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発熱性好中球減少症(febrile neutropenia:FN)

好中球は健常人では骨髄のみで産生される。

化学療法に起因し、発熱性好中球減少症(FN)を発症することがある。

発熱の原因の大半は、抗がん薬により消化管が粘膜障害をきたし、破綻した粘膜から腸管内の細菌が体内の血流に侵入して引き起こされると言われる。

初期不明熱の60から70%は緑膿菌をカバーする広域抗菌薬による経験的治療に反応することから,多くが一般細菌による感染症と理解されている。

早期に適切な対処が施されないと急速に死に至る可能性のある内科的エマージェンシーである。

抗がん薬は、がん細胞だけではなく、細胞分裂が活発な骨髄中の造血細胞にも影響し、血液の成分を作り出せなくする結果、好中球が減り発熱(腋窩温37.5℃以上(口腔内温38℃以上)の発熱)することを発熱性好中球減少症(FN)という。

高齢や臓器障害、進行がん、過去のFN発症歴などがリスクである。

造血支持に必要な最小限の幹細胞数は常時400~500/μL。

感染は、好中球数が減るにしたがって発症しやすくなる。

抗がん薬投与後7~10日に出現しやすい。

早期にはほとんど自覚症状がない(気がつきにくいし、解熱鎮痛薬(アセトアミノフェン、NSAIDs)をがん性疼痛に使用していると正確な体温が把握しにくい)。

悪寒などの症状がある場合は、熱が高くなくてもFNになっている可能性を考慮する。

好中球数が1500/μL以下になると内囚性細菌叢(口腔内や腸管など)の制御が損なわれ、200/μL以下では炎症反応が起こらなくなるとされる。

一般的には好中球数が500/μL以下となったら広域抗菌薬の投与や、顆粒球コロニー形成刺激因子(granulocyte-colony stimulating factor;G-CSF)投与といった対応が必要になる。

日本癌治療学会(JSCO)がG-CSF製剤の適正使用に関するガイドラインを作成している。

MASCCスコア(Multinational Association for SupPotive Care in Cancer scoring system)

MASCCスコアはFNが重症化するリスクが高いか低いかを見分ける手段として有用。

MASCCスコアの合計は最大26点。21点以上は低リスク群,20点以下は高リスク群。

検査

FNが疑われる場合、抗菌薬の投与前に2セットの血液培養検査を行う。

末梢静脈からの採取の場合は、異なる2カ所の静脈部位から採取。

中心静脈カテーテルが挿入されている場合は、カテーテル内腔から1セットと、末梢静脈から1セット採取。

予防薬・治療薬

G-CSF製剤の投与(基本は皮下注射)は化学療法終了後翌日以降に行う。

フィルグラスチム(グランⓇ)

連日投与。予防的投与が推奨。治療的投与については非推奨だが、日本では保険適用あり。

ペグフィルグラスチム(ジーラスタⓇ)

効果が14日程度続く。予防的投与に用いる。抗がん薬投与24~72時間以内に投与する。成人のすべてのがん種に使用できる反面、高額。ほかのG-CSF製剤と比較すると腰背部痛や関節痛、肝機能上昇が出現しやすい。

抗菌薬

がん薬物療法施行後に高度な好中球減少が長期間続くことが予想される患者に対してニューキノロン系抗菌薬の予防投与が推奨されている。ただし、好中球減少が軽度ながん患者への予防投与では、効果が限定的である。

抗真菌薬

がん薬物療法施行後に高度な好中球減少が長期間続くことが予想される患者に対して抗真菌薬の予防投与が推奨されている。ただし、アゾール系抗真菌薬は、多くの他の薬物と相互作用するため、注意。キャンディン系抗真菌薬など、薬物相互作用が少ない抗真菌薬を使用するのが望ましい。