表皮ブドウ球菌とは
表皮ブドウ球菌とは、ブドウ球菌の一種であり、学名をStaphylococcus epidermidisといいます。
一般に、ブドウ球菌は、コアグラーゼ陽性である黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)と、コアグラーゼ陰性ブドウ球菌(coagulase negative Staphylococcus species:CNS) とに大別されます。
十数種あるCNSのうち代表的なものが表皮ブドウ球菌です。
【グラム染色標本のイメージ】
本菌は、皮膚に常在しており、病原性に関しては、黄色ブドウ球菌より弱いものです。
毒素も産生しません。
ただし、従来はその病原性があまり問題とならなかったものの、最近になって、医学の急速な進歩に伴い、易感染患者 compromised host(patient)が急増しています。
このような易感染患者にとっては、表皮ブドウ球菌は大きな問題となります。
培養
・至適発育温度は、37度です。
・好気性で培養し、18~24時間で集落を形成します。
・血液寒天培地で、直径1mm前後の白色の集落を形成します。
・基本的には非溶血の集落ですが、一部の菌株は、血液寒天培地でβ溶血を示します。
感染と治療
日和見感染の原因菌として、尿路感染症、感染性心内膜炎、カテーテル菌血症などを起こします。
皮膚などの常在菌であるため、治療にあたり最も大切なことは、起炎菌であるか汚染菌であるかを、感染部位や症状などから判断することです。
薬としては、β-ラクタム薬などが用いられます。
ただし、メチシリン耐性表皮ブドウ球菌(methicillin-resistant Staphylococcus epidermidis:MRSE)と呼ばれる耐性菌や、バンコマイシン耐性表皮ブドウ球菌の報告もあるので、抗菌薬の選択は注意すべきです。