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肝膿瘍の症状、診断、検査、治療

肝膿瘍とは、肝臓に膿瘍を認める状態です。

膿瘍は、肝臓外から原因となる細菌や原虫などが肝組織内に侵入・増殖して形成されます。

症状

発熱、倦怠感、悪寒、戦懐、右上腹部の圧痛、食欲不振、吐気・嘔吐、体重減少などの非特異的症状が2週~1カ月ほど持続します。

症状としては、発熱が最も多く、上腹部痛の割合も高くなっています。

肝腫大も特徴的な所見です。

原因微生物

病原体により化膿性肝膿瘍(細菌性肝膿瘍)と原虫性肝膿瘍(アメーバ性肝膿瘍)とに大別されます。

化膿性肝膿瘍は、単独感染の場合と混合感染の場合があります。

細菌としては、単独感染の場合は、Klebsiella属または、Streptococcus anginosis Groupが多く、混合感染の場合は、E.coliなどの腸内細菌科とBactrioides属が多いです。

なお、真菌ではCandida sppが原因となります。また、免疫抑制状態の症例などでは、真菌や結核感染が原因となる場合もあります。

他方、原虫では、Entamoeba histolytica(赤痢アメーバ)が原因となります。

感染経路

細菌性肝膿瘍における病原体の肝内への侵入経路には、胆道、門脈、動脈、直達、外傷、侵襲的治療などがあげられます。

経胆道性が全体の40~60%を占め最も多いと報告されています。

他方、原虫性肝膿瘍(すなわち赤痢アメーバによる肝膿瘍)は、感染性を有する嚢子型アメーバ(シスト)の状態で経口的に侵入し、腸管内で栄養型アメーバとなり、その後、結腸粘膜を通過し、大腸から経門脈的に肝臓に移行して膿瘍を形成します。

赤痢アメーバの日本での感染は、男性同性愛者の感染が代表的で、20~50歳代の大都市に居住する男性に集中しており、近年は性感染症の1つとされ、B型肝炎やC型肝炎、梅毒やHIVを伴う事例が多く報告されています。

また、知的障害者施設における集団感染や、異性間の感染も見られます。

診断・検査

この疾患に特有の症状が存在しないことから、症状のみで診断することは困難です。

したがって、不明熱の鑑別疾患に、肝膿瘍を含めることが重要となります。

なお、ALP高値をみた場合に想起すべき疾患の1つであるとも言われています。

腹部エコー検査、腹部造影CT検査を行うことで、膿瘍を確認することができます。

また、血液培養を実施します。

アメーバ赤痢の関与を確認するため、血清赤痢アメーバ抗体も検査します。

膿瘍穿刺液の細菌学的検査も有用です。

また、既往歴や海外渡航歴、性的接触歴なを聴取することも大切です。

治療

細菌性肝膿瘍では多くの場合、抗菌薬治療を行い、同時に、ドレナージを行います。

ドレナージは、経皮経肝膿瘍ドレナージ(PTAD)を施行し、膿瘍腔を生理食塩水にて洗浄後、抗菌薬を直接注入します。

抗菌薬としては、アンピシリン・スルバクタム(商品名ユナシン)、タゾバクタム(商品名ゾシン)など広域スペクトル薬剤を選択します。

アメーバ性肝膿瘍を疑う場合は、抗菌薬治療のみで改善することが多く、ドレナージをせずに、メトロニダゾール(商品名フラジール)にて治療します。

法律

赤痢アメーバによる感染の場合は感染症法5類感染症であり7日以内に届出をする必要があります。