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リフィーデング症候群の原因、予防

リフィーディング症候群について解説します。

リフィーディング症候群とは

定義

本症候群は、重度の低栄養患者の栄養再開時、電解質・体液移動により起こる症候群と定義されています。

概要

refeedingリフィーデング症候群は、いわゆる「マラスムス」といわれるような慢性的な飢餓状態の患者に大量のブドウ糖を投与した際、投与数時間〜数日後に発生する代謝性合併症です。

主に電解質異常により心肺および神経系に異常をきたします。

重篤な症状を呈するため、適切な病態把握や循環動態の管理を行われないと、死亡する例もあります。

高度な栄養不良や、数ヶ月にわたる飢餓状態の症例に対して栄養療法を行うときは、リフィーデング症候群が発生する危険を認識することが大切です。

リフィーディング症候群の原因

摂食不足でエネルギーが十分に供給されていない状態では、ヒトは、体脂肪を分解してケトン体をエネルギー源としています。

そのような状態のところに、点滴、摂食、経腸栄養などで糖質が急激に入ってくると、解糖系が働くことで糖質代謝が発現し、それによりインスリン分泌が刺激されます。

インスリンは、細胞内へのグルコースの取り込みを促進しますが、グルコースとともに、カリウム・リン・マグネシウムも細胞内に取り込まれる結果、もともとの低カリウム血症・ 低リン血症・低マグネシウム血症がさらに悪化することになります。

また、糖質の負荷により、アデノシン三リン酸 (ATP)が産生されますが、それに伴って、リンが消費されます。

したがって、特に低リン血症を発症しやすく、貧血や痙攣、横紋筋融解が起こり呼吸機能低下をきたす場合があります。

低リン血症による臓器障害のうち、特に心不全や呼吸不全、腎不全は致命的です。

さらに、ビタミンB1や微量元素も必要量が高まり不足します。

特に、ビタミン B1が欠乏したまま急激に栄養補給を行うと、ビタミンB1欠乏に伴うウェルニッケ脳症を発症することがあり、注意が必要です。

さらに、ブドウ糖負荷により増加したインスリンは、 腎尿細管におけるナトリウムの再吸収を促進する働きがあります。

そのため、水分貯溜が発生し、循環動態や呼吸状態にも悪影響を及ぼします。

リフィーディング症候群の予防方法

リフィーデング症候群が好発する病態としては、慢性低栄養のほかに、神経性食思不振症、アルコール依存症、外科手術後、担癌患者などが知られています。

これらのような症例を含む、慢性的な低栄養の症例では、リフィーデング症候群の予防策として、栄養の投与前に、電解質異常を補正します。

すなわち、NaH2PO4製剤や、MgSO4製剤を経静脈的に投与することで、リンやマグネシウムを補充します。

また、投与する栄養に含まれるエネルギー量を、はじめは少なめにすることも大切です。

投与初期のエネルギーは400 〜800kcal/日や、20kcal/kgを目安とします。

なお、ケトーシス予防のために、ブドウ糖あるいは炭水化物は、最低限必要量として100g/day以上を投与しておくことが薦められます。

投与開始後1週間は、不整脈、心不全、低換気症候群の可能性があるため、心電図と酸素飽和度のモニタリングを行い、また、血液検査を行い、血清リン、マグネシウム、カリウム、グルコース濃度も随時モニタリングします。

投与エネルギーについては、一般的には「2〜4kcal/kg/24 〜48 時間」のペースで増量していき、最終的には必要エネルギー量を満たす量にまで増やします。