閣府令第三号)

・資金移動業者に関する内閣府令(平成二十二年内閣府令第四号)

・資金移動業の指定紛争解決機関に関する内閣府令(平成二十二年内閣府令第八号)

・前払式支払手段発行保証金規則(平成二十二年内閣府・法務省令第四号)

・資金移動業履行保証金規則(平成二十二年内閣府・法務省令第五号)

改正の背景

つぎに改正の背景について解説します。

仮想通貨は、資金決済法が改正される何年も前から存在していました。

ところが、法改正は、急ピッチで行われました。

これには、理由があります。

それは、マネーロンダリング対策・テロ資金供与対策について、国際的な要請があったためです。

具体的には、平成 27年6月8日、G7エルマウ・サミットで、「仮想通貨及びその他の新たな支払手段の適切な規制を含め、全ての金融の流れの透明性拡大を確保するための更なる行動をとる」という内容の首脳宣言が発出されました。

また、平成27年6月26 日、FATF(金融活動作業部会)にて、「各国は、仮想通貨と法定通貨を交換する交換所に、登録・免許制を課すとともに、顧客の本人確認や疑わしい取引の届出、記録保存の義務等のマネロン・テロ資金供与規制を課すべき」という内容などを含むガイダンスが公表されました。

資金決済法の改正には、このような背景があったのです。

改正法案の作成過程

資金決済法の改正法案は、内閣によって提出されたものでした。

この改正法案の原案は、金融庁における、金融審議会を経て、作成されました。

【参考:内閣が法案を提出するまでの流れ】
(1)省庁内における原案の作成
(2)各省協議(各省折衝)
(3)内閣法制局の審査
(4)与党審査
(5)事務次官等会議
(6)閣議

金融庁における金融審議会

当時、資金決済法について議論があった審議会は、この二種類です。

(ⅰ)決済業務等の高度化に関するスタディ・グループ

(ⅱ)決済業務等の高度化に関するワーキング・グループ

ちなみに、(ⅱ)のワーキング・グループは、(ⅰ)のスタディ・グループが改組(かいそ)されてできたグループのようですので、実質的には同じグループと考えてよさそうです。

こちらから、議事録や資料を見ることができます。

https://www.fsa.go.jp/singi/singi_kinyu/base_gijiroku.html

各グループの審議結果を取りまとめたものが、公表されています。

以下は、そのリンクです。

金融審議会「決済業務等の高度化に関するスタディ・グループ」中間整理の公表について(平成27年4月28日)

金融審議会「決済業務等の高度化に関するワーキング・グループ」報告の公表について(平成27年12月22日)

この報告書には、仮想通貨取引について、以下の対応が適切であると記載されています。

登録制の導入

▸交換業者について、登録制を導入

マネロン・テロ資金供与対策規制

▸口座開設時における本人確認の義務付け 等

利用者保護のためのルールの整備

▸利用者が預託した金銭・仮想通貨の分別管理等のルール整備 等

この内容は、後に、金融審議会総会・金融分科会に報告されています。

そして、のちに作成された改正法案には、この内容が反映されています。

※参考リンク:金融庁 衆議院 参議院

 

以上、資金決済法の概要と、改正の背景についてでした。