サイトメガロウイルス腸炎

サイトメガロウイルス腸炎について解説します。

定義

腸管CMV感染症とは、サイトメガロウイルス(cytomegalovirus:CMV)により腸管に炎症が引き起こされる疾患です。

サイトメガロウイルスは、ヘルペス科のDNAウイルスであり、種特異性が強くヒトのみに感染するウイルスです。

ほとんどの人は、幼少期に、サイトメガロウイルスに感染します。

大半は、発症することなく、生涯にわたって潜伏感染します(いわゆる不顕性感染)。

感染経路は、唾液、尿、母乳のほか、輸血による感染、性行為などです。

サイトメガロウイルスが何らかの理由で再活性化すると、腸管に炎症が引き起こされます。

これをCMV腸炎(腸管CMV感染症)と呼びます。

サイトメガロウイルス腸炎は、後天性免疫不全症候群(AIDS) がハイリスクとされ、ほかにも、ステロイド、免疫抑制剤、抗癌薬の使用などで全身の免疫力が低下した状態にある患者にも発症し易いです。

近年は、ステロイド使用歴のないUC患者や重篤な基礎疾患をもたない健常者におけるCMV感染症の報告が増えており、必ずしも易感染性宿主のみに生じる疾患ではないことを理解しておく必要があります。

症状について

CMV腸炎の臨床症状は、下痢、下血、粘血便、発熱など、非特異的な症状を呈します。

診断について

診断は、内視鏡検査による所見と、生検組織を用いた病理組織学的な所見をもとに確定します。

CMV腸炎の内視鏡像は、一般に、潰瘍形成が最も多く、特に地図状あるいは打ち抜き様潰瘍が特徴的とされています。

発赤、びらん、小潰瘍から不整形潰瘍、類円形、地図状、縦走性、打ち抜き、 巨大潰瘍など種々の潰瘍形態が報告されており、多彩な所見を多発性に認めることが多いと報告されています。

また、病理学的には、生検組織を用いた核内封入体保有細胞の検出などによりCMV感染を証明します。

なお、血液採取によるCMV antigenemia法または、Polymerase Chain Reaction (PCR)法により、CMV血症を評価することもできますが、これらは血中のCMVの存在を確認する検査法であり、CMV腸炎の確定診断とはなりません。

治療について

CMV治療薬には、点滴製剤であるガンシクロビル、ホスカルネット、経口製剤であるバルガンシクロビルの有効性が報告されています。

画一的な標準的治療は確立していませんが、CMV感染症治療の第一選択薬としてはガンシクロビルが適しているとの報告が多くなされています。

ただし、ガンシクロビルは、骨髄抑制などの副作用があることから、 確定診断を得た症例のみが適応となります。

通常、2 ~4週間の初期治療に引き続いて、数週間の維持療法が行われます。

なお、免疫不全のない患者は自然治癒することもあるため、抗ウイルス薬治療は、症状、病変の重症度などに応じて判断する必要があります。