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ブロックチェーン結婚のメリットとは?

結婚とブロックチェーンの話題をお届けします。

実は、最近は「ブロックチェーン結婚」がちょっとした話題なのです。

これは、カップルが、ブロックチェーン上に婚姻契約を記録するというものです。

スマートコントラクトは署名され、提出されると、その記録は、安全に永久保存されます。

婚姻契約を書き込めるプラットフォームはいくつか存在し、その中には、家族生活の諸条件を盛り込むことが可能なものもあるようです。

法律婚したカップルも、事実婚のカップルも、どちらも利用できます。

…ところで、この話を聞くと、

「ブロックチェーンに結婚の情報を記録して、いったい何になるの?」

「ただの自己満足?」

なんていうふうに思うかもしれません。

ところが、実は、これには、しっかりとしたメリットがあります。

それは、カップルが、婚前契約(結婚届を出す前の契約)をする場合です。

あまり一般的ではないかもしれませんが、結婚前に、財産や生活費の取り扱い、家事・育児・介護の分担、不倫や浮気があった場合の対応などについて、夫婦間の約束事を定める場合があります。

口頭では「うやむや」にされてしまう危険があるので、しっかりと記録に残しておきたいという事情があるからです。

この婚前契約をするときに、紙の契約書の代わりにブロックチェーン上の記録を使えるのです。

さらに、例えば、イーサリアムを利用すると、毎月一定額を夫婦共有のウォレットに送るようにするなど、スマートコントラクトを利用して契約を自動で履行することができます。

ちなみに、いいことづくめに思える、このブロックチェーン結婚ですが、注意が必要なパターンがあります。

それは、結婚後に契約を結ぶ場合です。

なぜなら、日本では、結婚後に夫婦でした契約は、いつでも、夫婦の一方から取り消す事が出来るからです。

民法第754条

『夫婦間でした契約は、婚姻中、いつでも、夫婦の一方からこれを取り消すことができる。ただし、第三者の権利を害することはできない。』

この法律があるので、婚姻届を出した「後」の夫婦間の契約については、ブロックチェーン上の記録を盾にして契約の履行を迫っても、無意味に終わる可能性があります。

たとえば、結婚後に、「浮気をしたら百万円払う」と夫婦間で契約して、ブロックチェーンに記録したとしても、夫が実際に浮気したら、どうなるでしょう?

夫が契約を取り消してしまえば、妻は、いくらブロックチェーン上に記録があっても、法的には、夫に百万円を請求することはできないのです(つまり裁判しても妻は負けます)。

もちろん、別途、慰謝料を請求することはできます。

したがって、法律的な観点から言えば、ブロックチェーン結婚が、本当の意味で役に立つのは、「婚前契約」に限られるということが言えます。

なお、事実婚カップルの場合は、民法第754条は関係ないので、特に注意することはありません。

以上、結婚×ブロックチェーンの話題でした。

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遺言をブロックチェーンに記録する

今回は、遺言(ゆいごん)とブロックチェーンをテーマにしてみます。

遺言の基本ルール

人が亡くなったとき、財産上の問題として、相続があります。

遺言が無ければ、配偶者や子など(法定相続人)だけで遺産を分け合います。

分け方で争いになった時は、話し合いで解決するか、法律に従って分けます(法定相続分)。

ただし、遺言があれば、法定相続人でない人にも、遺産を分けることができます。

遺言書で、「どんな遺産を、だれに、どのくらい相続させたいか」を意思表示しておくのです。

これを遺贈(いぞう)といいます。

たとえば息子の嫁や、孫、内縁の妻、あるいは他人にでも、遺産をあげられます。

※なお、たとえ遺言があったとしても、法定相続人には、認められる最低限の取り分(遺留分)があります。

いまの法律と電子遺言

遺言に関して、いま期待されているのが、ブロックチェーンによる電子遺言サービスです。

いまの日本の法律では、「電子データは改ざんされる危険がある」という考えのもと、電子遺言は、法的効力が認められてきませんでした。

しかし、ブロックチェーン技術を使えば、改ざんの可能性を否定できます。

もしかすると、法改正され、ブロックチェーンによる電子遺言であれば、正式な遺言書として利用することが可能というふうになるかもしれません。

ちなみに、調査時点では、NEMのブロックチェーンに遺言を残せる『NEMWill』というプロジェクトを見つけることができました。ご参考まで。

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スターバックスがコーヒー豆をブロックチェーンで追跡する実験を実施中

スターバックスが、ブロックチェーン技術を、実験的に導入しているというお話です。

その意義を理解するために、まずはじめに、これまでのコーヒー豆の取引に関する話をします。

はじめに

コーヒーは、石油に次いで世界で2番目に大きい貿易商品です。

コーヒーの栽培で生計を立てている人は、世界中で、およそ1億2500万人いるそうです(Fairtrade Foundationの推計)。

主に、中南米と東南アジアの国々の農家の人々です。

これらの生産国では、伝統的に、仲買業者(中間業者)が、農家から、豆を安価に仕入れる、すなわち「買い叩く」という構造的な問題があります。

その影響か、コーヒー栽培農家の家族は、1日2ドル未満で生活しています(世界銀行の調査)。

10年くらい前の映画になりますが、エチオピアの実態を描いた「おいしいコーヒーの真実」という映画がわかりやすく、その状況を伝えていました。

フェアトレードの取り組み

この農家の経済的な問題を解決しようとする取り組みが、実は、以前からありました。

それは、フェアトレードの取り組みです。

こんなロゴが付いた、コーヒー豆や、チョコレートを見たことがある人もいるのではないでしょうか?

スターバックスの店舗にあるコーヒー豆にも、この認証マークが付いています。

これは、フェアトレードの基準を守った製品に貼られる認証ラベルです。

フェアトレードとは? ーフェアトレードジャパンより
コーヒーや紅茶、バナナやチョコレート。日常を彩るたくさんの食べ物が世界の国々から私たちの手に届けられています。
それらを生産している国、人々のことを考えてみたことはありますか?
日本では途上国で生産された日用品や食料品が、驚くほど安い価格で販売されていることがあります。
一方、生産国ではその安さを生み出すため、正当な対価が生産者に支払われなかったり、生産性を上げるために必要以上の農薬が使用され環境が破壊されたり、生産する人の健康に害を及ぼしたりといった事態が起こっています。
生産者が美味しくて品質の良いものを作り続けていくためには、生産者の労働環境や生活水準が保証され、また自然環境にもやさしい配慮がなされる持続可能な取引のサイクルを作っていくことが重要です。
フェアトレードとは直訳すると「公平・公正な貿易」。
つまり、開発途上国の原料や製品を適正な価格で継続的に購入することにより、立場の弱い開発途上国の生産者や労働者の生活改善と自立を目指す「貿易のしくみ」をいいます。

ちなみに、対象商品には、さまざまなものがあります。

このフェアトレードは、理想的な取引を推進するものです。

しかし…

世界のコーヒー総生産に占めるフェアトレード認証コーヒーは、約4.5%に過ぎないのが実情です。

依然として搾取され続けている原産地の農民たちがいます。

※なお、認証ラベルがなくても、独自に公正な取引に取り組んでいる企業もあります。「認証ラベルがない」=「不公平・不公正」ではありませんので、誤解には注意です。

ブロックチェーンへの期待

このような背景の中で、スターバックスも、これまで、コーヒー農家の継続的な利益確保に取り組んできました。

具体的な取り組みはこちら:Ethical Sourcing 倫理的な調達

そして、今年3月、米スターバックスは、新たに「Bean to Cup」の実験的な追跡プログラムの開始を発表しました。

公式リリースはこちらです:Starbucks Newsroom

「Bean to Cup」とは、文字通り、「豆からカップまで」という意味です。

このプログラムの概要ですが、

・コスタリカ、コロンビア、ルワンダの選ばれたコーヒー農家を対象にします。

・生産されたコーヒー豆が物流に載るプロセスをリアルタイムで記録し共有することで、物流プロセスのトレーサビリティ(追跡可能性)を向上させます。

・そして、トレーサビリティの向上が、どのようにコーヒー農家に経済的自立と自信を与えるのかを、今後2年間にわたって検証します。

ちなみに、NAEB(ルワンダ農業省輸出開発委員会)のCEO、ビル・カヨンガ氏が、スターバックスのプログラムに関して、「トレーサビリティは農民の価値を高め、ルワンダのコーヒー部門を変える。それによって、国全体が強化されるだろう。」と有望視する発言をするなど、プログラムを実施する各国から、期待の声が上がっているそうです。

将来は

近い将来、スターバックスのブロックチェーン技術によって、コーヒ栽培農家が、豆の公正な価格に見合う代金を、容易にかつ迅速に得られるようになっているかもしれません。

そして、僕らがスターバックスでコーヒーを飲むときに、カップ一杯ごとに、コーヒーの産地が分かったり、農家が公正な代金をもらったのかどうかが分かったりする日が、やって来るかもしれませんね。