ジフテリアとは
ジフテリアは、感染したCorynebacterium diphtheriae(ジフテリア菌)の毒素よる上気道疾患です。
感染症法では、第2類疾患に分類されています。
病態の分類
主に3つの病態があります。
扁桃・咽頭ジフテリア、鼻ジフテリア、喉頭ジフテリアです。
なお、重大な合併症は,毒素による、心臓や中枢神経の症状です。
特に、心筋炎を合併すると予後が悪くなります。
扁桃・咽頭ジフテリア
扁桃ジフテリア、咽頭ジフテリアは、2〜5日の潜伏期間を経て、発熱、倦怠感,食欲不振,咽頭痛,微熱、嚥下痛などの症状から始まります。
24時間後には扁桃,咽頭などに特徴的な厚い偽膜(白い膜)が形成されます。
頸部のリンパ節炎は、大きく腫れると、“bull neck”と呼ばれる状態になります。
症状は毒素血症の程度によって異なり、10日ほどで治癒する患者もいれば、死亡に至る患者もおり、様々です。
鼻ジフテリア
病初期は微熱で、次第に鼻汁は血液が混ざります。また、粘液膿性となります。
鼻孔,上唇はびらんします。無治療の場合、この症状は数週間続きます。
喉頭ジフテリア
咽頭ジフテリアから進行し、発熱、咳嗽、嗄声、犬吠様の咳「クループ」などが特徴です。
気道に膜が形成され、呼吸困難が生じます。気道閉塞によって死亡に至る例もあります。
診断
診断は,病変部からの菌の分離によって行います。鼻咽腔粘膜や結膜などから偽膜を採取し、特殊な培地で培養します。
または、PCR法によりジフテリア菌の遺伝子を検出します。
治療方法
ジフテリア菌の産生する毒素を迅速に抗毒素により中和し、さらに、適切な抗菌薬を投与します。
抗毒素は北里研究所が管理しています。
保健所に届け出て、抗血清を入手します。
抗菌薬はエリスロマイシンが第一選択となります。培養が陰性になることを確認するまで投与します。
予防法
本症の予防には、ジフテリア、百日咳、破傷風(DPT)3種混合ワクチンや、ジフテリア、破傷風(DT)2種混合トキソイドの接種が行われています。
ジフテリア発生地に渡航する際にはDTワクチン接種が望ましいです。
疫学
国内においては3種混合ワクチンの普及により1999年の1例を最後に発生はありませんが、2000年以降ジフテリア菌に近縁のCorynebacterium ulceransによる5例のジフテリア類似症例が報告されています。
法律関係
本症は2類感染症に分類され,診断した医師は直ちに保健所へ届出義務があります。
C. ulceransの産生する毒素もまたC. diphtheriaeの産生する毒素と類似しているため、診断したときは速やかに厚生労働省に届け出なければいけません。