抗菌薬の耐性メカニズムには、つぎのような種類があります。
菌によっては、複数の耐性機構をもつことがあります。
抗菌薬の分解
抗菌薬が、菌の産生する酵素(ベータラクタマーゼ)で分解され、不活化されてしまいます。
たとえば、ペニシリナーゼによるべニシリンの分解が挙げられます。
なお、近年は、ベータラクタマーゼ産生による耐性菌が問題化しています。
特に問題化しているものには、つぎのものがあります。
・基質拡張型ベータラクタマーゼ(ESBL)
・メタロベータラクタマーゼ(MBL)
・AmpC型ベータラクタマーゼ
抗菌薬の修飾
抗菌薬が、菌の産生する修飾酵素で低分子を付加されると、酵素への親和性を失ってしまいます。
たとえば、アセチル化によるカナマイシンの不活化が挙げられます。
作用点の質的変異
標的酵素が変化すると、薬剤への親和性を失ってしまいます。
たとえば、つぎのようなものがあります。
・PBPの変異によるペニシリン系やセフェム系などへの耐性
・DNAジャイレース(トポイソメラーゼI)の変異によるキノロン耐性
・RNAポリメラーゼのβサブユニットの変異によるリファンピシン耐性
標的酵素の量的変異
標的酵素が多量産生されると、標的酵素の全てを薬剤で失活させられなくなってしまいます。
たとえば、腸球菌PBPの過剰産生によるべニシリン耐性が挙げられます。
抗菌薬の流入阻害
薬剤の透過孔(ポーリン孔)または輸送系が変異すると、薬剤が菌体内に入らなくなります。
例えば、緑膿菌のポーリン孔欠損株は、イミペネム耐性となります。
抗菌薬の排出
排出ポンプの存在により、いったん菌体内に入った薬剤が、排出されてしまいます。
たとえば、多剤耐性緑膿菌(MDRP)はこの機構を有していると言われます。
なお、薬剤耐性菌の種類を別に紹介しています。