ペスト感染症とは
ペストは、ペスト菌(Yersinia pestis)の感染による疾患です。
感染症法では、第1類疾患に分類されています。
原因と感染ルート
ペスト菌は、マウス,ラットなどのげっ歯類が保菌しています。
ペスト菌を保有している動物を吸血したノミ(ケオプスネズミノミなど)を介してヒトに感染します。ノミに咬まれた傷口から感染を起こします。
世界的にはアフリカを中心として,現在でも患者が発生しています。
なお、日本では、「黒死病」として直近では大正15年(1926年)に報告がありました。
病態の分類
ペストの病態は,「腺ペスト」,「敗血症ペスト」、「肺ペスト」の3つに大別されます。
腺ペスト
ペスト菌が、局所リンパ節に移行し、リンパ節は化膿性変化によって腫大します。
ペスト菌が、脾臓,肝臓,骨髄などのほかの臓器に移行して重症化すると、敗血症ペストを起こします。肺ペストを起こすこともあります。
39℃以上の発熱,頭痛,悪寒,筋肉痛,関節痛,倦怠感などが生じ、腫脹リンパ節は自発痛や圧痛を伴います。
敗血症ペスト
意識レベルの低下,四肢末端部の壊死,紫斑、皮膚の出血などが現れ,播種性血管内凝固症候群(DIC)やショックを伴い,数日以内に死亡することが多いです。
肺ペスト
腺ペストや敗血症ペストの経過中に肺炎として発症したり、肺ペスト患者の咳などで排出されるエアロゾルを吸引することで発症したりします。
頭痛,嘔吐,高熱などの症状とともに呼吸困難や血痰を訴え,肺炎は急速に進行し重篤な状態に陥りやすいです。
確定診断
血液などから、培養によって菌が分離されたり、PCRで遺伝子が検出されたりすれば、確定診断となります。
なお、蛍光抗体法でエンベロープ抗原を検出した場合や、エンベロープ抗原に対する血清抗体が急性期に比べて回復期で上昇した場合にもペストと診断できます。
治療方法
アミノグリコシド系、キノロン系、テトラサイクリン系の抗菌薬が用いられます。
特に、肺ペストは進行が急激の場合があるので、初期治療が重要です。
なお、ペスト患者と接触した場合は経口抗菌薬を予防内服します。
ワクチンも存在します。
法律関係
ぺストは1類感染症に指定されているため、法に則り、ペスト患者、無症状ペスト菌保有者、ペスト疑似症患者、ペスト死亡者、ペスト死亡疑い者について、医師は保健所へ届け出る必要があります。