序
ヒトの体内では、アルブミンは、血液の膠質浸透圧の維持、血管系流動性の保持、種々の物質の輸送、抗酸化能など多様な機能を有する。
近年、病態と酸化ストレスとの関連性が明らかにされてくるに伴って、ヒトの体内のアルブミン分子の抗酸化作用が注目されるようになってきた。
アルブミンの基礎知識
- ヒトの体内のアルブミン分子は、生体内で修飾を受ける。
- アルブミンは、585個のアミノ酸から構成される。
- このアルブミン分子内には35個のシステイン残基が含まれている。
- そのうち、34個のシステイン残基は、それぞれジスルフィド結合(S-S結合)を介した分子内架橋を17箇所で形成し、アルブミン分子の高次構造の形成に役立っている。
- 残りの一つのシステイン残基は、ジスルフィド結合に関与せず、反応性の高いチオール基(-SH基)をを有する。
酸化型アルブミンと還元型アルブミン
これまでに、血液透析(HD)患者や、心血管疾患、糖尿病など、多くの酸化ストレス関連疾患に関して、アルブミンの酸化度が上昇する(酸化型アルブミンが増える)ことや、透析療法や薬物療法などによって、酸化度が減少することが報告されており、注目されている。
酸化型アルブミン
チオール基が、フリーの状態にあるアルブミンは還元型アルブミン(mercaptalbumin(MA))と呼ばれる。
還元型アルブミン
このチオール基に、システインやグルタチオンなどの小分子が可逆的に結合したアルブミンは酸化型アルブミン1(non-mercaptalbumin1(NA1))と呼ばれる。
※例 システイン付加型(ALB-S-S-Cys)
さらにスルフィン酸やスルフォン酸が不可逆的に結合したものは酸化型アルブミン2
(non-mercaptalbumin2(NA2))と呼ばれる。
※例 スルホン化(ALB-SO3H)
健常成人では、還元型アルブミン(MA)が約75%、酸化型アルブミン1(NA1)が約23%、酸化型アルブミン2(NA2)が約2%を占めるという報告がある。
ちなみに、還元型アルブミンは、Human Mercapto Albumin(HMA)と呼ばれることもあり、酸化型アルブミンは、Human Non‐mercapto Albumin(HNA)と呼ばれることもある。
アルブミン製剤
アルブミン製剤には、還元型と酸化型のアルブミンが混在している。
ある報告によれば、還元型比率は20%未満の製剤から50%程度の製剤まで、さまざまな製品が存在している。
これは、酸・塩基平衡や、抗酸化作用、薬物代謝などに影響を与える可能性を否定できない。
参考
酸化型アルブミンが増加する病態には、つぎのようなものがある。
- 加齢
- 糸球体硬化症
- 腎不全
- 糖尿病
- 外科手術
- 肝疾患
測定法に関して
BCP従来法では、MAに対する反応性が、NAより低いという問題があった。
※また、そもそも血清保存中に、MAからNAへの変換が生じ、NAの割合が経日的に上昇するという問題もあった。
BCP改良法は、BCP従来法の問題点であったMAとNAの反応差の解消を目的に開発された。