グラム染色のピットフォール(注意点)など

グラム染色の落とし穴(注意点)を紹介します。

  • 膿性の検体は、スライドガラスに塗りすぎると、十分に広げることができず、結果として脱色不良となりやすく、陰性菌を陽性菌と誤認する原因となる(スライドグラスにのせる検体はごく少量にするとよい)。
  • 染色液は10秒間程度の接触で十分であるが、アルコールとの接触時間は20~30秒間とする。脱色不良では、陰性菌を陽性菌に見誤るリスクが起きる。ちなみに、脱色しすぎたときは、陽性菌を陰性菌に見誤るリスクや、逆に脱色不良であると誤解するリスク(陰性菌を陽性菌に見誤るリスク)が生じる。
  • 検体の厚さが薄すぎるところや、厚すぎるところで観察すると、陽性菌と陰性菌を互いに見誤るリスクがある(白血球の核が紫色に染まっている部分とピンク色に染まっている部分とが混在している場所が最も観察に適している)。
  • 髄液の場合、グラム染色が陰性であっても、細菌性髄膜炎を否定できないことに注意。
  • 急性の細菌性髄膜炎を疑い、髄液中の好中球が優位であるにもかかわらず細菌が見えないときは、リステリアの可能性がある。
  • Gram 染色で全ての微生物が確認できるわけではない。
  • Gram 染色で微生物が確認ができない場合は、次のどれかに該当することが多い。①細胞壁がない微生物による感染症の場合(代表的なのはマイコプラズマ)。②抗菌薬の投与で微生物が消失している場合(抗菌薬投与前に検体採取をすることは,微生物検査の基本)。③感染菌量が少なくい場合(リステリア菌や髄膜炎菌による細菌性髄膜炎では、Gram 染色の感度が低く確認できない場合が多いとされる。
  • 貪食像の情報は、起炎菌推定の参考になるか。①好中球は菌を認識するのみであり、常在菌かどうかは認識することができない。②また、肺炎球菌などの莢膜産生菌は貪食回避されるので、貪食像が少ない。③pHと浸透圧が上がると、好中球の貪食能が落ちる(尿路感染症で注意が必要)。
  • ただし、喀痰で複数の嫌気性菌の貪食像がある場合は、誤嚥性肺炎と診断するのに有用。
  • グラム染色鏡検では、異常形態を示す細菌が認められることがある。
  • β-ラクタム薬投与例ではフィラメント化した細菌がしばしば観察される。
  • 細菌が異常形態を示してもグラム染色で明瞭に染色されるときは、細菌が生存していることがあり、それは抗菌薬が治療に無効であることを意味する場合がある(その場合、抗菌薬の変更が必要)。たとえば、セフェピム投与中の緑膿菌性急性腎盂腎炎患者の尿のグラム染色で、伸展化した緑膿菌が認められる場合は β-ラクタム系抗菌薬をアミノ配糖体系抗菌薬やキノロン系抗菌薬に変更す
    る必要がある。
  • 異常形態はバクテリオファージに感染した細菌や抗菌薬投与のない正常細菌でも観察されるため、異常形態を示す細菌の意味を正しく解釈するには患者情報が不可欠。検体のpH や浸透圧も考慮する必要がある。
  • Hucker 変法では、ルゴール液での媒染が不十分な場合は,脱色ムラの多い標本となる(標本が肉眼で完全に褐色に変わったことを確認してから脱色することが大切)。また、Hucker 変法の純アルコールによる脱色・分別は、厚みが不均一な標本では脱色不足や脱色過多が起きやすい(純アセトンまたはアセトン・アルコール液に代えることが推奨されている)。
  • バーミー法では、フクシンによりグラム陽性菌さえも赤く染まる場合があるため、注意が必要。
  • 細菌が、対数増殖期を過ぎて遅滞期や死滅期になると、グラム陽性菌が、紫に染まりにくくなる。
  • 菌種によっては、メタノール固定をすると、染色性に影響する場合がある。たとえば、Nocardia spp. は,メタノール固定するよりも火炎固定標本に多く菌体が認められる。