口の中が痛くなる原因はさまざまですが、性病によっても口の中が痛くなることがあります。
症例を紹介
50歳の男性が、口の中の粘膜(口腔粘膜)に白い膜(白斑)が繰り返してでき、舌も白くなっている(舌苔)を訴えて来院されました。
実は、この方は1年以上前から厚い舌苔を認めていたようです。
医師は、免疫不全を疑って検査を行ったところ、HIVの感染が判明し、口の中については、HIV 感染症に伴う『偽膜性力ンジダ症』と診断されました。
カンジダ症について
この症例のように、口の中が痛くなる性病で代表的なのが、真菌と呼ばれる微生物によって引き起こされる『口腔内カンジダ症』です。
HIVに感染して感染防御機能が低下した者などに、カンジダ菌はよく発症します。
カンジダ症は、白い斑点状 の病変ができる『偽膜性カンジダ症』だけでなく、口蓋や頬粘膜などの粘膜が発赤して痛みを伴う『紅斑性力ンジダ症』、および、口腔粘膜が厚く硬くなる『肥厚性カンジダ症』などがあります。
口腔内でカンジダ症と思われる様子がある場合は、まず細菌検査で診断することが大切で、方法は、綿棒で口の中を拭って、培養検査を行います。
口腔内を清潔にし、抗真菌薬を使用するなどにより、症状は改善していきます。
なお、もしもHIVにも感染していた場合は、抗 HIV療法によりHIVウイルス量をコントロールすることも必要になります。
HIV検査も必ず行おう
このように口の中が痛いときには、性行動を振り返ることが大切です。
思い当たるような性行動がある場合は、少なからず、HIVへ感染している可能性を疑わなければなりません。
すでに広く知られているように、HIVは、免疫不全ウイルスであり、AIDS(Acquired Immune Deficiency Syn- drome:後天性免疫不全症候群)を引き起こします。
現在は、HIVに感染しても、ほとんどの人は発症しないような薬がありますが、診断が遅れるほど、取り返しがつかなくなります。
症状に気付きしだい、口腔内科で診察を受けましょう。