カテゴリー
医療従事者向け

栄養指標としてのアルブミンの見方

アルブミンと栄養について解説します。

アルブミンとは?

アルブミンは肝臓で合成される水溶性のタンパク質です。

分子量は、約66,000です。

血清中には、100種類以上のタンパク質が含まれていますが、重量比で、そのうち約60%をアルブミンが占めています。

基準範囲は、一般的には、3.8 ~ 5.3 g/dl です。

アルブミンの役割

アルブミンには、主に3つの働きがあります。

一つ目は、血液の浸透圧の維持に貢献することです。

二つ目は、内因性のアミノ酸の供給源になることです。

三つ目は、難溶性の物質を運搬することです(アルブミンは、アミノ酸,脂肪酸,カルシウム,甲状腺ホルモン,ビリルビン,薬剤などと結合します)。

アルブミンと栄養との関係

アルブミンの合成量は栄養補給状態の影響を受けるため、血清アルブミン濃度は栄養補給状態の指標となります。

一般には、血清アルブミン濃度が3.0g/dl以下で、低栄養と考えられています。

なお、ここでいう3.0g/dlは、測定法がBCG法である点に注意します。

アルブミンの測定法の違い(BCG法,改良BCP法,換算式)

アルブミンの半減期と評価

アルブミンの血中の半減期は21日です。

したがって、血清アルブミン濃度は、中長期的な栄養状態の変化を判断するときの指標となります。

ここでいう中長期とは、およそ2週~4週の期間を意味します。

ちなみに、アルブミン値は、循環血液量(すなわち水分量)により大きく変動します(脱水で高値、水負荷で低値)。ゆえに、アルブミン値は、時系列で、上昇傾向もしくは下降傾向かを評価するとよいでしょう。

アルブミンの半減期が3週間という根拠

アルブミンの測定値に影響する因子

上述のように、血清アルブミン値は、栄養補給状態の変化を反映します。

しかし、血清アルブミン値は、病態の影響を受けるため、栄養補給状態のみを反映するわけではない点に注意する必要があります。

病態の影響

血清アルブミン値は、つぎのような病態によって、上昇あるいは低下します。

血清アルブミン値を評価するときは、必ず、つぎのような病態の存在の有無を確認する必要があります。

増加

・脱水などによる血液の濃縮

減少

・肝障害や炎症などによるアルブミン合成の低下

・アルブミンの体外への漏出(尿,消化管,皮膚などへの漏出;ネフローゼ症候群,火傷,蛋白漏出性胃腸症など)

・甲状腺機能亢進症や炎症(外傷,手術なども含む)などによる代謝の亢進によるアルブミンの消費亢進

・分布異常(胸水・腹水貯留,浮腫)による、アルブミンの血管外への移動

・消化吸収障害による、アルブミンの合成原料となるタンパク質やアミノ酸、その他の栄養素の吸収量の低下(①アミノ酸の供給源となる蛋白摂取が少ない(食事が不十分)、②消化管における蛋白の消化吸収障害、③門脈によりアミノ酸が肝臓ま
で運ばれない(循環障害))

アルブミンの体内分布

とくに記憶しておくべきことは、毛細血管が終 わってすぐの静脈後毛細管静脈(postcapillary venule)という部位の血管壁のタイトジャンション(tight junction;TJ)の閾値は、非炎症下では、およそ50kDa以上の水溶性物質の移動を制限していることです。

炎症下ではこの規制が取り払われ、アルブミン(分子量約66kDa)は、水とともに組織に移行します。

なお、IgG(分子量は約146kDa)も、炎症時にはTJバリアを通過できることになります。

※参考文献  皮膚アレルギーフロンティアvol14 no3 2016-11『炎症について考える〜血管透過性のイメージング〜』

アルブミン値と予後

なお、アルブミン値が低ければ低いほど、予後は不良とされ、入院期間が長期化する傾向が見られます。

たとえば、手術後の患者では回復が遅れがちとなります。

また、アルブミン値が低い患者は、全身状態が悪いことが多いため、免疫力が低下していることが多く、感染症を合併する頻度も高いです。