糖尿病性ケトアシドーシス(diabetic ketoacidosis:DKA)について解説します。
糖尿病性ケトアシドーシスとは
糖尿病性ケトアシドーシスは、高血糖、高ケトン血症(ケトーシス)、アシドーシスが揃った病態です。
DKAの発症は、1型糖尿病の発症時や1型糖尿病患者がインスリン注射を中断したとき、シックデイのとき等にみられます。
また、2型糖尿病の患者(特に若年の肥満者)が、清涼飲料水を多飲し続けたときなどにも発症します(清涼飲料水ケトーシス)。
糖尿病性ケトアシドーシスの原理
糖尿病性ケトアシドーシスの原因は、インスリンの極端な低下です。
また、グルカゴン、カテコラミン、コルチゾール、成長ホルモンなどのインスリン拮抗ホルモンの増加によりインスリンの作用が妨げられるのも原因です。
糖尿病患者では、インスリンの作用が不足すると、エネルギー源としてグルコースを利用できなくなります。
グルコースが利用できないとき、代替エネルギとして脂肪組織から遊離脂肪酸が動員されます。
遊離脂肪酸はミトコンドリアでβ酸化されますが、遊離脂肪酸の量が多いと「アセト酢酸」や「β-ヒドロキシ酪酸」、「アセトン」などのケトン体が産生されます。
ケトン体は弱酸ですが、大量に産生されるとアシドーシスとなります。
糖尿病性ケトアシドーシスの症状
口渇、多飲多尿、疲労、全身倦怠、体重減少、 吐き気、嘔吐、腹痛、顔面紅潮、粘膜や口腔内の乾燥頻脈などが認められます。
病状が進行すると、傾眠傾向、低血圧、過呼吸けいれん、ケトン臭を呈し、さらに進行すれば昏睡状態になり、クスマウル大呼吸,体温の著しい低下などが起こります。
クスマウル大呼吸
換気量の増加した規則的な呼吸型で、呼吸数は一般に緩徐です。呼気相が努力性である点が特徴的で、糖尿病や尿毒症時のケトアシドーシスの際に出現します。
糖尿病性ケトアシドーシスの検査
病歴などから糖尿病ケトアシドーシスを疑ったら、まず、簡易血糖測定器で血糖値を測定します。
高血糖であれば、血液ガスや、血中ケトン体の測定、一般生化学検査や尿一般定性検査を行います。
典型的には、つぎのような所見となります。
・血糖 300mg/dL以上
・ナトリウム 正常〜軽度低下
・カリウム 軽度高値
・BUN 上昇
・尿ケトン 陽性〜強陽性(+〜3+)
・動脈血pH 7.3未満
・血漿浸透圧 300mOsm/L以上
・HCO3― 10mEq/L未満
治療
補液
はじめは、生理食塩水を500〜1000 mL/時の速さで点滴します。
経過とともに、速度を遅くしていきます。
血糖値が300を下回ったところで、3〜5%ブドウ糖を含んだ補液とします。
インスリン
はじめに速攻型インスリンを静注し、その後に、インスリンを持続注入します。
尿中ケトン体が消失するまで継続します。
経口摂取が可能になったところで、皮下注射に切り替えます。
そのほか
必要に応じて、カリウム補充や、重炭酸補充をします。