麻疹(ましん)、別名「はしか」について、やさしく解説します。
定義
麻しんは急性の熱性発疹性ウイルス感染症です。
疫学
ワクチンを接種する前の乳幼児と、麻疹との接触機会が少ない成人は、麻しんにかかる可能性が高くなります。
なお、麻疹/風疹の混合生ワクチンを2回接種した効果が出るまでには、数年を要します。
病態
麻疹の病期は,カタル期、発疹期、回復期に分類されます。
(1)カタル期
感染してから10~12日後に発症します。
発熱や、咳、咽頭痛、鼻汁などの上気道炎症状、結膜炎症状、消化器症状、全身倦怠感などがあります。
発疹出現1~2日前より、Koplik斑(周囲が赤く中心が白色の点状斑)と呼ばれる細かな斑点が認められます。
カタル期の終わりに、一時、熱が下降します。
(2)発疹期
熱がいったん下降した後,再び高熱が3-4日間、持続します。
これは、始めの発熱とあわせて「二峰性発熱」と呼ばれます。
発疹期には、頭部、頸部より発疹が出現し、体幹や四肢へと拡大します。
発疹は紅斑性丘疹で始まり、しだいに融合して大小不同の斑状となり、特有の麻疹様顔貌を呈します。
3~4日間持続した後に褐色の色素沈着を残します。
(3)回復期
微熱となってやがて解熱します。
全身倦怠感や咳が持続する場合には,肺炎の合併を疑います。
診断
診断は、主に麻疹IgM抗体により診断されます。IgG抗体の有意な上昇により診断も可能です。
また、高熱,皮疹,眼球結膜の充血、Koplik斑の出現は麻疹の特徴的所見であるため、診断に有用です。
PCR法によるRNAの検出なども有用です。
なお、風疹、パルボウイルスB19感染症、薬疹、染性単核球症〔EBウイルス,サイトメガロウイルス)、急性HIV感染症、リケッチア症などとの鑑別が重要です。
合併症
肺炎、脳炎、亜急性硬化性全脳炎(SSPE:subacute sclerosing panencephalitis)、内耳炎,中耳炎,副鼻腔炎などがあります。
治療
対症療法
特異的治療はないため,安静,補液,解熱鎮痛薬などの対症療法が主体となります。
接触後発症予防
麻疹抗体価の陰性者が麻疹ウイルスに感染したと考えられる場合、72時間以内に麻疹生ワクチンを緊急で接種します。
法律関係
感染症法により麻疹は全数報告となっています(五類感染症)。