カテゴリー
仮想通貨

資金決済法の国会審議の様子まとめ

仮想通貨に関する、資金決済法の改正について国会で審議されたときの様子を振り返ってみることにしましょう。

当時、国会でどんなことが議題に上がっていたのか、知っておくのは面白いかと思います。

衆議院と参議院の分を両方紹介します。

ざっと目を通して、おおまかに要約しつつ、まとめてみました。

ご参考までに。

衆議院/財務金融委員会 平28.4.27開催

[高井委員が、仮想通貨の取引にかかる消費税について質疑]

≫麻生国務大臣

・消費税法で、非課税として限定列挙されている支払い手段に該当しないので、課税対象になる

・現状、国際的な課税上の取り扱いの状況が各国によって違う

・国際的な動向を見ながら検討していく

[鷲尾委員が、事業者自身による資金流用や流出のリスクについて質疑]

≫麻生国務大臣

・会社の財産と、利用者の仮想通貨や現預金を、きちんと分別管理する義務を課す

・公認会計士の外部監査を受ける義務を課す

・内部管理の体制整備を求める

[鷲尾委員が、分別管理の具体的方法について質疑]

≫池田政府参考人

・分別管理の具体的な方法は、内閣府令で定めることになる

・利用者の金銭は、信託、供託、会社財産を管理する銀行口座とは別の銀行口座への預金というような形で別個に管理することが考えられる

・利用者の仮想通貨は、会社の仮想通貨を管理するウオレットとは別のウオレットに、利用者ごとの保有量が帳簿により直ちに判別できる状態で管理するように求めることを予定している

・財産の分別管理の状況あるいは会社の全体の財務諸表については、公認会計士または監査法人による外部監査を義務づけ、正確性を担保しようと考えている

[鷲尾委員が、外部監査の実施頻度について質疑]

≫池田政府参考人

・監査は、基本的に毎年、一年に一回の監査を考えている

[鷲尾委員が、仮想通貨を預かって保管のみを行う業務が、規制の対象になるのか質疑]

≫池田政府参考人

・仮想通貨の保管のみを行う業者は、規制の対象とならない

・仮想通貨の保管は仮想通貨と法定通貨の交換などとあわせて提供されることが多いというのが現実である

・法定通貨との交換等を伴わないので、相対的にマネロン、テロ資金供与のリスクは低い

・仮想通貨の性質や手数料などを十分に説明されずに購入するケースや、支払い対価に相当する仮想通貨や法定通貨が後で引き渡されないケースなど、売買の場面で想定する損害発生リスクは、保管については存在しない

[鷲尾委員が、仮想通貨に対する当局の認識について質疑]

≫牧島大臣政務官

・本法案は、現時点で仮想通貨が通貨と同等の性質を有しないということを前提としつつ、支払い決済手段としての機能を事実として有することがあることに鑑みて、仮想通貨と法定通貨の交換業者について一定の規制を設けることとした

[鷲尾委員が、仮想通貨は、価値の安定性に欠けるため、通貨と評価できるものにはなっていないのではと質疑]

≫麻生国務大臣

・仮想通貨の価格の信頼性には疑問がある

[鷲尾委員が、サイバー攻撃によって仮想通貨が失われるリスクへの対応について質疑]

≫池田政府参考人

・仮想通貨と法定通貨の交換業者に対して、システムの安全管理に関する措置を講ずることを考えている

・具体的な措置の内容は、今後内閣府令や監督指針などにおいて規定する予定

[鷲尾委員が、仮想通貨のリスクについて利用者に十分な注意喚起が行われるべきと質疑]

≫牧島大臣政務官

・法案では、仮想通貨の購入等に伴うリスクについて、仮想通貨と法定通貨の交換業者に対し説明義務を課すこととしている

・具体的な内容は内閣府令で定めることになるが、例えば、仮想通貨の安全性に関するリスクや価格変動に伴う損失リスク等がある旨の利用者への説明を課すことを考えている

[宮本(岳)委員が、仮想通貨のデリバティブ取引について、FX業者と同等の規制を導入しなかった理由について質疑]

≫麻生国務大臣

・法案は、FATF(金融活動作業部会)などで国際的に合意されたことへの対応を図るもの

・マネロン対策、テロ資金供与規制、および利用者の保護のための規制

・レバレッジの規制を課すべきかどうかについては、今後、多種多様な論点を整理をしていく段階にまだある

・今回の法案は、全部を整理するまで待っているほど時間がないという感じ

・仮想通貨を用いた取引については、実態をよく注意していく

[宮本(岳)委員が、仮想通貨の課税上の扱いについて、財務省で、きちんとした見解もしくは解説書などをはっきり出すべきと質疑]

≫麻生国務大臣

・まずは、仮想通貨の取扱業者からの照会などに対して国税庁が適切に対応していくことが基本

・解説書は、仮想通貨の取り扱い実態なども踏まえて必要に応じて検討していく

[宮本(岳)委員が、トレーダーは、仮想通貨と円との売買ごとに、消費税がかかるのかと質疑]

≫星野政府参考人

・消消費税の課税事業者である個人のトレーダーが仮想通貨を購入する行為は課税仕入れ。逆に、仮想通貨で円を買うという行為は仮想通貨の販売になるので課税売り上げ

・他の取引とあわせて、課税売り上げに係る消費税額から課税仕入れに係る消費税額を差し引いた額を納税することになる

[宮本(岳)委員が、国内と海外とで消費税の課税は変わるのかと質疑]

≫星野政府参考人

・国内の事業者が行う仮想通貨の譲渡(売り)は、相手の事務所の所在地が国内であっても国外であっても課税取引となる

・国内の事業者が行う仮想通貨の譲り受け(買い)は、相手の事業所の所在地が国内であれば課税取引となる一方、その所在地が国外であれば課税取引に該当しない

参議院/財政金融委員会 平28.5.24開催

[大久保委員が、ビットコイン等の仮想通貨を、銀行業者や金融商品取引業者が扱うことができるかと質疑]

≫政府参考人(池田唯一氏)

・仮想通貨が、銀行や金融商品取引業者が取り扱うことがふさわしい社会的な信頼等を有する決済手段として定着していくかどうかを見極めながら判断していく必要がある

[大久保委員や尾立源幸委員が、仮想通貨の消費税免除について質疑]

≫麻生国務大臣

・仮想通貨は、現行の消費税法では、課税の対象となる

・ドイツ、フランス、イタリア等は非課税だが、カナダ、オーストラリア、シンガポール等は課税されている

・国際的な課税上の取扱いの状況や、他の非課税品目との比較も考えて、今後検討していく

[藤巻健史委員が、今回の法改正で、財務省がビットコインにお墨付きを与えたという認識が国民に広がる恐れがあると質疑]

≫麻生国務大臣

・仮想通貨を公的な決済手段として認定したわけではない

・法案は、仮想通貨にお墨付きを与えるものでもない

・法案では、仮想通貨の交換業者に対して、仮想通貨に関する説明義務を課している

[藤巻健史委員が、仮想通貨による、国の通貨発行益の減少について質疑]

≫政府参考人(迫田英典氏)

・日本銀行券の流通量については様々な要因によって変動し得る

・仮想通貨の普及によって通貨の流通量がどのように影響を受けるかということについて現時点で必ずしも明確に答えることはできない

・通貨発行益の把握、あるいは通貨の円滑な供給といった観点から、今後とも注視していく

[藤巻健史委員が、仮想通貨が台頭した場合の金融政策について質疑]

≫参考人(雨宮正佳氏)

・仮想通貨については、BIS、国際決済銀行、IMF、各国中央銀行で研究を進めている

・仮想通貨の利用が大幅に増加し、既存の通貨の代替が進行し、かつ既存通貨と仮想通貨との交換や裁定がうまくいかないというような場合には金融政策の遂行が難しくなるおそれがある

・仮想通貨の決済への利用は現在のところ限定的であり、金融システムや、金融政策の波及メカニズムに影響を及ぼす可能性は近い将来においては極めて低い

・さらに先の動向については引き続き注視し、研究を進めていきたい

[藤巻健史委員が、仮想通貨を禁止し、日本銀行が電子紙幣を発行する案について質疑]

≫麻生国務大臣

・当事者間の自由意思を尊重するということが望ましい

・利用者の保護とか取引の安全確保が可能であることなどから、全面的な禁止をするよりはバランスの取れた規制を考えるべき

・電子マネーの発行については、電子機器を持たない人はどうするのかという問題がある

・電子紙幣による弁済を拒むことができないというようなことになると、話は込み入るので、なかなか課題が多い

≫参考人(雨宮正佳氏)

・最近、海外の中央銀行でも、問題意識は持たれ始めている

・仮想通貨は、技術的にどう進展していくのか、まだ見極め難い

・当面は、仮想通貨が決済システムや金融システムに与える影響を見極めていく段階にある

[藤巻健史委員が、仮想通貨と脱税について質疑]

≫政府参考人(星野次彦氏)

・法律では、仮想通貨交換業者について、犯罪による収益の移転防止に関する法律の特定事業者に追加されて、顧客等の取引時確認や取引記録等の保存を行うことになるものと承知している

・国税当局においては、必要に応じて、税務調査等において交換業者が保存している記録から仮想通貨の取引に係る情報の把握を行うことができると考える

・匿名性の有利さを利用した租税回避取引が仮想通貨により増えるとは必ずしも言えないのではないかと考えている

・国税当局としては、あらゆる機会を通じて課税上有効な情報の収集を図るとともに、課税上問題のある取引が認められれば税務調査を行うなど、適正、公平な課税の実現に努めていく

[藤巻健史委員が、交換業者が登録制の理由を質疑]

≫政府参考人(池田唯一氏)

・仮想通貨交換業者は、顧客から預かった財産を事業者の財産と分別して管理する義務が課されているなど、顧客の資産を自由に運用するものではない

・他の金融事業者との整合性等も勘案し、登録制ということで法律案を策定した

[藤巻健史委員が、仮想通貨の売買目的について金融庁の分析を質疑]

≫政府参考人(池田唯一氏)

・どのような目的の売買が多いかというのは必ずしも明らかになっていないと思われる

・仮想通貨は、物品等の購入の際の代価の弁済などの支払決済手段として使用することを目的とした売買のほかに、投資目的での売買もあると承知している

・今回は、マネロン・テロ資金供与規制など、利用者保護の観点からの法的枠組みを整備するもの

・仮想通貨に関する規制の在り方については、今後の取引の推移等を十分踏まえながら継続的に検討していく必要がある

[平野達男委員が、仮想通貨の取引が増えた場合の規制について質疑]

≫麻生国務大臣

・流れとして増えていくであろう

・間違いなく決済システムのサービスとしてはこれは新しいイノベーションだと思った方がいい

・銀行は手数料取り過ぎ

・普及してくるという感じはしないでもない

・何となく今はスロットマシンのコインみたいな感じにしか思えていない人がいっぱいいる

・来年になるともう少し流れが見えてくるのかもしれない

まとめは以上です。

カテゴリー
仮想通貨

資金決済法の処分等と罰則

資金決済法に規定されている、処分等と罰則についてみてみましょう。

処分等

処分等には、行政関係で、立入検査等、業務改善命令、登録の取消し等、登録の抹消があります。

条文は、下記のようになっています。

(立入検査等)
第63条の15 内閣総理大臣は、仮想通貨交換業の適正かつ確実な遂行のために必要があると認めるときは、仮想通貨交換業者に対し当該仮想通貨交換業者の業務若しくは財産に関し参考となるべき報告若しくは資料の提出を命じ、又は当該職員に当該仮想通貨交換業者の営業所その他の施設に立ち入らせ、その業務若しくは財産の状況に関して質問させ、若しくは帳簿書類その他の物件を検査させることができる。
2 内閣総理大臣は、仮想通貨交換業の適正かつ確実な遂行のため特に必要があると認めるときは、その必要の限度において、当該仮想通貨交換業者から業務の委託を受けた者(その者から委託(二以上の段階にわたる委託を含む。)を受けた者を含む。以下この条において同じ。)に対し当該仮想通貨交換業者の業務若しくは財産の状況に関し参考となるべき報告若しくは資料の提出を命じ、又は当該職員に当該仮想通貨交換業者から業務の委託を受けた者の施設に立ち入らせ、当該仮想通貨交換業者の業務若しくは財産の状況に関して質問させ、若しくは帳簿書類その他の物件を検査させることができる。
3 前項の仮想通貨交換業者から業務の委託を受けた者は、正当な理由があるときは、同項の規定による報告若しくは資料の提出又は質問若しくは検査を拒むことができる。
(業務改善命令)
第63条の16 内閣総理大臣は、仮想通貨交換業の適正かつ確実な遂行のために必要があると認めるときは、その必要の限度において、仮想通貨交換業者に対し、業務の運営又は財産の状況の改善に必要な措置その他監督上必要な措置をとるべきことを命ずることができる。
(登録の取消し等)
第63条の17 内閣総理大臣は、仮想通貨交換業者が次の各号のいずれかに該当するときは、第六十三条の二の登録を取り消し、又は六月以内の期間を定めて仮想通貨交換業の全部若しくは一部の停止を命ずることができる。
一 第六十三条の五第一項各号に該当することとなったとき。
二 不正の手段により第六十三条の二の登録を受けたとき。
三 この法律若しくはこの法律に基づく命令又はこれらに基づく処分に違反したとき。
2 内閣総理大臣は、仮想通貨交換業者の営業所の所在地を確知できないとき、又は仮想通貨交換業者を代表する取締役若しくは執行役(外国仮想通貨交換業者である仮想通貨交換業者にあっては、国内における代表者)の所在を確知できないときは、内閣府令で定めるところにより、その事実を公告し、その公告の日から三十日を経過しても当該仮想通貨交換業者から申出がないときは、当該仮想通貨交換業者の第六十三条の二の登録を取り消すことができる。
3 前項の規定による処分については、行政手続法第三章の規定は、適用しない。
(登録の抹消)
第63条の18 内閣総理大臣は、前条第一項若しくは第二項の規定により第六十三条の二の登録を取り消したとき、又は第六十三条の二十第二項の規定により第六十三条の二の登録がその効力を失ったときは、当該登録を抹消しなければならない。

内閣総理大臣

これらの条文で、ひとつ面白いのは、法文上、すべての行為に、内閣総理大臣が登場することです。

とはいえ、実際に動くのは金融庁長官以下の職員の方たちなのですが。

豆知識的ですが、その点について、実は、資金決済法には権限の委任についての規定があります。

(権限の委任)
第104条 内閣総理大臣は、この法律による権限(政令で定めるものを除く。)を金融庁長官に委任する。
2 金融庁長官は、政令で定めるところにより、前項の規定により委任された権限の一部を財務局長又は財務支局長に委任することができる。

「内閣総理大臣」→「金融庁長官」→「財務局長」or「財務支局長」というような委任の手順が規定されていますね。

罰則関係

罰則関係には、懲役や罰金があります。

条文は、下記のようになっています。

第107条
次の各号のいずれかに該当する者は、三年以下の懲役若しくは三百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
一~四 <省略>
五 第六十三条の二の登録を受けないで仮想通貨交換業を行った者
六 第六十三条の七の規定に違反して、他人に仮想通貨交換業を行わせた者
七 <省略>
八 <省略>
第108条
次の各号のいずれかに該当する者は、二年以下の懲役若しくは三百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
一 <省略>
二 第六十三条の十一第一項の規定に違反した者
三 第六十三条の十七第一項の規定による仮想通貨交換業の全部又は一部の停止の命令に違反した者
四 <省略>

第107条は、内閣総理大臣の登録を受けてない者や、名義貸しをした者が、罰則を受けることを規定しています。

第108条は、金銭や仮想通貨の分別管理の義務に違反した者や、業務停止命令に違反した者が、罰則を受けることを規定しています。

カテゴリー
仮想通貨

外国仮想通貨交換業者の定義

「外国仮想通貨交換業者」について解説します。

定義

外国仮想通貨交換業者の定義は、資金決済法第二条第9項に規定されています。

資金決済法第二条第9項
この法律において「外国仮想通貨交換業者」とは、この法律に相当する外国の法令の規定により当該外国において第六十三条の二の登録と同種類の登録(当該登録に類する許可その他の行政処分を含む。)を受けて仮想通貨交換業を行う者をいう。

 

要は、外国で登録などされている業者を、この法律では「外国仮想通貨交換業者」と呼ぶのですね。

禁止行為

そして、ここで定義した外国仮想通貨交換業者について、重要な規定が、資金決済法の第六十三条の二十二に規定されています。

(外国仮想通貨交換業者の勧誘の禁止)
第六十三条の二十二

第六十三条の二の登録を受けていない外国仮想通貨交換業者は、国内にある者に対して、第二条第七項各号に掲げる行為の勧誘をしてはならない。

ここでいう「第六十三条の二の登録」とは、日本国内での登録のことです。

また、「第二条第七項各号に掲げる行為」とは、「仮想通貨の売買又は他の仮想通貨との交換」ならびに「それらの行為の媒介、取次ぎ又は代理」です。

したがって、日本で登録を受けていない業者は、たとえば、ネットで日本国内に向けて、広告を打ったりして勧誘してはいけない、ということになります。

カテゴリー
仮想通貨

仮想通貨交換業者の定義

今回は、仮想通貨交換業者の定義について解説します。

資金決済法の第二条第7項および8項、ならびに第六十三条の二に、定義に関する条文があります。

条文

第二条
7 この法律において「仮想通貨交換業」とは、次に掲げる行為のいずれかを業として行うことをいい、「仮想通貨の交換等」とは、第一号及び第二号に掲げる行為をいう。
一 仮想通貨の売買又は他の仮想通貨との交換
二 前号に掲げる行為の媒介、取次ぎ又は代理
三 その行う前二号に掲げる行為に関して、利用者の金銭又は仮想通貨の管理をすること。
8 この法律において「仮想通貨交換業者」とは、第六十三条の二の登録を受けた者をいう。

第六十三条の二 仮想通貨交換業は、内閣総理大臣の登録を受けた者でなければ、行ってはならない。

 

この法律を見てもらうと、だいたいのことは分かりますが、一応まとめると、

仮想通貨交換業者とは内閣総理大臣の登録を受けて仮想通貨交換業を行う者です。

さらに、仮想通貨交換業とは、

「法定通貨」⇔「仮想通貨」、あるいは、「仮想通貨」⇔「仮想通貨」

の取引に関わることです。

関わり方は、

・交換(7項一号)

・媒介、取次ぎもしくは代理(7項二号)

・上記2つの行為に関して利用者の金銭や仮想通貨の管理をする(7項三号)

のいずれもが該当します。

用語としては、「交換」は仮想通貨の販売や買取のことで、「媒介」は板取引の提供と考えると、わかりやすいでしょう。

業として

最後に、条文のはじめのほうに戻りますが、「業として行うこと」の意味についても解説しておきます。

この「業として行うこと」という語は多義的ですが、金融庁からは、次のような解釈が示されています。

実務上は、この解釈を参考にすることになります。

事務ガイドライン(第三分冊:金融会社関係)「16 仮想通貨交換業者」より(URLはこちら
『法第2条第7項に規定する「業として行うこと」とは、「対公衆性」のある行為で「反復継続性」をもって行うことをいうものと解されるが、具体的な行為が「対公衆性」や「反復継続性」を有するものであるか否かについては、個別事例ごとに実態に即して実質的に判断するべきである。なお、「対公衆性」や「反復継続性」については、現実に「対公衆性」のある行為が反復継続して行われている場合のみならず、「対公衆性」や「反復継続性」が想定されている場合等も含まれる点に留意する。』

法の趣旨である、マネーロンダリング対策・テロ資金供与対策・利用者保護に沿った妥当な解釈だろうと思います。

なお、上記の解釈を、反対に捉えれば…

たとえば、取引所を開設して運営する行為であっても、

・特定少数を対象にする

・その場限り(1回だけ)

のいずれかを満たす態様であって、それが将来にわたって変わらないことが確実であれば、法上の「仮想通貨交換業」を行うことにはならない、という結論になるでしょう。

ちなみに、どのような態様であれば、「業として行うこと」に該当しないのかについて金融庁は具体的な事例を示してはいませんし、上記の金融庁の解釈はかなり幅や含みを持たせた解釈ですから、特定少数を対象にしていたり、その場限りであったりしても、金融庁から法上の「仮想通貨交換業」に該当すると認定される可能性はゼロではないという点にはご注意ください。

カテゴリー
仮想通貨

仮想通貨の定義とは-資金決済法

今回は、仮想通貨の定義がテーマです。

法上の「仮想通貨」にあてはまる通貨を取り扱う事業者は、「仮想通貨取扱事業者」に該当しうるという意味で、非常に重要な規定です。

仮想通貨の定義

資金決済法の第二条5項一号および二号に、仮想通貨の定義が規定されています。

この法律において「仮想通貨」とは、次に掲げるものをいう。
一 物品を購入し、若しくは借り受け、又は役務の提供を受ける場合に、これらの代価の弁済のために不特定の者に対して使用することができ、かつ、不特定の者を相手方として購入及び売却を行うことができる財産的価値(電子機器その他の物に電子的方法により記録されているものに限り、本邦通貨及び外国通貨並びに通貨建資産を除く。次号において同じ。)であって、電子情報処理組織を用いて移転することができるもの

二 不特定の者を相手方として前号に掲げるものと相互に交換を行うことができる財産的価値であって、電子情報処理組織を用いて移転することができるもの

一号通貨

一号は、主にビットコインを想定して定められた条文です。

一号にあてはまる通貨は、「一号通貨」と呼ばれています。

たくさんの要件が定められていますが、それにより、ポイントや電子マネーなどが規制の対象から外されています。

この条文は、それほど難解な文章ではありませんが、分かりにくい用語を補足します。

「役務」とは「サービス」のことです。

「代価の弁済」は「支払い」と理解すればよいです。

「不特定の者」とは「誰にでも」ということです。

さらに、「不特定の者を相手方として購入及び売却を行うことができる財産的価値」とは、「取引市場があって価格がついている」という意味だと理解すればOKです。

また、「電子情報処理組織」とは、「インターネット」という意味くらいに理解しておけば大丈夫でしょう。

なお、条文の最後の「移転」という表現については、物理的な視点ではおかしな表現なのですが、まぁ観念的な表現なのだということで納得しておきましょう。

二号通貨

二号は、主にアルトコインを想定して定められた条文です。

二号にあてはまる通貨は、「二号通貨」と呼ばれています。

要件として、一号通貨と相互に交換を行うことができる財産的価値であることが定められています。

BTC⇔XRPというようなイメージですね。

なお、ひとつの仮想通貨が、一号通貨と二号通貨の両方の定義にあてはまることがありますが、法律上、そのことに何ら特に問題はありませんので、気にしなくて大丈夫です。

独自トークンについて

ちなみに、たびたび、個人や団体が発行する独自トークンが、法上の「仮想通貨」に該当するか否かが話題になります。

上記の法律に従えば、不特定のものを対象とした取引市場が存在せず財産的価値(価格)がついていない場合には、法上の「仮想通貨」に該当しないという結論になりそうです。

また、別の観点ですが、一号では「購入及び売却を行うことができる」という文言になっていることはポイントでしょう。「購入」と「売却」の両方ができない通貨は、一号通貨には該当しません。

さらに、二号では、相互に交換を行うことができる」という文言になっていることがポイントでしょう。交換が一方通行にとどまる通貨は、二号通貨には該当しません。

なお、一号通貨や二号通貨に該当しない独自トークンが取引所に上場したらどうなるのかという点ですが、取引所に上場すれば、その時点から、一号通貨や二号通貨に該当するという理解でよいと思います。

カテゴリー
仮想通貨

資金決済法の概要と、仮想通貨について改正されたときの背景の解説

資金決済法の概要と、仮想通貨について改正されたときの背景について解説します。

概要

まずは、資金決済法の概要です。

定義

資金決済法は、「資金決済に関する法律(平成二十一年法律第五十九号)」の略称です。

内閣が提出し、第171回国会で制定されました。

※参考リンク 金融庁 衆議院 参議院

2010年に施行されました。

立法目的

資金決済サービスの拡充や適切な運営を目的として制定された法律です。

送金などの為替取引は、従来、銀行等の金融機関だけに認められていましたが、登録を行った資金移動業者にも、少額に限って送金などが認められるようになりました。

また、電子マネーなど前払い式の支払い手段に関しても、利用者保護の強化など、必要な法整備が行われました。

ちなみに、この法律の第一条に、法目的が規定されています。

(制定時の条文)第一条 この法律は、資金決済に関するサービスの適切な実施を確保し、その利用者等を保護するとともに、当該サービスの提供の促進を図るため、前払式支払手段の発行、銀行等以外の者が行う為替取引及び銀行等の間で生じた為替取引に係る債権債務の清算について、登録その他の必要な措置を講じ、もって資金決済システムの安全性、効率性及び利便性の向上に資することを目的とする。

資料

金融庁のサイトに、当時の資料がありますので、よければご参照ください。

法律の概要

パンフレット

改正

この法律の施行後の平成28年3月4日、内閣によって、改正法案が提出されます。

名称は、「情報通信技術の進展等の環境変化に対応するための銀行法等の一部を改正する法律案」です(法律第六十二号(平二八・六・三))。

この改正法案は第190回国会で成立しました。

この法律の第11条により、資金決済法が大きく改正されました。

俗に言う「改正資金決済法」は、この改正後の資金決済法を意味します。

改正資金決済法は、平成29年4月に施行されました。

関連法令

・資金決済に関する法律施行令(平成二十二年政令第十九号)

・前払式支払手段に関する内閣府令(平成二十二年内閣府令第三号)

・資金移動業者に関する内閣府令(平成二十二年内閣府令第四号)

・資金移動業の指定紛争解決機関に関する内閣府令(平成二十二年内閣府令第八号)

・前払式支払手段発行保証金規則(平成二十二年内閣府・法務省令第四号)

・資金移動業履行保証金規則(平成二十二年内閣府・法務省令第五号)

改正の背景

つぎに改正の背景について解説します。

仮想通貨は、資金決済法が改正される何年も前から存在していました。

ところが、法改正は、急ピッチで行われました。

これには、理由があります。

それは、マネーロンダリング対策・テロ資金供与対策について、国際的な要請があったためです。

具体的には、平成 27年6月8日、G7エルマウ・サミットで、「仮想通貨及びその他の新たな支払手段の適切な規制を含め、全ての金融の流れの透明性拡大を確保するための更なる行動をとる」という内容の首脳宣言が発出されました。

また、平成27年6月26 日、FATF(金融活動作業部会)にて、「各国は、仮想通貨と法定通貨を交換する交換所に、登録・免許制を課すとともに、顧客の本人確認や疑わしい取引の届出、記録保存の義務等のマネロン・テロ資金供与規制を課すべき」という内容などを含むガイダンスが公表されました。

資金決済法の改正には、このような背景があったのです。

改正法案の作成過程

資金決済法の改正法案は、内閣によって提出されたものでした。

この改正法案の原案は、金融庁における、金融審議会を経て、作成されました。

【参考:内閣が法案を提出するまでの流れ】
(1)省庁内における原案の作成
(2)各省協議(各省折衝)
(3)内閣法制局の審査
(4)与党審査
(5)事務次官等会議
(6)閣議

金融庁における金融審議会

当時、資金決済法について議論があった審議会は、この二種類です。

(ⅰ)決済業務等の高度化に関するスタディ・グループ

(ⅱ)決済業務等の高度化に関するワーキング・グループ

ちなみに、(ⅱ)のワーキング・グループは、(ⅰ)のスタディ・グループが改組(かいそ)されてできたグループのようですので、実質的には同じグループと考えてよさそうです。

こちらから、議事録や資料を見ることができます。

https://www.fsa.go.jp/singi/singi_kinyu/base_gijiroku.html

各グループの審議結果を取りまとめたものが、公表されています。

以下は、そのリンクです。

金融審議会「決済業務等の高度化に関するスタディ・グループ」中間整理の公表について(平成27年4月28日)

金融審議会「決済業務等の高度化に関するワーキング・グループ」報告の公表について(平成27年12月22日)

この報告書には、仮想通貨取引について、以下の対応が適切であると記載されています。

登録制の導入

▸交換業者について、登録制を導入

マネロン・テロ資金供与対策規制

▸口座開設時における本人確認の義務付け 等

利用者保護のためのルールの整備

▸利用者が預託した金銭・仮想通貨の分別管理等のルール整備 等

この内容は、後に、金融審議会総会・金融分科会に報告されています。

そして、のちに作成された改正法案には、この内容が反映されています。

※参考リンク:金融庁 衆議院 参議院

 

以上、資金決済法の概要と、改正の背景についてでした。