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医療

スモールステップ法による糖尿病指導

スモールステップ法とは

スモールステップ法とは、達成可能な目標行動から始め、少しずつ最終目標に近づけていく目標設定方法です。

より詳細には、スモールステップ法は、1950年代にアメリカのSkinerによって提唱されたプログラム学習に取り入れられている原理のうちの一つであり、学習の到達目標に至るまでの過程を細かく分け、一つ一つの積み重ねによって達成するという原理のことを言います。

糖尿病指導とスモールステップ法

目標行動は、患者に決めてもらうことが大切です。

患者が「できそう」と思う行動を目標にします。

目標は血糖値や体重などの変化よりも、患者にとって、日々の生活で把握しやすい、具体的なものであることが必要です。

たとえば、ウォーキングの歩数を「1日5000歩」など、客観的に評価ができる行動を目標に設定するのが良いでしょう。

ほかには、「週に3日は通勤時に駅で階段を利用する」、「一つ手前のバス停留所で降りて歩く」、「週に3日は間食を控える」など、様々なものがあるでしょう。

このとき、目標は柔軟に見直すことができることを、あらかじめ患者に説明しておくと良いでしょう。

患者の心理的なプレッシャーが小さくなりますし、また、目標行動を達成できなかったときのストレスも軽減されるからです。

もしも、目標を見直すときは、今までの目標よりもレベルを下げたり、運動の目標から食事の目標に変えるなど目標の種類を変更したりすることができます。

たとえば、通勤中に、「一つ手前のバス停留所で降りて歩く」を往復で実行するのが難しいときは、「帰りにだけ歩く」などとレベルを下げることができます。

また、間食を減らすことが難しいときは、「牛乳を低脂肪のものにする」などと目標の種類を変えることができます。

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医療従事者向け

手術と血糖値のコントロール

手術と血糖値のコントロールについて、基礎的な考え方を解説します。

代謝の変化

手術で組織が侵襲されると、カテコラミンやグルココルチコイドなどのホルモンの分泌や、TNF-αのような炎症性サイトカインの分泌が高まります。

これらは、血糖上昇に働きます。

すなわち、糖尿病ではない健常人であっても、手術時は高血糖をきたしやすくなります。

これは、いわゆる「外科的糖尿病」と呼ばれることがあります。

高血糖のリスク

高血糖は、術後感染症や創傷治癒遅延などの手術合併症のリスクとなりますので、避けなければいけません。

糖尿病の患者であれば、血糖コントロールに細心の注意を払う必要があります。

術前の血糖コントロール

術前は、基本的には、それまでの治療を続けます。

例外的に、ピグアナイド薬を使っているときは、乳酸アシドーシスを避けるために術前2日前から中止します。

また、スルホニル尿素薬(SU薬)を使っているときは、低血糖を避けるために手術の前日に中止して、インスリン注射に替えておきます。

術中の血糖コントロール

輸液にインスリンを混注し、数時間おきに血糖値を測定します。

血糖値としては、150〜250程度を目標にします。

術後の血糖コントロール

侵襲の大きさにもよりますが、術後は、経口血糖降下薬よりも、インスリンによって血糖値をコントロールすることを推奨します。

必要に応じて、スライディングスケールを併用ます。

 

以上,かんたんなまとめでした.

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医療従事者向け

インスリンの副作用

インスリンは、体内で分泌されるホルモンで、血糖値を下げる働きがあります。

糖尿病では、インスリンが不足しているため、インスリンを投与して補充することがあります。

しかし、インスリンを投与するときに、副作用が現れるとこがあるので解説します。

なお、インスリン投与する方法には、「インスリン注射療法」、「インスリン吸入療法」、「持続皮下インスリン注入療法」などがあります。

インスリンの影響で起きる副作用

低血糖

インスリンの作用が強く出すぎると、患者は低血糖になります。

一般には、低血糖とは血糖値が 70mg/dL以下になった状態、または急激に血糖値が下がった状態を意味します。

低血糖になると、段階的に生理的な変化が起きます。

血糖値が80mg/dL付近まで低下すると、まず、インスリン分泌が抑制されます。

血糖値が70mg/dL付近まで低下すると、グルカゴン・アドレナリンが分泌され、さらに60mg/dL以下まで低下すると成長ホルモンやコルチゾールが分泌されます(いわゆる拮抗調節反応:counter-regulation)。

通常は、この拮抗調節反応により、自律神経系の変化が誘発され、異常な空腹感、発汗、振戦、動悸、不安感などの自律神経刺激症状(いわゆる警告症状)が患者に自覚されます。

さらに血糖値が50mg/dLを 下回ると、中枢神経機能低下による症状が現れます。

たとえば、判断力低下、眠気、行動異常、意識障害です。

なお、高齢者や罹病期間の長い患者、自律神経障害のある患者では、インスリンやグルカゴンの反応低下や分泌不全を認めるため、警告症状が出ないまま、突然、中枢神経症状が出現することがあります。

いわゆる無自覚性低血糖です。

無自覚性低血糖は昏睡に陥ることもある危険な状態で、もし周りに誰もいなかったり、運転や危険な作業中だったりすると、生命にかかわります。

無自覚性低血糖では、血糖値の自己測定を習慣化し、低血糖症状と血糖値との関係を確認しておくことが大切です。

対策としては、あえて血糖値を高めにコントロールする方法があります。

また、たとえば、自分が糖尿病であることを他人に知らせるためのカードを携帯する、独居の高齢者などは近所の人に知ってもらう、家族にグルカゴン注射を覚えてもらう、運転前に血糖測定をする、といった対策があり得ます。

体重増加(太る)

インスリンは中性脂肪の合成を促進するため、高インスリン血症になると体重増加の原因になりえます。

また、治療中に反復性の低血糖症状を起こした場合、過剰のカロリー摂取につながることもあります。

なお、インスリンで血糖値が下がると安心し、食事療法や運動療法をおろそかにしてしまうことも、体重増加につながります。

体重増加は、インスリン抵抗性を助長し、 結果としてインスリンの増量につながります。

さらに、インスリン増量がさらなる体重増加をきたすという悪循環に陥ることがあります。

このため、肥満者のインスリン治療に際しては、食 事療法と減量プログラムの徹底が必要となります。

リポハイパートロフィー (Lipohypertrophy)

インスリンを皮下に注射すると、その部位で高インスリン状態となり、脂肪合成が促進され、皮下の脂肪が隆起することがあります。

これは、インスリンリポハイパートロフィー(皮下脂肪肥大症)と呼ばれます。

原因は、同一部位への注射が原因であることが多いです。

皮下脂肪肥大症を来した部位では、穿刺時痛が減弱するため、患者は同部位を好んで皮下注射を行う傾向がありますが、隆起したところに注射をするとインスリンの吸収が悪くなり、血糖コントロールを乱す原因となります。

医療従事者が「注射部位は、打つたびに2〜3cmずらしましょう」などと呼びかけ、同一部位への注射を避け、少しずつ注射部位をずらすようにすると、改善していきます。

インスリン浮腫(むくみ)

長期に高血糖状態にあった患者にインスリンを投与して血糖値を急激に改善すると、浮腫を生じることがあります。

インスリンによる腎ヘンレループでのNa吸収の充進や、毛細血管の透過性の亢進が原因と言われますが、腎障害・心臓病がなければ,数日で消失するといわれています。

肝機能低下

長期間にわたる血糖コントロール不良の患者に対してイ ンスリン治療を行うと、一過性の肝機能障害をきたすことがあります。

主な原因としては、肝臓 への急速なグリコーゲン蓄積と言われています。

通常、経過は良好で、肝機能は1〜2か月で正常化することが多いです。

インスリン製剤に対する免疫反応による副作用

インスリン抗体(insulin antibody;IA)

インスリン治療中の患者の中には、外因性のインスリンに対する抗体が産生される患者がいます。

投与されインスリンはインスリン抗体と結合し、インスリン作用を発揮できなくなります。

インスリンアレルギー

外因性のインスリンがアレルゲンとなるケースです。

アレルギーはIgEを介する二相性過敏反応が最も高頻度です。

局所インスリンアレルギーの症状としては、皮下注射部位の腫脹・発赤・掻痒感・硬結が多いです。

重症化すると、全身に症状が出現し、アナフィラキシーショックに陥ることがあります。

軽症の場合、インスリン投与の中止により自然消退することもあります。

一方、患者がインスリン依存状態にある場合は、インスリン製剤の変更や、抗ヒスタミン薬やステロイド薬の併用、脱感作療法、CSⅡを用いた持続少量投与などによりインスリン投与を継続する必要があります。

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Column

インスリン療法と自己注射

経口血糖降下薬を使用しても血糖コントロールが不十分になる糖尿病患者さんには、インスリン療法が行われます。

現在、糖尿病患者さんのインスリン分泌パターンや生活スタイルに合わせ、たくさんの種類のインスリン自己注射があります。

ここでは、インスリン製剤と、インスリン療法の実際について紹介します。

自己注射の種類

インスリン自己注射には、さまざまな種類があります。

ペンに組み込まれているタイプ (インスリンプレフィルド/キット製剤)

プレフィルド/キット製剤は、中に詰められているインスリン製剤がなくなったらそのまま廃棄します。

例)ノボラピッド注フレックスペン

通常、成人では、1回に2〜20単位を毎食直前に皮下注射します。

インスリン製剤のカートリッジ交換タイプ(インスリンカートリッジ製剤)

カートリッジ製剤は、 外側のペンは再利用して、自分でカートリッジのみを交換します。

なお、カートリッジ製剤のほうが、プレフィルド/キット製剤より価格が安めに設定されていますが、外側のペンの故障に備えて、予備のプレフィルド/キット製剤を常備しておくと安心です。

例)ヒューマログ注カート

通常、成人では、1回に2〜20単位を毎食直前に皮下注射します。

特徴的なペン型注入器

例)ランタスXR注ソロスター

1 本に 450 単位が入っている持効型溶解インスリン製剤です。

通常、成人では、初期は1日1回4~20単位を皮下注射します。

例)ライゾデグ配合注フレックスタッチ

持効型溶解インスリン製剤と超速効型インスリン製剤が配合されています。

通常、成人では、初期は1回4~20単位を1日1~2回皮下注射します。

インスリン療法の実際

未開封のインスリン製剤は、冷蔵庫で保存しておきます。

冷蔵庫から取り出したら、はじめに、インスリン製剤を空打ちして、インスリン製剤が確実に針先から出るのを確認します。

そして、腹部や上腕などに針先を刺します。

刺す場所は、前回注射したところから数cm離れたところを選びます。

その後、5〜10秒程度かけて皮下へ注射します。

インスリン製剤の目盛りがゼロになったことを確認して、さらに10 秒ほど待ってから、注入ボタンを押したまま針を抜きます。

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遠隔医療

糖尿病と遠隔診療

糖尿病の患者さんの中には、仕事や家庭の都合で、通院のための時間がとれない方が多くいます。

そんな患者さんに役立つ、糖尿病の遠隔診療の受け方について解説します。

1.遠隔診療を実施している医療機関を探す

すでに糖尿病と診断されているときでも、遠隔診療をするためには、遠隔診療ができる医療機関にかかり、対面診察する必要があります。

そこで、まずは、通院できる範囲で、遠隔診療できる医療機関を探します。

2.対面診察を受ける

対面診察をして、医師の診断を受けます。

現在の病状を把握するために、血液検査が必要になることもあります。

3.遠隔診療するかどうかを医師が決める

問診や血液データなどから判断して、遠隔診療にできると医師が判断すれば、その後の診察を、遠隔診療にできます。

4.遠隔診療を受ける

ビデオ通話などを通じて、現在の生活スタイルや、自己測定した血糖値の結果などを確認します。

5.処方箋が家に届く

診察後、血糖管理のための経口血糖降下薬の処方箋が送られてきますので、薬局で受け取ります。

また、毎日のインスリン療法が必要になる糖尿病患者さんについては、インスリン自己注射の処方箋が送られてきますので、薬局で受け取ります。

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病気

糖尿病性ケトアシドーシス

糖尿病性ケトアシドーシス(diabetic ketoacidosis:DKA)について解説します。

糖尿病性ケトアシドーシスとは

糖尿病性ケトアシドーシスは、高血糖、高ケトン血症(ケトーシス)、アシドーシスが揃った病態です。

DKAの発症は、1型糖尿病の発症時や1型糖尿病患者がインスリン注射を中断したとき、シックデイのとき等にみられます。

また、2型糖尿病の患者(特に若年の肥満者)が、清涼飲料水を多飲し続けたときなどにも発症します(清涼飲料水ケトーシス)。

糖尿病性ケトアシドーシスの原理

糖尿病性ケトアシドーシスの原因は、インスリンの極端な低下です。

また、グルカゴン、カテコラミン、コルチゾール、成長ホルモンなどのインスリン拮抗ホルモンの増加によりインスリンの作用が妨げられるのも原因です。

糖尿病患者では、インスリンの作用が不足すると、エネルギー源としてグルコースを利用できなくなります。

グルコースが利用できないとき、代替エネルギとして脂肪組織から遊離脂肪酸が動員されます。

遊離脂肪酸はミトコンドリアでβ酸化されますが、遊離脂肪酸の量が多いと「アセト酢酸」や「β-ヒドロキシ酪酸」、「アセトン」などのケトン体が産生されます。

ケトン体は弱酸ですが、大量に産生されるとアシドーシスとなります。

糖尿病性ケトアシドーシスの症状

口渇、多飲多尿、疲労、全身倦怠、体重減少、 吐き気、嘔吐、腹痛、顔面紅潮、粘膜や口腔内の乾燥頻脈などが認められます。

病状が進行すると、傾眠傾向、低血圧、過呼吸けいれん、ケトン臭を呈し、さらに進行すれば昏睡状態になり、クスマウル大呼吸,体温の著しい低下などが起こります。

クスマウル大呼吸

換気量の増加した規則的な呼吸型で、呼吸数は一般に緩徐です。呼気相が努力性である点が特徴的で、糖尿病や尿毒症時のケトアシドーシスの際に出現します。

糖尿病性ケトアシドーシスの検査

病歴などから糖尿病ケトアシドーシスを疑ったら、まず、簡易血糖測定器で血糖値を測定します。

高血糖であれば、血液ガスや、血中ケトン体の測定、一般生化学検査や尿一般定性検査を行います。

典型的には、つぎのような所見となります。

・血糖 300mg/dL以上

・ナトリウム 正常〜軽度低下

・カリウム 軽度高値

・BUN 上昇

・尿ケトン 陽性〜強陽性(+〜3+)

・動脈血pH 7.3未満

・血漿浸透圧 300mOsm/L以上

・HCO3― 10mEq/L未満

治療

補液

はじめは、生理食塩水を500〜1000 mL/時の速さで点滴します。

経過とともに、速度を遅くしていきます。

血糖値が300を下回ったところで、3〜5%ブドウ糖を含んだ補液とします。

インスリン

はじめに速攻型インスリンを静注し、その後に、インスリンを持続注入します。

尿中ケトン体が消失するまで継続します。

経口摂取が可能になったところで、皮下注射に切り替えます。

そのほか

必要に応じて、カリウム補充や、重炭酸補充をします。

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医療

糖尿病の病態

糖尿病は名前の通り「尿に糖が出る病気」 ですが、体にとって問題なのは、血糖値が高いことです。

血糖値が高くなる仕組み

健康な人は、膵臓で「インスリン」というホルモンを分泌します。

インスリンは、血液中のブドウ糖が細胞の中に取り込まれるように働きかけます。

具体的には、肝臓や筋肉、脂肪組織などの細胞表面にあるインスリン受容体と結合し、ブドウ糖の細胞内への取り込みを促進します。

これにより、健常者の血糖値は、狭い範囲でコントロールされてい ます。

しかし、糖尿病の人は、このインスリンの作用が不足しているため、血糖値が高くなります。

インスリンの作用不足とは

インスリンの分泌は、夜間から早朝空腹時にかけて分泌されるインスリンの「基礎分泌」と、食事に応じて急速に分泌される「追加分泌」とがあります。

糖尿病の患者は、糖尿病初期には、追加インスリン分泌の作用が低下し、病状が進行すると、基礎インスリン分泌の作用も低下するようになります。

その結果、食後の血糖値が上昇し、また、食前の血糖値へ戻るのに時間がかかるようになります。

さらに、やがては空腹時の血糖値まで上昇するようになります。

このときのインスリン作用不足の原因は、大きく分けて二通りあります。

ひとつは、膵β細胞から十分なインスリンが分泌されなくなることです(インスリン分泌不全)。

もうひとつは、筋肉、肝臓、脂肪組織などの末梢組織にインスリンが効きにくくなることです(インスリン抵抗性の増大)。

糖尿病の分類

糖尿病は、1 型糖尿病と2 型糖尿病に大別されています。

1 型糖尿病

1 型糖尿病は、膵β細胞の破壊・消失によるインスリン分泌の欠乏が原因です。

主に自己免疫学的機序により膵β細胞が破壊されます。

多くは数か月の経過で発症しますが、数日〜1 週間で発症する「劇症1型糖尿病」や、数年かけてゆっくりとインスリン分泌の低下が進行する「緩徐進行1型糖尿病」もあります。

2 型糖尿病

2 型糖尿病は、インスリン分泌低下やインスリン抵抗性をきたす複数の遺伝素素因に、過食、運動不足、肥満、ストレスなどの環境因子と加齢が加わることで発症します。

日本では、糖尿病の患者の95%以上が2型です。

糖尿病の症状

高血糖が持続すると、症状として、口渇、多飲、多尿、体重減少、易疲労感などを呈します。

ただし、自覚症状に乏しい場合があります。

合併症

急性合併症

高度のインスリン作用不足は、急性の代謝失調を引き起こします。

糖尿病性ケトアシドーシス

高度のインスリン欠乏と、コルチゾールやアドレナリンなどのインスリン拮抗ホルモンの増加により、高血糖、高ケトン血症、アシドーシスをきたします(糖尿病性ケトアシドーシス)。

これは、主に 1 型でインスリン依存状態の患者にみられます。

高浸透圧高血糖症候群

著しい高血糖(600mg/dL以上)と高度な脱水によって高浸透圧血症となり、循環不全をきたします(高浸透圧高血糖症候群)。

2 型糖尿病の高齢者によくみられます。

糖尿病性ケトアシドーシスと高浸透圧高血糖症候群は、いずれも重症例では意識障害を呈するので、両者は合わせて「糖尿病昏睡」と総称されます。

慢性合併症

慢性的な高血糖は、脂質異常症や高血圧とともに全身の血管を傷害します。

細かい血管が傷害され、網膜症、腎症、神経障害が発生します(細小血管障害:ミクロアンギオパシー)。

また、より太い血管が傷害され、虚血性心疾患、脳血管障害、下肢閉塞性動脈硬化症が発生します(大血管障害:マクロアンギオパシー)。

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インスリンと低カリウム血症

インスリンと低カリウム血症について解説します。

なぜ低カリウム血症になるのか

糖尿病の患者で、持続インスリン投与を行っている人は、低カリウム血症になりがちです。

理由は、インスリンに、細胞の外から中へ、カリウムを取り込む作用があるためです。

これは、カリウムシフト(Kシフト)と呼ばれます。

Kシフト

細胞外液中のKの一部は、起電性のNaポンプを介して能動的に細胞内へ移行します。

インスリンは、ブドウ糖とは無関係に骨格筋や肝細胞のNaポンプ活性を刺激し、Kの細胞内への取り込みを促進します。

低カリウム血症の症状とリスク

血清カリウム値の基準範囲は、3.6 〜 4.8mEq/Lです。

血清カリウム値が3.5mEq/L以下になると、脱力・筋力低下・テタニーなどの骨格筋症状、嘔吐・便秘・麻痺性イレウスなどの消化器症状、糖代謝異常、腎肥大、多尿、T波の平低化・U波の出現・PQ間隔の延長などの心電図異常が現れます。

なお、急性心筋梗塞の患者を対象とした研究では、血清カリウム値が「3.5 〜 4.0mEq/L」のときに死亡率が低く、その範囲外では死亡率や心室細動発生率,心停止が高いと報告されています。

低カリウム血症の治療

低カリウム血症では、カリウムの経口補給(野菜,果物, ジュースなど)を第一選択とします。

不十分であれば、経口薬で補充するか、カリウム製剤の輸液を行います。

カリウムの補充中は、定期的に血清カリウム値を確認します。

輸液の場合の補正の目安としては、カリウム製剤を40mmol/L 以下に希釈して 20mmol/h を超えない速度で投与します。

なお、2型糖尿病の場合、ブドウ糖はインスリン分泌を促進し、カリウムの細胞内流入を惹起させ、低K血症を増悪させる可能性がありますので、カリウム溶解液としては、生理食塩液や細胞外液補充液など、ブドウ糖を含まない溶液が望ましいでしょう。

インスリン量を減らす

ちなみに、カリウムを補充する以外の対応策としては、原因となるインスリンの投与量を減らす方法があり得ます。

ただし、インスリン量を減らすことで、血糖値の上昇を招いたり、血清カリウム値の上昇を招いたりする可能性があります。

従って、インスリン量を減らす場合には、血糖値やカリウム値の動きに注意する必要があります。

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