健康/美容/出産に関わるお話です。
妊娠中は胎児の発育に、さまざまな栄養が必要です。
ここでは、「Ca」,「Fe」,「葉酸」について、まとめて紹介します。
Ca(カルシウム)
日本人の食事摂取基準2015年版では、20代や30代女性が1日に摂るべきカルシウム(Ca)の量は650mgです。
しかし、20代や30代女性の平均Ca摂取量は,400mg程度しかありません(平成26年度調査)。
多くの若い女性は、食事だけでCa摂取の推奨量を満たせていません。
妊娠中、さらには授乳中は、ふだんより多くのCaが必要です。
妊娠中にCaが不足していると、妊婦の骨からCaが動員され、胎児に補充されます。
そのため、母体の骨密度は低下します。
サプリメントでCaを摂り、推奨量を満たすのがよいでしょう。
なお、Caの吸収を促進するものとして、たとえばビタミンDがあります。
ビタミンDを多く含むキノコ類を意識して食べたり、直射日光を少し浴びることで皮膚でのビタミンDの生成を促すようにしたりすると良いでしょう。
Fe(鉄)
妊娠中は胎児の発育に鉄分が必要です。
また、妊婦は、胎児が増えた分だけ必要な血液量が増えるので、赤血球を余計につくる必要があるのですが、それに鉄分が使用されます.。
このため、妊娠中は、鉄不足になるリスクがあります。
鉄の不足による貧血(鉄欠乏性貧血)は、早産の原因や、低体重で産まれる原因になること等が報告されています。
また、この鉄欠乏性貧血は、出産で悪化します(出産時は,300mL前後の出血を伴うため)。
貧血の悪化は、産後の授乳に悪影響を及ぼす可能性があります。
妊娠中は鉄欠乏性貧血を発症しないように気をつけたいものです。
ところで、鉄の摂取推奨量は成人女性の場合、1日10mg程度ですが、実際に取れているのは、20代で6.4mg、30代6.4mと、かなり不足しています(平成29年国民健康・栄養調査)。
女性は、妊娠前から貧血の可能性が大いにあるということですね。
できれば「妊娠前」に鉄欠乏性の貧血の有無を確認しておきましょう。
そして、鉄欠乏性の貧血だったときは必ず治療しましょう(鉄剤の内服になります)。
さらに、妊娠中は、食事だけでなくサプリメントからも鉄を補うのがよいといわれています。
なお、アメリカ疾病予防管理センター(CDC)は妊婦に1日当たり30mgの鉄を摂取することを勧めています。
もしも貧血について何か疑問や不安があれば、妊婦健診のときに、主治医に、貧血のことを質問してみましょう。
葉酸
葉酸はビタミンB群の仲間で、細胞分裂やたんぱく合成に関係します。
妊娠のごく初期に葉酸が不足すると、胎児の脊椎(せきつい)部分が正常に発生しないリスクが上がります(二分脊椎などの神経管閉鎖障害の発症リスクが高くなります)。
ただし、この葉酸は、妊娠が分かってから摂りはじめるのでは遅いです。
中枢神経系が発生するのは妊娠7週未満だからです。
妊活中の「葉酸」の摂取は、厚生労働省も推奨しています。
妊娠の少なくとも1か月以上前から葉酸のサプリメントを摂取し始めて、妊娠12週まで続けるとよいそうです。
葉酸は、1日400μg摂取するよう勧められています(過剰摂取は厳禁)。
参考までに、バイエル薬品の調査(妊活・妊娠と夫婦に関する実態調査)によると、上記の葉酸の摂取タイミングについて、正答率は54.5%だったそうです。