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エンピリック治療とは?(enperic therapy)

定義

エンピリック治療(enperic therapy)とは、「経験的治療」とも呼ばれ、医師が経験に基づいて行う治療のことを意味し、特に感染症に対して、原因菌が判明する前に実施されるものです。

すなわち、微生物検査の結果が出る前に、想定する起因微生物をカバーする抗菌薬で治療することを意味します。

解説

一般に、医師は、患者の症状、病歴、年齢、性別などから、患者が細菌性の感染症に罹っていると疑ったとき、生化学検査や画像検査などの必要な検査を実施し、さらに、感染を疑う部位から検体を採取して細菌検査(塗抹•培養•同定•感受性)を実施します。

ここで、理想的には、全ての検査結果が出揃ってから、検出菌の中から起炎菌を推定し、その菌に対して効果がある抗菌薬を選択して投与できれば、最も確実な治療が行えることでしょう。

しかし、大半のケースでは、患者の回復を優先する必要があるため、検査結果が出揃う前に、経験則をもとに、早急に抗菌薬を選択・投与して、治療が開始されます。

たとえば、細菌による感染性胃腸炎を疑う場合は、検出頻度の高い菌(下痢原生大腸菌、キャンピロバクター、サルモネラなど)に対応可能なホスホマイシンやニューキノロンを処方します。

また、フォーカス(感染源)が不明な敗血症のように、起因菌の推測が困難な重症例のときは、第三世代セフェム系やカルバペネム系などの様々な微生物に効く抗菌薬(広域スペクトルの抗菌薬)を投与して治療が開始されます。

これがエンピリック治療です。

なお、広域スペクトルの抗菌薬でエンピリック治療を行う際に選択する抗菌薬は、通常、病院の抗菌薬の使用方針や、各種学会の抗菌薬の使用ガイドラインなどの選択基準を参考にします。

原因菌が同定された場合には、アンチバイオグラムを参考に、あるいは、感受性試験の結果が出た場合には、その結果を基に、狭域スペクトルの抗菌薬に変更されることが望ましいです。

これは、抗菌薬のデエスカレーションと呼ばれます。

これにより、広域スペクトル薬に対する耐性菌が出現する確率を減らすことができ、また、より安価な薬に変更できれば、医療費が抑えられます。