一次リンパ器官
一次リンパ器官(一次リンパ組織)は、リンパ球が免疫担当細胞になるための分化と成熟に関係します。
ヒトの一次リンパ器官は、骨髄(胎生期は肝臓)と胸腺です。
二次リンパ器官
二次リンパ器官(二次リンパ組織)は、侵入してきた抗原や病原体に対して、免疫担当細胞が免疫反応を起こしたり、相互作用しあったりするのに必要な場を提供します。
ヒトの二次リンパ器官は、リンパ節、脾臓、粘膜付属リンパ組織などがあります。
一次リンパ器官(一次リンパ組織)は、リンパ球が免疫担当細胞になるための分化と成熟に関係します。
ヒトの一次リンパ器官は、骨髄(胎生期は肝臓)と胸腺です。
二次リンパ器官(二次リンパ組織)は、侵入してきた抗原や病原体に対して、免疫担当細胞が免疫反応を起こしたり、相互作用しあったりするのに必要な場を提供します。
ヒトの二次リンパ器官は、リンパ節、脾臓、粘膜付属リンパ組織などがあります。
組織中の細胞を見やすくするために、組織を薄く切る必要があります。
しかし、やわらかいものは薄く切ることができません。
そこで、薄く切るために、組織片に適切な素材を浸透させ、材料を固めます。
一般的な素材として「パラフィン」が使用されます。
上記の操作を「包埋」といい、パラフィンのことを「包埋剤」といいます。
細菌の培養は、発育に酸素を必要とする好気性菌と、酸素があると発育できない嫌気性菌とでは、異なる方法が採られます。
すなわち、好気培養と、嫌気培養です。
好気培養では、シャーレ内の培地、あるいは、緩く蓋を被せた試験管内の培地に、細菌を接種して35〜37度程度の孵卵器に入れます。
なお、培地が液体培地である場合は、浸透させながら培養します。
一方、嫌気培養では、菌を接種した培地を、ガスパックなどの酸素吸収•炭酸ガス発生剤とともに、密閉容器(嫌気ジャー)に入れて培養します。
嫌気性グローブボックス/嫌気チェンバー/嫌気チャンバーを備えた施設であれば、その中で培養します。
なお、培地として、システインやチオグリコール酸などの、還元剤が添加された培地(培地の酸化還元電位が低下している)が用いられることがあります。
一般に、感染症の治療では、培養の同定・感受性検査の結果が出るまでの間、想定する感染部位・起因微生物をカバーする抗菌薬で治療します(エンピリック治療:empiric therapy)。
そして、培養の同定・ 感受性検査の結果が出たときには、その結果を踏まえて、臨床的にも効果が認められ、かつ、患者にとって最適な抗菌薬で治療していくのが良いとされています(いわゆる原因治療あるいは標的治療:definitive therapy) 。
このように、治療の過程で、広域なスペクトルの抗菌薬から、狭域なスペクトルの抗菌薬に変えることを、デ・エスカレーション(de-escalation)といいます。
しかし、デスカレーションには、運用の点で問題を含んでいます。
なぜなら、「現に効いている薬を別のものに変更する必要性はない」と考えて、デエスカレーションをしない医師もいるためです。
しかし、広域スペクトルの抗菌薬は、むやみに使うと薬剤耐性菌の出現を許すことになります。
また、その耐性菌は、環境や医療従事者を介し、ほかの患者に伝播する恐れもあります。
抗菌薬の種類は有限ですから、将来の患者に使える抗菌薬を、できる限り残しておくことが必要になるのです。
したがって、たとえ、目の前の患者が、広域スペクトルの抗菌薬によって改善したとしても、デエスカレーションし、より狭域な抗菌薬に変更する必要があります。
なお、病院の中には、抗菌薬の適正な使用を支援するチーム:AST(抗菌薬適正使用支援チーム)を設置しているところがあります。
チームの活動内容には、主治医へのデエスカレーションの提案が含まれています。
食道カンジダ症とは、皮膚や食道の常在菌である真菌のカンジダが食道内で増殖し、胸焼け、胸痛、嚥下時痛などの症状を引き起こす疾患です。
カンジダ食道炎は、免疫不全患者や、白血病患者、悪性腫瘍患者に多く、ほかにも、長期に副腎皮質ホルモン剤を服用している患者や、抗生物質内服患者、コントロール不良の糖尿病患者などにも認められます。
食道カンジダ症は、その特徴的な内視鏡所見から、カンジダ食道炎とも呼ばれています。
確定診断のためには、内視鏡検査を行います。
食道カンジダ症の場合、食道内視鏡検査で、食道内に水洗浄で容易にはがれない、斑状またはびまん性の白苔を認めます。
この白苔はカンジダ症に 特有で、多発している場合が多く、点状や線状に配列したり、癒合して縦列形成あるいは地図状白苔として認められたりします。
背景粘膜は浮腫状で発赤を呈し、易出血性です。
さらに白苔部位の病理検査(粘膜生検)や、微生物検査(塗抹・培養)などで酵母様真菌を確認することで診断されます。
また、抗真菌薬による診断的治療で症状が改善傾向となる場合は、そのことが食道カンジダ症と判断する根拠になりえます。
なお、問診も重要で、HIV感染などの病歴や、嚥下困難、嚥下時痛などの症状が診断のヒントになります。
内視鏡検査で所見が認められ、なんらかの自覚症状や他覚症状を認めるときに治療の対象となります。
診断後、または診断的治療目的でフルコナゾールの内服を開始します。
内服開始から数日~1週間以内に症状の改善が得られていることを確認します。
軽症は内服治療で十分ですが、重症例は点滴治療を行います。
基礎疾患にもよりますが、予後は良好で、治癒後の再発は少ないと報告されています。
ただ、まれに食道潰瘍形成や出血、穿孔、ろう孔形成、狭窄、真菌性敗血症をきたすことがあります。
特発性細菌性腹膜炎(spontaneous bacterial peritonitis、SBP)とは、消化管穿孔などの腹腔内の感染病巣が認められない腹膜炎です。
この腹膜炎は、進行した肝硬変患者で肝機能がひどく低下したときに、一過性の菌血症から腹水に細菌が播種し、腹水中で細菌が増殖し、SBPが起こるとされています。
頻度は明らかでないものの、腹水を有する非代償性肝硬変の10~20%に併発すると推定されています。
診断のために、腹水の生化学検査と腹水培養検査をおこないます。
消化管穿孔や二次性腹膜炎を考慮し、腹部造影CTを施行する場合もあります。
単一菌による感染がほとんどで、SBPの起炎菌は腸内細菌であるグラム陰性桿菌が多く、大腸菌が40%以上を占めています。
腸内細菌叢の大部分を占めるのは嫌気性菌ですが、腹水は好気的な環境にあるため、これらが起炎菌になることは稀です。
もしも、バクテロイデス属などの偏性嫌気性菌が腹水中から検出された場合は、消化管穿孔を考える必要があります。
一般には、腹水中の好中球数が250/mm3以上で細菌培養が陽性の場合にSBPと診断します。
ただし、SBPと鑑別を有する疾患として、胃潰瘍の穿孔、急性虫垂炎の破裂、憩室炎、腸管の悪性腫瘍、腸捻転や腸間膜動脈血栓症などによる腸管壊死などがあります。
また、急性膵炎などの腹腔内感染巣(消化管穿孔など)により生じる腹膜炎(二次性細菌性腹膜炎)との鑑別も必要です。
なお、SBPの亜型として、腹水中の多核白血球が250/mm以上で腹水培養陰性の場合や、腹水中の多核白血球が250/mm未満で腹水細菌培養が陽性の場合などが存在します。
腹水中の多核白血球が250/mm以上を認める場合や、250/mm以上を認めなくても感染の兆候がある場合は、経験的治療(エンピリック治療)として、広域スペクトルの抗菌薬の投与を開始します。
二次性腹膜炎の可能性がある場合は、クリンダマイシンやセフメタゾールなど嫌気性菌をカバーする抗菌薬の併用を検討します。
平均的な治療期間は約10~14日とされています。
肝膿瘍とは、肝臓に膿瘍を認める状態です。
膿瘍は、肝臓外から原因となる細菌や原虫などが肝組織内に侵入・増殖して形成されます。
発熱、倦怠感、悪寒、戦懐、右上腹部の圧痛、食欲不振、吐気・嘔吐、体重減少などの非特異的症状が2週~1カ月ほど持続します。
症状としては、発熱が最も多く、上腹部痛の割合も高くなっています。
肝腫大も特徴的な所見です。
病原体により化膿性肝膿瘍(細菌性肝膿瘍)と原虫性肝膿瘍(アメーバ性肝膿瘍)とに大別されます。
化膿性肝膿瘍は、単独感染の場合と混合感染の場合があります。
細菌としては、単独感染の場合は、Klebsiella属または、Streptococcus anginosis Groupが多く、混合感染の場合は、E.coliなどの腸内細菌科とBactrioides属が多いです。
なお、真菌ではCandida sppが原因となります。また、免疫抑制状態の症例などでは、真菌や結核感染が原因となる場合もあります。
他方、原虫では、Entamoeba histolytica(赤痢アメーバ)が原因となります。
細菌性肝膿瘍における病原体の肝内への侵入経路には、胆道、門脈、動脈、直達、外傷、侵襲的治療などがあげられます。
経胆道性が全体の40~60%を占め最も多いと報告されています。
他方、原虫性肝膿瘍(すなわち赤痢アメーバによる肝膿瘍)は、感染性を有する嚢子型アメーバ(シスト)の状態で経口的に侵入し、腸管内で栄養型アメーバとなり、その後、結腸粘膜を通過し、大腸から経門脈的に肝臓に移行して膿瘍を形成します。
赤痢アメーバの日本での感染は、男性同性愛者の感染が代表的で、20~50歳代の大都市に居住する男性に集中しており、近年は性感染症の1つとされ、B型肝炎やC型肝炎、梅毒やHIVを伴う事例が多く報告されています。
また、知的障害者施設における集団感染や、異性間の感染も見られます。
この疾患に特有の症状が存在しないことから、症状のみで診断することは困難です。
したがって、不明熱の鑑別疾患に、肝膿瘍を含めることが重要となります。
なお、ALP高値をみた場合に想起すべき疾患の1つであるとも言われています。
腹部エコー検査、腹部造影CT検査を行うことで、膿瘍を確認することができます。
また、血液培養を実施します。
アメーバ赤痢の関与を確認するため、血清赤痢アメーバ抗体も検査します。
膿瘍穿刺液の細菌学的検査も有用です。
また、既往歴や海外渡航歴、性的接触歴なを聴取することも大切です。
細菌性肝膿瘍では多くの場合、抗菌薬治療を行い、同時に、ドレナージを行います。
ドレナージは、経皮経肝膿瘍ドレナージ(PTAD)を施行し、膿瘍腔を生理食塩水にて洗浄後、抗菌薬を直接注入します。
抗菌薬としては、アンピシリン・スルバクタム(商品名ユナシン)、タゾバクタム(商品名ゾシン)など広域スペクトル薬剤を選択します。
アメーバ性肝膿瘍を疑う場合は、抗菌薬治療のみで改善することが多く、ドレナージをせずに、メトロニダゾール(商品名フラジール)にて治療します。
赤痢アメーバによる感染の場合は感染症法5類感染症であり7日以内に届出をする必要があります。
クロストリディオイデス(クロストリジウム)・ディフィシル: Clostridioides(Clostridium) difficileは、一部の健常者の腸内に定着する常在菌の一種です。
通常は、ほかの腸内細菌により、増殖が抑制されていますが、抗菌薬を投与した場合の副作用として、生命を脅かす下痢を引き起こすことがあります。
抗菌薬の投与により、正常な腸内細菌叢が撹乱されると、異常増殖して毒素を産生し、下痢症を引き起こします。抗生物質の投与を開始してから数日または数週間以内に症状が現れることがあります。
C.difficile が形成する芽胞は、過酷な環境でも安定で、アルコール耐性があり、多くの抗菌薬に対しても抵抗性があります(経口感染するため、院内感染対策上、重要な菌)。
クロストリディオイデス(クロストリジウム)・ディフィシル: Clostridioides(Clostridium) difficileは、グラム陽性偏性嫌気性細菌です。
酸素の存在下では発育することが困難です。
1935年に健常新生児の糞便から分離されたのが最初です。
その後1978年に抗菌薬関連の偽膜性大腸炎(pseudomembranous colitis)の原因菌として報告されました。
C. difficileの主たる病原因子は、トキシンA,トキシンB,バイナリ―トキシンという3種類の毒素が確認されている。
腸内に定着した常在性のC.difficileによるもののほかに、保菌健常者やCDAD発症者の糞便を介した接触感染が主な感染経路です。
C. difficileは、芽胞形成性のグラム陽性偏性嫌気性細菌であるため、形成された芽胞が長期間にわたって環境中に生残し、それが院内感染や再発の感染源となる場合があります。
C. difficileには、毒素産生株と毒素非産生株とが存在します。毒素産生株が、健常者に定着することもあり、検出時に定着しているだけなのかを判断するのは簡単ではありません。
クロストリディウム・ディフィシルは、通常は、他の腸内細菌により増殖が抑制されています。
しかし、広域スペクトルの抗菌薬の投与により、大腸菌をはじめとする腸内細菌が死滅して腸内フローラ環境が破壊されると、クロストリディウム・ディフィシルが異常増殖をきたします。
クロストリディウム・ディフィシルは、毒素(トキシンAおよびトキシンBなど)を産生し、C.difficile関連下痢症(CDAD;CDIとも)を引き起こします。
CDI診療ガイドラインでは、24時間以内に3回以上もしくは平常時よりも多い便回数の下痢を生じ、糞便中のCDI検査で毒素陽性もしくは毒素産生性C. difficileを認めるか、内視鏡検査で偽膜性腸炎像を認めるものをCDIと定義しています。
診断は、消化器症状に加えて酵素抗体法(トキシンAとトキシンBの同時検出キット)で確定診断となります。
上記の検査キットの添付文書では、CD抗原の感度は 88~94%、特異度は 89~94%。、CD毒素の感度は 73~87%,特異度は 97~98%と紹介されています。
また、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)やLoop-Mediated Isothermal Amplification(LAMP)法を用いた糞便中毒素遺伝子検査法(Nucleic Acid Am- plification Test:NAAT)を利用することができます。
PCRを使う場面は、上記の検査キットにて、抗原のみ(+)の場合です。上記の検査キットだけしか使えない状況では、感度を上げるため、C.difficileを培養してから、検査キットに菌液を滴下し、毒素の産生の有無を再検査をしていました(二段階法)。これは、判定まで、最長で2日を要します。しかし、PCR検査であれば、便検体から、直接にCD毒素遺伝子を検出できるため、即日判定が可能です(そのうえ高感度かつ高特異度)。しかも、機器によっては、バイナリートキシンを検出できるものがあります(ジーンエキスパート:GeneXpert ®など)。
なお、病原性を示すにはtoxin Bの産生が必須であることが動物モデルによって示されています。
毒素陰性でNAAT陽性の場合には,少量の毒素産生株の定着である可能性も考慮に入れて診断する必要があります。
培養については、特殊な培地を用います。便からC.difficileを発育させるには、サイクロセリンとセフォキシチンを含有する培地を使用する必要があります。サイクロセリン・セフォキシチン・マニトール寒天培地(CCMA寒天培地)、あるいは、サイクロセリン・セフォキシチン・フルクトース寒天培地(CCFA寒天培地)を使用します。
治療としては、まず脱水を補正します。
そして、経腸栄養、化学療法、下剤など、他の下痢を来す原因を除外します。
なお、経腸栄養剤投与時の下痢の原因には、つぎのものがあり、CD腸炎(CDI)も含まれます。
原因抗菌薬を中止し、バンコマイシンまたはメトロニダゾールの経口投与が有効です。
プロバイオティクスの投与も有効との報告もあります。
なお、CDトキシン検査が陰性でも、抗菌薬使用中または使用歴があり、下痢を来す他の原因がはっきりしない場合は、治療を検討すべきです。
経腸栄養やプロトンポンプ阻害薬(PPI) により、CDIの発症リスクが上昇するという話があります。
また、多くのCDI患者は見過ごされている可能性があることが指摘されています。
https://www.facebook.com/NTMC.AST/posts/652355061849637/ では、つぎのように記載されています(引用)。
国立感染症研究所の加藤はる先生と多摩総合医療センターの本田仁先生らを中心に、東京医療センターを含めた全12施設(20病棟)が参加して行われた研究がpublishされました。(参加施設:八戸市立市民病院、亀田総合病院、東京ベイ浦安市川医療センター、東京医療センター、豊川市民病院、東海中央病院、奈良県立医科大学附属病院、刀根山病院、呉医療センター・中国がんセンター、下関市立大学市民病院、産業医科大学病院、沖縄県立南部医療センター)
Bristol stool scale 6-7の便を3回/24h以上認めた患者さんのC.difficileのトキシン、培養検査、遺伝子検査を施行。・全体のCDI発生率 7.41/10,000患者・日。ICU(5病棟)では22.2/10,000患者・日・全体のCDI検査頻度は、30.36/10,000患者・日・CDI検査頻度とCDI発生率は高い相関関係にある(R2=0.91)・分離したPCRリボタイプは018(29%)、014(23%)、002(12%)、369(11%)。過去の日本の報告と比べて発生率は高い結果となっており、これまでのCDI発症率は過小評価されていた可能性があります。
以上、ご参考まで。
腸結核は小腸や大腸に結核菌が感染することで発症する感染症です。
症状は、慢性に継続するはっきりとしない腹痛が最も多くなっています(80~90%)。
ついで下痢、吐下血、腹部膨満、嘔吐、発熱、腹部腫瘤、体重減少などとなっています。
そのほか、発熱、全身倦怠感、寝汗などの症状がみられることもあります。
腸結核は、大腸内視鏡検査にて、多発潰瘍、潰瘍化した集塊、無茎性ポリープ、小憩室を認めます。
病理組織学検査では、大腸内視鏡下の生検にて乾酪性肉芽腫を認めることもあります。
腸結核の確定診断は、便培養検査や病変部の内視鏡下生検検体による生検培養、あるいは生検検体からPCR法によって、結核菌の存在を確認します。
結核感染の補助診断としては、インターフェロンγ遊離試験(IGRA)が用いられます。
クオンティフェロンゴールドや、TスポットTBの検査を実施します。
腸結核では輪状潰瘍、帯状潰瘍が特徴的とされますが、多彩な病変を呈することが示されており、とくに腸管長軸方向に伸びる潰瘍ではクローン病との鑑別が重要です。
腸結核の診断が確定した場合には、抗結核薬にて治療を開始します。
また臨床上、強く結核性腸炎が疑われる場合には、診断的治療を行うこともあります。
治療は、肺結核と同様で、4剤(リファンピシン[RFP]、イソニアジド[INH]、エタンブトール[EB]、ピラジナミド[PZA])で治療を開始し、2カ月後に2剤(INH、RFP)に減量して4ヵ月間継続して治療します。
細菌性赤痢(赤痢菌性胃腸炎)は、赤痢菌の感染により、胃腸炎症状を引き起こす疾患です。
感染力が強く、 10~100個の菌で感染が成立します。
赤痢菌は、経口 されると、12~50時間の潜伏期を経て発熱などを引き起こします。
38度から39度の発熱のほか、水様性下痢、倦怠感、食欲不振、嘔吐などの症状が現れます。
その後にしぶり便(いわゆるテネスムス)や、急激な腹痛をともなう少量の膿粘血便となります。
推定感染地の50~60%は、インド、インドネシア、中国、ベトナム、タイ等のアジア地域です。
衛生環境のよくない国では、便から排泄された赤痢菌が、生水、氷、生野菜、果物、刺身などを汚染していると考えられています。
赤痢の原因菌は赤痢菌(Shigella)です。
志賀毒素と呼ばれる毒素を産生します。
腸内細菌科に属し、形態的には鞭毛を持たない無毛菌です。
遺伝子レベルでは大腸菌と非常に近い関係にある菌です。
本菌は、1898年に志賀潔博士によって発見されました。
学名Shigellaは、志賀博士の名前から命名されたものです。
生物学的な分類ではA群〜D群の4つに分けられます。
海外渡航歴を確認することが重要です。
ただし、まれに国内感染例もあることに留意する必要もあります。
しぶり便(テネスムス)や膿粘血便などが見られたら、赤痢菌性胃腸炎を強く疑うことができます。
下痢を引き起こす菌の種類は多数あるため、便培養で、赤痢菌を同定することにより診断します。
選択培地として、SS培地やDHL培地を用いて便培養を実施します。
培養後の集落の形態や血清反応により赤痢菌を簡易同定し、生化学的性状などを確認して確定します。
治療は、脱水の補正と抗菌薬の投与がメインです。
脱水の補正は、通常、経口摂取で行い、脱水が高度で経口摂取不可能なときは補液を行います。
抗菌薬に関しては、フルオロキノロンの3~5日間内服治療が推奨されています。
下痢止めの薬は、菌の排泄を阻害することになり回復を遅らせるため、推奨されません。
赤痢菌性胃腸炎は、感染症法第三類の全数把握対象疾患です。
ただちに保健所へ報告する義務があります。
また、学校保健安全法では、医師が、感染のおそれがないと認めるまで出席停止となっています。
また、食品衛生法では、食中毒を診断したときは、ただちに最寄りの保健所に届出を行うこととなっています。