インスリンは、体内で分泌されるホルモンで、血糖値を下げる働きがあります。

糖尿病では、インスリンが不足しているため、インスリンを投与して補充することがあります。

しかし、インスリンを投与するときに、副作用が現れるとこがあるので解説します。

なお、インスリン投与する方法には、「インスリン注射療法」、「インスリン吸入療法」、「持続皮下インスリン注入療法」などがあります。

インスリンの影響で起きる副作用

低血糖

インスリンの作用が強く出すぎると、患者は低血糖になります。

一般には、低血糖とは血糖値が 70mg/dL以下になった状態、または急激に血糖値が下がった状態を意味します。

低血糖になると、段階的に生理的な変化が起きます。

血糖値が80mg/dL付近まで低下すると、まず、インスリン分泌が抑制されます。

血糖値が70mg/dL付近まで低下すると、グルカゴン・アドレナリンが分泌され、さらに60mg/dL以下まで低下すると成長ホルモンやコルチゾールが分泌されます(いわゆる拮抗調節反応:counter-regulation)。

通常は、この拮抗調節反応により、自律神経系の変化が誘発され、異常な空腹感、発汗、振戦、動悸、不安感などの自律神経刺激症状(いわゆる警告症状)が患者に自覚されます。

さらに血糖値が50mg/dLを 下回ると、中枢神経機能低下による症状が現れます。

たとえば、判断力低下、眠気、行動異常、意識障害です。

なお、高齢者や罹病期間の長い患者、自律神経障害のある患者では、インスリンやグルカゴンの反応低下や分泌不全を認めるため、警告症状が出ないまま、突然、中枢神経症状が出現することがあります。

いわゆる無自覚性低血糖です。

無自覚性低血糖は昏睡に陥ることもある危険な状態で、もし周りに誰もいなかったり、運転や危険な作業中だったりすると、生命にかかわります。

無自覚性低血糖では、血糖値の自己測定を習慣化し、低血糖症状と血糖値との関係を確認しておくことが大切です。

対策としては、あえて血糖値を高めにコントロールする方法があります。

また、たとえば、自分が糖尿病であることを他人に知らせるためのカードを携帯する、独居の高齢者などは近所の人に知ってもらう、家族にグルカゴン注射を覚えてもらう、運転前に血糖測定をする、といった対策があり得ます。

体重増加(太る)

インスリンは中性脂肪の合成を促進するため、高インスリン血症になると体重増加の原因になりえます。

また、治療中に反復性の低血糖症状を起こした場合、過剰のカロリー摂取につながることもあります。

なお、インスリンで血糖値が下がると安心し、食事療法や運動療法をおろそかにしてしまうことも、体重増加につながります。

体重増加は、インスリン抵抗性を助長し、 結果としてインスリンの増量につながります。

さらに、インスリン増量がさらなる体重増加をきたすという悪循環に陥ることがあります。

このため、肥満者のインスリン治療に際しては、食 事療法と減量プログラムの徹底が必要となります。

リポハイパートロフィー (Lipohypertrophy)

インスリンを皮下に注射すると、その部位で高インスリン状態となり、脂肪合成が促進され、皮下の脂肪が隆起することがあります。

これは、インスリンリポハイパートロフィー(皮下脂肪肥大症)と呼ばれます。

原因は、同一部位への注射が原因であることが多いです。

皮下脂肪肥大症を来した部位では、穿刺時痛が減弱するため、患者は同部位を好んで皮下注射を行う傾向がありますが、隆起したところに注射をするとインスリンの吸収が悪くなり、血糖コントロールを乱す原因となります。

医療従事者が「注射部位は、打つたびに2〜3cmずらしましょう」などと呼びかけ、同一部位への注射を避け、少しずつ注射部位をずらすようにすると、改善していきます。

インスリン浮腫(むくみ)

長期に高血糖状態にあった患者にインスリンを投与して血糖値を急激に改善すると、浮腫を生じることがあります。

インスリンによる腎ヘンレループでのNa吸収の充進や、毛細血管の透過性の亢進が原因と言われますが、腎障害・心臓病がなければ,数日で消失するといわれています。

肝機能低下

長期間にわたる血糖コントロール不良の患者に対してイ ンスリン治療を行うと、一過性の肝機能障害をきたすことがあります。

主な原因としては、肝臓 への急速なグリコーゲン蓄積と言われています。

通常、経過は良好で、肝機能は1〜2か月で正常化することが多いです。

インスリン製剤に対する免疫反応による副作用

インスリン抗体(insulin antibody;IA)

インスリン治療中の患者の中には、外因性のインスリンに対する抗体が産生される患者がいます。

投与されインスリンはインスリン抗体と結合し、インスリン作用を発揮できなくなります。

インスリンアレルギー

外因性のインスリンがアレルゲンとなるケースです。

アレルギーはIgEを介する二相性過敏反応が最も高頻度です。

局所インスリンアレルギーの症状としては、皮下注射部位の腫脹・発赤・掻痒感・硬結が多いです。

重症化すると、全身に症状が出現し、アナフィラキシーショックに陥ることがあります。

軽症の場合、インスリン投与の中止により自然消退することもあります。

一方、患者がインスリン依存状態にある場合は、インスリン製剤の変更や、抗ヒスタミン薬やステロイド薬の併用、脱感作療法、CSⅡを用いた持続少量投与などによりインスリン投与を継続する必要があります。